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第394話
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永遠の毒薬 第398話
山本がまだ残っているのを見て、紗希は少し驚いた。「まだ帰らないの？」助手が静かに耳元で言った。「私も言ったんですが、どうしてもここで待つって言って、私も止められなくて......」「分かった、先に行ってて。彼と話してくるわ」紗希は心の中で、山本が帰らないのはきっと凌央が強く命じたからだろうと思い、彼ときちんと話すつもりだった。「本当に断るんですか？」助手はまだ信じられない様子で言った。「こんなに大きなチャンスを放棄するなんて、本当にもったいないですよ！」「簡単に見えるかもしれないけど、簡単じゃないことがあるの。詳しく話すのは後で。行って」紗希は軽く助手を押しながら言った。「それと、インターネットで求人情報を出しておいて」助手が部屋を出た後、紗希は山本に近づいた。「山本さん、あなたが言いたいことはもう分かっているわ。前に助手が言った通り、私は断るつもりよ。今、もう一度はっきり言うけど、私は凌央の施しを受け入れない。乃亜の死を利用してお金を稼ぐことはしない！」紗希は冷静に伝えた。山本は紗希の毅然とした態度を見て、心の中で思った。だから、若奥様と親友だったんだな。彼女には度胸がある。普段なら彼はその態度を評価するが、今は彼女に創世グループとの契約を受け入れさせることが最も重要だった。創世との契約を受け入れれば、スタジオの規模がすぐにでも拡大する。しかし、どうして彼女はそれを拒否するのだろうか？少し気が狂っているのか。「これは蓮見社長の決定です。もし断るなら、あなたが直接蓮見社長に言いに行くべきです」山本は決断を凌央に丸投げした。「電話をかけてもらうわ。私は直接話すから」紗希は冷静に答えた。「分かりました、今すぐ電話します！」山本はそれを凌央に伝えることで、煩わしいことから解放されると思い、電話をかけた。すぐに電話が繋がった。「話はついたか？」「紗希さんは断ったと伝えました」山本は遠慮せずに答えた。「紗希さんが直接、伝えたいと言っています」「携帯を渡してくれ」山本は携帯を紗希に渡し、「蓮見社長が直接話したいと」と言った。紗希は携帯を受け取り、唇を噛みしめながら冷たく言った。「蓮見社長、あなたの好意は受け入れません。でも、ありがとうね」電話を切り、山本に携帯を返
永遠の毒薬 第397話
直人は床から立ち上がり、怒った顔でベッドに座る紗希を見ながら、低い声で言った。「乃亜はもういない。もし俺をこれ以上突き放すなら、お前の周りに頼れる人は誰もいなくなる」紗希は冷たく彼を見つめ、言った。「たとえ一人でも、もうあなたとは一緒にいない！」婚約者がいる男と関わって傷つくのは自分だ。最後にどん底に落ちるくらいなら、早いうちに離れた方がいい。「紗希、俺はお前だけだ！他の女とは一緒にいない！」直人は必死に説明しようとした。「信じてくれ！」紗希は冷笑を浮かべて彼の顔を見た。「他の女と一緒にいなくても、あなたたちは婚約者の関係だ。あなたが他の女と一緒にいながら、私とまた一緒になろうなんて、どうしてそんなことが言えるの？私を殺すつもりか？乃亜の最後でさえ、私には目を覚まさせるには十分だった」乃亜が早く凌央から離れていたら、温簡もあんなに敵対していなかっただろうし、彼女の祖母も死ななかっただろう。しかし、世界には「もしも」はない。乃亜の死を教訓にして、どうして直人と続けられるだろうか？「乃亜は乃亜、お前はお前だ！お前を危険にさらすわけにはいかない！」直人は真剣に言った。「直人、私はずっと知っていたよ。あなたが本当に愛しているのは、美紀だって！私をずっとそばに置いていたのは、ただ彼女に似ていたからでしょ！もうあなたの代用品でいるつもりはない、別れよう。もう私に近づかないで！」長い間心に秘めていた言葉をついに口に出し、紗希は胸の中が軽くなったような気がした。直人は驚き、しばらく呆然とした後、ようやく我に返った。「紗希......」言いかけたが、紗希はそれを遮るように言った。「直人、もう出て行って！」彼の心の中には他の人がいて、今もその人がいる。彼女はその心に入れないし、彼の隣にいることもない。彼女にとって、彼はただの通りすがりの人に過ぎなかった。直人は彼女の決然とした表情を見て、深く息をつきながら、無言で服を拾い、着替えて出て行った。ドアの音が聞こえ、紗希はその音にどんな感情を抱いているのか、自分でも分からなかった。しかし、紗希はそれを長く考えることなく、ベッドから起きて洗面所に向かった。朝食を食べる間もなく、助手から電話がかかってきた。「社長、私たち、入札に成功しました！」紗希
永遠の毒薬 第396話
「凌央、美咲をどうすれば解放してくれる？」裕之は黙っている凌央を見て、我慢できずにもう一度問いかけた。凌央は冷たく彼を見つめ、言った。「これが彼女の結末だ。誰にも変えることはできない。出て行け」まるで追い出すように言い放った。裕之の顔は険しく歪んだ。「どうしてそんなに冷酷なんだ！」凌央はその問いには答えず、立ち上がって階段を上がった。以前、乃亜に冷酷だと言われたことがあった。そのときは気にしていなかった。幼い頃から、彼の周りには感情を見せない冷徹な人ばかりだった。裕之はその場に座り、凌央の姿が二階に消えるのを見送った後、目を閉じて深呼吸をした。その瞬間、母親の気持ちが少しだけわかった気がした。強くなければ、踏みつけられるだけだと。車に乗り込んで、美奈子に電話をかけた。「どこに行ったの！」美奈子は怒りで声が震えていた。「莉子と結婚するって約束する」そのまま電話を切った。莉子と結婚すれば、渡辺家の支援を得ることができる。彼は必ず強くなり、状況を変えられるだろう。紗希はぼんやりと家に帰り、ベッドに横たわって天井を見つめていた。乃亜のことがどうしても理解できなかった。あんなに素晴らしい人が、なぜこんなに早く亡くなったのか。そして、お腹の中の二人の子ども.......考えるほど心が痛くなり、涙が止まらなくなった。どれくらい泣いたのか分からないが、そのまま眠りに落ちた。夢の中でしか乃亜に会えなかった。しばらくして、ベッドの横に一人の姿が立っていた。「紗希、どうして少しでも俺に愛を分けてくれないんだ？本当に冷酷な奴だな！」直人の声はとても軽く、まるで寝ている紗希を起こさないように気を使っているかのようだった。その言葉を吐いた後、彼は服を脱いでベッドに入った。その瞬間、彼が横に寝ると、紗希は習慣的に彼に寄り添い、腕を絡め、足を彼の体に乗せた。まるで最愛の人と寄り添う姿勢だった。でも、直人は非常に目が覚めていた。紗希は彼を愛していない！そうでなければ、母親の一言で彼と絶縁しようなんてことはないだろう。「直人、このクソ野郎！」紗希は何かの夢で叫び、怒鳴った。その後、再び眠りについた。直人は彼女を抱きしめながら、心の中で複雑な思いを抱えていた
永遠の毒薬 第395話
山本は心の中で思った。乃亜さんがもし海に落ちていたとしたら、どうやって見つけ出すんだろう。しかし、そう考えても口には出せなかった。言ったら、蓮見社長がきっと怒るだろうから。「すぐにその件を処理して。俺はドライバーに迎えに来てもらうから」山本は急いで部屋を出た。蓮見社長の指示だから、もちろん従わなければならない。凌央はベッドから起き、洗面所に向かった。顔に残った掌の痕を手で触れながら、あの時の紗希の悲しみと怒りを思い出した。その表情は、まるで演技ではないように見えた。もし乃亜が生きていたら、紗希に知らせない理由はないだろう。でも、もし乃亜が死んでいたなら......凌央はそれ以上考えたくなかった。水道をひねり、水で顔を洗い目を覚まそうとした。冷たい水が顔に触れると、少しだけ心がクリアになった。顔を洗い、服を着替えて、ドライバーが到着した。彼は下に降り、車に乗って家に帰った。家の中はきれいに掃除されていて、空気にはほんのり香りが漂っていた。凌央は再びあのネクタイを見つけた。その瞬間、心が乱れる。乃亜のことを思い出し、そして自分がしたことを考える。理由もなく、胸が痛い。午後になり、裕之がやってきた。彼は疲れ果て、ひげを剃っていない。まるで一度も休んでいないかのようだった。凌央はソファに座り、裕之を見ながら眉をひそめた。「何か用か？」すぐに本題に入る。美咲はすでに捕まっていた。後は手続きを経て、すべてが片付くだけだ。裕之が美咲を逃がす手伝いをした件については、もう追求しない。「最初からすべて計画していたのに、どうして言わなかった？」裕之が不満そうに話し始めた。顔には怒りがにじんでいる。美咲が捕まった件を調べて、ようやく自分がどれだけ愚かだったかに気づいた。凌央の目には、自分が笑い話のように映っただろう。「言ったところで、美咲を助けないと保証できるのか？」凌央は冷静に、無表情で答えた。裕之とは幼少期から一緒に育ったが、美咲のために自分に逆らうとは思ってもみなかった。もちろん、彼の行動を批判する資格はない。だが、もう友達として接することはできない。裕之は黙っていた。こういう状況を経験したことがないから、答えようがなかった。
永遠の毒薬 第394話
彼は後悔していた。深く、心から後悔していた。紗希は振り返り、冷たい目で彼の顔を見た。口元には皮肉な笑みが浮かんでいた。その笑顔は、まるで夏の午後に突然降る激しい雨のように冷たく、強烈で、心に突き刺さるようだった。「乃亜はもう土に帰ったのよ。今のあなたの芝居、誰に見せているの？」彼女の声は低く、力強く、周りの空気さえも凍らせるような重さがあった。凌央の顔が瞬時に青ざめ、唇をかみしめて必死に心の中の波を押さえ込もうとした。しかし、その痛みは潮のように押し寄せ、彼を飲み込もうとしていた。彼は両手を拳に握りしめ、青筋が浮かび、指先が白くなるほど力を込めた。そうすることで、わずかに心の痛みを和らげようとしていた。紗希は冷笑を浮かべて言った。「遅すぎる情熱は、道端の野草よりも卑しい」その言葉は、凌央の心に深く刺さった。紗希は続けて言った。「美咲にはもう関わらないで！」その声は小さかったが、雷のように耳に響き、全てを飲み込むような力があった。彼女の目には一切の迷いがなく、冷徹で、決意に満ちていた。美咲の未来がどうなるか、すでに予見しているかのようだった。「俺は最初から関わっていない！今美咲が受けていることは自業自得だ！どうにかしたいなら、好きにすればいい！」凌央の目は冷たく鋭く、氷のように冷徹だった。彼の声は、まるで氷に覆われたように冷たく響いた。紗希は半眼で彼を見つめ、心の中で燃え上がる怒りを感じた。それは乃亜への無限の思慕と悲しみから生まれた炎だった。「言ったことは必ず守ってよ！」その言葉を重く、ひとつひとつ心を込めて言うと、彼女はすぐに背を向けて去った。紗希が扉を開けると、山本が心配そうに立っていた。「紗希さん」彼が声をかけたが、紗希は返事をせず、急いでその場を離れた。山本は急いで部屋に入ると、凌央の顔に強く引き寄せられた。鮮やかな赤い痕が浮かんでいる。それははっきりとした掌の跡で、焼けついたように深く残り、凌央の厳しい顔に異常に目立った。彼は思わず口を開いた。「蓮見社長、顔が......」紗希が彼を打ったのに、なぜ反撃しなかったのか？凌央の目は冷たく鋭く、山本をじっと見つめていた。その言葉には、まるで鋼のような威圧感が込められていた。「美咲のこと、お前がやったのか？」
永遠の毒薬 第393話
紗希の目が鋭い氷の刃のように、直人の深い瞳を刺し貫いた。そこにあったのは、驚きと怒り、そして言葉では表せない痛みが交じり合ったものだった。「なにか用があるの？」彼女の声は低く力強く、一言一言が歯の隙間から絞り出されるように、重みを伴って響いた。直人は微かに動いた。彼女の言葉を聞いた瞬間、目の中の光が消え、胸の中で複雑な感情が渦巻いた。直人は一歩を踏み出し、彼女の元へ近づこうとした。しかし、紗希が放つ冷徹さと決意のオーラが無形の壁となり、彼を遠ざけた。「用がないなら、外で待ってから入ってきてください」紗希は冷たく言い放った。ためらいなく、ただ確固たる決意だけが込められていた。紗希の両手は拳を握りしめ、白く細い手の甲に青筋が浮かんでいる。それは内に秘めた激しい感情の表れだった。彼女はもはや、かつての優しさを捨て、復讐の使者となり、失われた友のために正義を求めていた。直人はその目を見つめながら、胸を締めつけられるような思いに駆られた。彼は紗希を抱きしめたかった。慰めたかった。そして、話がしたかった。だが、紗希の目はあまりにも冷たく、二人はただ互いを見つめ合っていた。空気がひどく張り詰めて、まるで時間が止まったかのような感覚に包まれた。「まだ行かないの？」紗希が再び言った。その声には苛立ちが込められていた。これ以上、彼との関わりを持ちたくない、ただそれだけが彼女の心にあった。直人は深く息を吸い、内心の波を静めようとした。そして、静かに言った。「せっかく会ったんだから、少しだけ話をしよう」紗希の胸が痛むような感覚が走った。彼女は口を開き、彼の名前を呼んだ。「直人」その声は低く、しっかりとした響きがあった。「私たちの関係は、ここで終わりにしましょう。あなたの世界には、私は溶け込めない」彼女の言葉にはわずかな震えがあったが、それ以上に解放感が感じられた。まるで長年抱えてきた重荷を下ろしたような気持ちだった。二人は、もともと違う世界の人間だ。別れたほうが、互いにとって良いのだ。直人の顔色が瞬く間に青ざめ、その温かく優しい瞳が痛みと理解の中で揺れていた。彼は紗希の目の中に少しでも揺らぎがあるのか探したが、見えたのは決意の深淵だけだった。直人は言葉を探して口を開けたが、喉が渇いて声を出すことができなかった。結局、苦しそうに
