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第467話
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永遠の毒薬 第470話
紗希は美しいことを大切にしているから、足の一部を失うことを受け入れられるわけがない。乃亜は冷たい顔をして、医師や看護師の後ろについて病室に入った。全ての検査が終わり、紗希を看護スタッフに任せて安心した。振り返り、直人に冷たい目で言った。「外に出て。話がある」直人はベッドの横に歩み寄り、横たわる紗希を見つめた。彼女はとても痩せていて、顔が小さく、今は弱っているように見える。まるで、すぐに消えてしまいそうな感じだ。乃亜は冷たく言った。「彼女を守れなかったくせに、今更後悔しても意味がない。外に出て、話がある」直人は目をそらし、乃亜に従って病室を出た。「なぜあなたがあそこにいたの？一体何があった？」乃亜は率直に尋ねた。紗希が今こうなってしまったことを考えると、心が痛む。だからこそ、直人には本当に怒りを感じている。こんな質問ですら、彼には十分優しくしているつもりだ。「彼女と話をしたかったんだ。でも、彼女は話したくなくて逃げてしまった。その後、車にひかれたんだ」直人はその時の出来事を思い返して言った。「あなたが仕掛けたわけではないの？」乃亜は疑いの目を向けた。「もちろん、違う！」直人は強く否定した。「そんなことをするわけがない！どうして俺が彼女にそんなことをするんだ！」彼は心の底から彼女と一緒に生きたかった。「もしあなたが関わっていないなら、私が調べる。もしあなたの両親や婚約者が関わっていたら、私は容赦しない。その時は頼んでも無駄だから」乃亜は冷たく言い放った。この2年間、会社は順調で、紗希を狙うようなライバルは考えられない。紗希はすでに家族とは連絡を取っておらず、今の状況を知っている人は誰もいない。家族が関わることは絶対にない。それなのに、直人が現れたその時に紗希が車にひかれた。どう考えても、これは直人に関係している。直人はその場で立ち尽くし、乃亜の言葉が頭の中でぐるぐる回っていた。両親や舞衣......その中で、誰が関わっているのか？乃亜が家に帰ると、拓海はソファに座って書類を読んでいた。遠目に見ると、穏やかな時間が流れているように見える。その瞬間、少し心が温かくなった。足音が聞こえ、拓海は書類を置き、立ち上がって歩み寄った。「待たなくていいって言ったよね？」乃亜は優しく
永遠の毒薬 第469話
乃亜は服を整えながら、靴を取ろうと手を伸ばした。拓海は彼女より先に靴を取り、しゃがんで彼女の足元に置いた。「足を上げて、履いて」晴嵐は非常にしっかりとした考えを持っている子供で、言いたくないことは一切口にしない。「私行ってくる。紗希の状況次第では、今日帰って来れないかもだけど、私のことは心配しないで。早く息子を寝かせてあげて」拓海の手助けで、乃亜は靴を履きながら、心配そうに言った。拓海は立ち上がり、優しい目で彼女の顔を見つめ、唇の端に柔らかな笑みを浮かべた。「わかった、気をつけてね」乃亜は彼の服を引っ張り、つま先を立てて、彼の唇に軽くキスをした。「言ったこと、全部覚えてるからね！」毎回、外出するたびに拓海はこんなに繰り返して彼女に注意してくれる。まるで彼女を子供のように扱っているみたいだ。でも、少し温かい気持ちが湧いてくる。誰かがいつも気にかけてくれることって、幸せを感じさせてくれる。拓海は思わず彼女の頭を優しく撫でた。「また僕をからかうつもりか？信じて、君を行かせないぞ！」乃亜は手を振りながら「私を捕まえられる？」と答え、足を速めて走り出した。彼女の元気に走る姿を見て、拓海は思った。どんなに最後の一歩を踏み出せなくても、彼女のそばにいられるだけで、幸せだと。乃亜の姿が見えなくなった後、拓海は急いで携帯を取り出し、電話をかけた。「乃亜の後を追って、誰かつけておけ」彼は心配で、乃亜に何かあったらどうしようと気が気でなかった。乃亜は急いで病院の救急室に到着した。直人は彼女を見て、すぐに立ち上がった。「紗希はまだ中にいるの？」乃亜は尋ねた。「はい！」「あなたが伝えておいて。私が直接手術をする」声には毅然とした決意が感じられた。直人は驚きの表情で彼女を見た。「お前が手術をするのか？」「そうよ、私のこと信じられないの？もたもたしてる暇ないわ、どいて」乃亜は無駄な言い訳を許さなかった。直人は言葉を返さず、すぐに手続きを進め、乃亜を救急室に通した。手術室のドアが閉まった後、直人は深く息をつき、罪悪感で胸が苦しくなった。もし自分があそこで現れなかったら、紗希は車にひかれることはなかったはずだ。すべて自分のせいだ。救急室のライトは夜の2時まで消えることがなかった。直人は外で待っ
永遠の毒薬 第468話
直人は顔をしかめて言った。「紗希、もう一度言ってみろ！」紗希は唇をかみしめ、冷ややかな目で彼を見つめた。「あなたのことは知らないわ。帰って」彼と舞衣が一緒になったあの日から、彼女ははっきりと別れを告げた。それからはずっと連絡も取っていなかった。もう何も引きずることはない。彼に対して耐えてきた気持ちも、今は全て消え失せている。今は、自分の人生を大切にしたいだけ。「紗希、なんでそんなに冷たくできるんだ！」直人の顔は赤くなり、怒りが滲んだ。「俺と一緒に行くか、それとも俺に抱えられて行くか、どっちだ？」選択肢は二つ。「私は行かない！」紗希は言うと、振り向いて走り出した。彼女は直人と顔を合わせたくなかった。直人は彼女の背中を見送り、冷たい怒りがこみ上げてきた。まさか、彼女は自分から逃げたのか？こんなにも避けられているのか？その時、突然、まばゆい光が一瞬閃いた。次の瞬間、悲鳴が聞こえた。直人は急いで振り返ると、車が目の前を通り過ぎた。風が彼の服を揺らし、車はすぐに角を曲がり見えなくなった。「直人、助けて！」紗希の震える声が聞こえた。直人は瞬時に頭を切り替え、急いで駆け寄った。紗希は地面に倒れ、血が周りに広がっていく。鮮やかな赤はまるで美しいバラの花のようだった。その血の赤さが、直人の目を刺すように痛かった。彼は急いでしゃがみ込んで、「お前......大丈夫か？病院に連れて行く！」と慌てて言った。言葉もろくに出ない。もし紗希が死んだらどうしよう？「足が痛い、骨が折れたみたい......気をつけて！」紗希は言い終わると、目を閉じ、すぐに意識を失った。直人は慎重に彼女を抱き上げ、車に向かって歩き出した。車に乗せると、すぐに携帯を取り出して電話をかけた。「全員準備、10分後に正面口で集合！」電話を切り、彼はすぐに運転席に座った。手が震えるほど慌てていたが、車を発車させた。10分後、家にある病院に到着。病院の前にはすでにスタッフが整列して待っていた。車から降りると、直人はすぐに紗希を担架に乗せ、急いで救急室へと運んだ。「急いで！」紗希はすぐに救急室に入れられ、直人はその前で待っていた。赤いランプが点灯しているのを見つめながら、彼の胸は苦しくなった。
永遠の毒薬 第467話
紗希は首を振った。「いや」彼女と直人は、最初から愛情で一緒にいたわけではない。お互いに必要なものを得るためだけだった。それに、もう何ヶ月も連絡を取っていないし、これ以上関わる必要はない。それに、直人はもうすぐ結婚するのに、今さら割り込むわけにはいかない。「誰かの結婚を壊すなんて、そんなことは絶対にしない」紗希は心の中で決めていた。「彼を愛してるんじゃないの？」乃亜は少し驚いて、紗希に尋ねた。彼女は、紗希が直人を愛しているように感じていた。紗希は少し迷った様子で答えた。「付き合っていた時から、私たちには無理だと分かっていた。連絡を取らなくなった今、もう別れたと感じているし、特に悲しくもない。たまに思い出すけど、それは愛とは違う感情だと思う」乃亜は黙って聞いていた。紗希は、愛しているわけではなく、直人に何度も失望して心が冷めてしまっただけだった。その様子を見て、乃亜は少し心が痛んだ。「もう遅いし、私は帰るね！」紗希は乃亜の手を引いて外へ向かって歩き始めた。直人に関することは、もう聞きたくなかった。乃亜は仕方なく、紗希についていった。階段を降りると、拓海と晴嵐が一緒にレゴを組み立てていた。二人とも真剣に集中していて、まるで親子のように見えた。紗希は、乃亜の手を引いて小声で言った。「見て、二人の関係、すごく良さそうじゃない？」拓海は、晴嵐と一緒に遊んでいる時、心から楽しんでいる。本気で子供と一緒に時間を過ごす男性は、そう多くない。しかも、この子は実の子ではないのに。「うん、晴嵐は拓海のことをとても慕っているね」乃亜は思い出した。あの抑うつ症状がひどかった時、拓海は晴嵐を育てながら、自分の面倒も見てくれた。何度も家政婦に任せるように言ったけど、拓海は自分で面倒を見たかったのだ。家政婦がうまく二人を見守れないことを心配していたからだ。「こんな良い男、どこ探してもいないよ。早く治療して、拓海と結婚しなさい！」紗希は心から二人が幸せになることを願っていた。乃亜はうなずいた。「うん、わかってる」紗希はそれ以上何も言わなかった。乃亜が治療を受けるには時間がかかることは分かっていた。すぐに改善するわけではない。「おばさん、一緒に遊ぼうよ！」晴嵐が二人に気づき、手を振りながら呼んだ。紗希は首を振
永遠の毒薬 第466話
「彼らは誰にでも優しいのに、私には冷たい！もしかして、あなたは本当は彼らの娘じゃないんじゃない？」紗希が突然、思いついたように言った。乃亜は笑いながら答えた。「昔、私もそう思ったことがあって、こっそりDNA鑑定をした事があるんだけど、しっかり彼らの娘だったよ」紗希は首を振った。「あんな変な親、珍しいよね！」「うん、確かに！でも、幸いにも私はおばあちゃんがいたから。おばあちゃんは私にとても優しかった」乃亜はちょっとした悲しみを感じた。母親は祖母に冷たくしていたが、もしそうでなければ、祖母の病気もここまで悪化することはなかっただろう。祖母のことを考えると、乃亜の心は少し痛んだ。桜華市に帰ってきたこの2日間、まだ祖母に会いに行けていなかった。祖母はきっと、彼女を責めることはないだろう。「おばあちゃんを殺したのは美咲よ。今、美咲も罰を受けている。おばあちゃんも、もう安らかに眠れるわね」紗希はあの裁判を思い出した。咲良は法廷で素晴らしいパフォーマンスを見せ、美咲に無期懲役を言い渡した。咲良はその後、注目を浴び、弁護士として成功を収めた。そして、乃亜も裏でずっと咲良を支えていたことが明らかになった。「私はあの時、咲良に頼んだ時、どこか賭けのような気持ちもあった。でも、彼女は予想以上に法廷で素晴らしい仕事をしたわ」乃亜は咲良を高く評価している。ここ数年、二人の仕事はとても順調だった。「その時、咲良に頼んだのに、どうして私に頼まなかったの！私、ずっとあなたが本当に死んだと思ってたんだから！」紗希はその時の気持ちを思い出し、今でも辛い気持ちがこみ上げてきた。あの時、彼女は本当に、乃亜がもう二度と会えないのだと思っていた。「もう、過去のことは忘れよう！これからは、私たちの幸せな生活を楽しもう！」乃亜は紗希を抱きしめ、にっこりと微笑みながら言った。あの時の状況では、紗希に助けを求めることはできなかった。彼らは二人の関係を知っていたから、紗希が悲しめば、彼女の死が本当だと思わせることができたからだ。「もしあなたがあの時、凌央の元をあんな風に決然と去らなかったら、今の幸せな生活はなかったわね！私の悲しみなんて、今の幸せと比べたら大したことない！」紗希は少し馬鹿げた笑顔を浮かべて言った。「この先もずっと、こんな風に幸せに過ごしていくんだよ！」
永遠の毒薬 第465話
乃亜は唇をかみしめ、恵美から以前聞いた娘に関する話を思い出した。彼女は、恵美が自分が子供を産んだことを既に知っていたのではないかと考えていた。恵美は、自分が生きて子供を産んだという情報を取引材料にして、蓮見家に入り込んだのだ。でも......もし凌央が自分が生きていて、しかも彼の子供を産んだことを知っているなら、なぜ今まで一度も自分を探しにこなかったのだろう？いや、啓太が彼女の足取りを全て消してしまったから、凌央は見つけることができなかったのだ。紗希は乃亜が黙っているのを見て、何も言わなかった。もしかしたら、彼女は何かを考えていたのかもしれない。しばらくして、乃亜は深く息を吸い、考えを整理して言った。「調べてみれば、すぐに分かるはず」「もう十分話したわね。そろそろ行こう。拓海がまた私が彼をからかってると思われるから」紗希は乃亜の手を引いて立ち上がった。「でも、恵美には気をつけて。私の養子の周りには、もっと警備を増やさないと安心できないわ」晴嵐のことを話すと、突然彼が以前言った言葉を思い出した。彼はどうして凌央がダメ男だと知っていたのか？一体、誰が教えたのだろう？そのことを考えると、彼女の感情は抑えきれなくなり、手に力が入ってしまった。「何を考えてそんなに怒ってるの？私の手が引き裂かれそうだよ！」乃亜の声が耳に入り、紗希は我に返った。振り向いて乃亜を見、しばらく躊躇した後、口を開いた。彼女は晴嵐との会話の内容を、乃亜に話した。乃亜はその話を聞いて、表情を引き締めた。「乃亜、あなたが言う通り、恵美が教えた可能性があるんじゃないか？」紗希は拓海の人柄を信じている。彼は絶対に晴嵐にそんなことを言うことはないだろう。凌央が晴嵐が自分の息子だと知っていたら、絶対にその前で自分を悪く言うことはない。唯一の可能性は恵美だ。乃亜は目を細めながら言った。「それはあり得るかもしれない」恵美は、決して優しい女性ではないから。「本当に理解できないわ。あなたの両親と恵美のような人間が、どうしてますます上手くいくのか......」紗希は空を見上げ、少し呆れたように言った。「本当に神様は不公平ね」「そんなに長く続くわけがない」乃亜は隆がどんな男かよく知っている。彼は久遠グループを破産させた男だ。今は凌央
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