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第490話
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永遠の毒薬 第490話
凌央は突然乃亜が言っていた事を、思い出した。璃音がだんだんと彼に似てきた。その理由は、子供が彼と一緒に育っているからではなく、もしかしたら血縁関係があるからかもしれない。以前はそんなこと、全く考えもしなかったのに！「え？分かりました！」山本は意味がよく分からなかったが、とりあえず凌央が言った通りにすることにした。電話を切った後、彼はレストランへ向かった。少し遅れて、拓海が到着した。その時、凌央は一人で二杯の酒を飲み終えていた。拓海を見ると、凌央は隣の席を指さして言った。「ここに座れ、話がある」拓海は胸元の服を握りしめ、嫌そうな顔をして言った。「凌央、それはちょっと......」彼は男同士の関係には興味がない。「座れ！」凌央は苛立ち、迫力のある声で命じた。拓海はびくっと震え、小心者のように彼の隣に座った。椅子の端に座り、少しでも距離を取ろうと必死だった。凌央は拓海の様子を見て、さらに気分が悪くなった。「拓海、お前、ちょっとは普通にしろよ！」「俺は普通だろ！お前こそ、変だよ！」拓海は心の中で思ったが、口に出しては言わなかった。「黙れ、俺はお前の話なんて聞きたくない！」凌央は冷たく言い放った。拓海は手で口を閉じるジェスチャーをして、鼻で笑いながら言った。「話せ」その声は鼻にかかったような、ちょっと変な感じだった。「璃音の本当の生年月日と、どこで生まれたか調べてくれ」凌央はモフィと恵美の言うことを簡単に信じてしまったが、実際には調査をするべきだったと気づいた。「璃音の身元を疑ってるのか？」拓海は凌央が自分に手を出すつもりがないことを察して、少し大胆になった。凌央は軽くうなずいた。「おい、今頃気づいたのか！もう三年も経ったのに、反応が遅すぎだろ！」拓海は以前、子供を引き取る前に調査するべきだと忠告したが、凌央はそれを無視してそのまま子供を家に迎え入れた。後になって璃音が先天性心臓病だと分かり、彼は心を尽くして世話をしていた。もし璃音が捨てられた子供だと知らなかったら、凌央はその子が自分の隠し子だと思っていたかもしれない。本当に、良すぎるくらいだ！「乃亜が突然いなくなった時、俺は気が狂いそうだった。寄るべなくて、子供を引き取ったんだ。今、乃亜が晴嵐を連
永遠の毒薬 第489話
凌央は目を細めて乃亜の手首を強く掴み、引き上げた。その手首に、虫のように歪んだ醜い傷が残っているのが見えた。凌央の瞳孔が急に収縮した。「これ、どうした？」低い声で問いかけると、脳裏に不意に一つのシーンが浮かび上がる。その瞬間、冷や汗が全身を駆け抜けた。いや、まさか......乃亜は素早く手を引っ込め、袖で隠した。そして、冷ややかな表情に戻った。「関係ないわ」その傷は、彼女が抑うつ症がひどかった頃、刃物で腕を切った時にできたものだ。その時、彼女は大量の血を流した。もし救急処置が間に合わなかったら、今ここにいなかっただろう。あの年、何度も自殺を試みた。でも、拓海がいつも助けてくれたおかげで、命を取り留めた。彼女は拓海に深く感謝していた。拓海のおかげで、もう一度生きる力を取り戻したのだ。これからの人生、彼女は拓海と一緒に過ごすつもりだった。「乃亜、忘れたのか？お前は俺の女だろ！俺が面倒見るのは当然だ！」凌央は当然のように言った。彼の理屈では、乃亜と結婚し、寝たことがあれば、彼女は一生自分のものだと思っていた。他の男が手を出すなんて許せない。だが、乃亜はその場で争う気力がなかった。「夢でも見てろ！」彼女はその言葉を残し、オフィスを出て行った。「山本がレストランを予約した、一緒に行こう！」凌央は後ろから叫んだ。「乃亜、お前は逃げられないぞ！」帰ってきた以上、彼女はまた自分の元に戻ってくるべきだと思っている。拓海と一緒になりたい？そんなことはあり得ない！乃亜は足早に歩き、今はただその場から離れたかった。凌央から離れたくて仕方がなかった。オフィスを出て車に乗り込むと、ようやく気持ちが落ち着いた。深く息を吐きながら、彼女はオフィスでの出来事を振り返った。彼女は拓海との親密な関係を拒んでいたが、凌央に対する反応は強すぎた。心の病だ。これは心の病気だ。信頼できる心理カウンセラーに診てもらわなければ。そう思い、彼女は湿ったティッシュで手と顔、首を拭き始めた。凌央に触れえられた場所は、すべて拭き取らなければ気が済まなかった。本当に気持ちが悪い！しばらく車を運転した後、彼女は病院に向かうことにした。紗希はまだ眠っていた。彼女は看護
永遠の毒薬 第488話
凌央は冷笑を浮かべながら言った。「答えがなければ、それでも構わない。最良の弁護士を雇って、晴嵐を奪うつもりだ。乃亜、その時には泣いて頼んできても無駄だぞこないでくれ」彼の唇には冷たい笑みが浮かんでおり、声も軽く響いた。乃亜は咲良から、凌央が自分を訴えて晴嵐を奪おうとしていることを聞いていたが、今その言葉を直接耳にして、怒りが込み上げてきた。凌央は本当に冷酷だ！人間としての情けがまったく感じられない！「凌央、晴嵐は離婚後に産んだものよ。あんたには何の関係もない！」乃亜は彼を睨みつけ、目には憎しみを込めて言った。たった数秒の間に、彼女は過去の痛みを思い出していた。美咲と一緒に自分を苦しめた日のことを。何年たっても、凌央は全く変わらない！「俺と関係があるかどうか、DNA鑑定をすればいいだろう。乃亜、お前はどうせやらないだろうけどな」凌央は晴嵐が自分の晴嵐だと確信していた。今はただ、晴嵐を奪いたい一心だ。晴嵐が自分の手に渡れば、乃亜もきっと自分の元に戻ってくるだろうと思っている。「あの子は私の息子よ。私が産んで育ててきたの。DNA鑑定なんてしないわ！」乃亜は冷たく言い返した。凌央の邪悪な考えを理解した彼女は、急いでその場を去る気はしなかった。何かをきちんと言い返す必要があったからだ。凌央は一瞬、驚いたように静止した。彼が三年間育ててきた璃音の親を調べることなど、これまでなかった。ましてや、璃音とDNA鑑定をするなんてことはあり得ない。彼は十分理解していた。璃音は自分の血の繋がった子供ではなく、拾ってきた子供であることを。「どうした？璃音はあんたの子供じゃないの？」乃亜は璃音のことを知らず、惠美が産んだ子供だと思い込んでいた。凌央は唇をかみしめ、答えた。「璃音はもちろん、俺の子だ」血が繋がっていなくても、三年間育ててきたので、もう自分の娘同然だ。「璃音がいるなら、どうして晴嵐を奪おうとするの？本当に笑える！」乃亜は彼の考えが理解できなかった。他人のものを奪うことで何か達成感を得るのか？「晴嵐は俺の息子だ。お前と一緒にいても、何の未来もないだろう」凌央は言い切った。彼にとって、盛世は桜華市の大企業だが、創世グループには到底及ばない。晴嵐は蓮見家の後継者として育てるべきだと考え
永遠の毒薬 第487話
乃亜は階段を駆け上がると、ドアをノックすることなく社長室に飛び込んだ。その音に驚き、凌央は手に持っていた書類を置き、眉をひそめて彼女を見た。乃亜の顔は、以前よりもさらに美しく見えた。まるで潤いを与えられた花のようで、見ていて心地よかった。凌央は心臓が少し速く鼓動するのを感じた。「凌央、このクズ男、本当に気持ち悪い！」乃亜は怒りを抑えきれず、大声で叫んだ。抑うつ症が良くなった後、彼女はあまり感情を爆発させることがなかったが、今日は本当に腹が立った。凌央はあまりにもひどすぎる。凌央は深い瞳で彼女を見つめ、冷たく言った。「乃亜、ここは俺のオフィスだ。お前がここで暴れるつもりなら、警察を呼ぶぞ」かつて、乃亜は彼の前でいつも穏やかで端正な姿勢を崩さなかった。怒鳴ることなんてなかったし、声すら大きくすることはなかった。でも今、目の前の乃亜は怒りをぶつけてきて、非常に生き生きとしているように見えた。まるで......凌央の心に興奮剤が注入されたように、瞬時に興奮した。「あんたはそんな卑劣なことをしたくせに、警察に通報してみなさいよ！その時警察があなたを捕まるのか、それとも私を捕まるのか見てみろ！」乃亜は凌央のデスクに歩み寄り、上にあったペン立てを掴んで、彼に向かって投げた。「あんた、恥を知れ！こんなことができるなんて！」普段の乃亜は冷静だった。弁護士として法律に精通し、何ができて何ができないかは彼女の頭の中でしっかりと整理されている。でも今、凌央の前では冷静でいられない。ただただ怒りが溢れてきた。だって、彼が裏であんなひどいことをしていたから！事前に裏口からプロジェクトを手に入れたことも、実力があってこその結果だ。桜華市内でも、このプロジェクトは盛世、創世、田中家ぐらいしか受けられない。他の会社なら絶対に無理だ。彼女はそのプロジェクトを狙って戻ってきたが、拓海は入札を知りながら自分の会社を辞退した。そして今、乃亜の入札は取り消され、田中家は参加していない。彼女は急いで入札書を作成しているが、結局、このプロジェクトを手に入れることができるかは不明だ。もしこのプロジェクトを手に入れなければ、凌央に取られることは間違いない。入札書を作成するために夜遅くまで頑張り、必死で人脈を
永遠の毒薬 第486話
「何かあったのか？」電話が何度も切られたことに、乃亜は不満で笑ってしまった。凌央、このクズ男、本当にやるな！仕方なく、彼女は山本に電話をかけた。電話が繋がった瞬間、彼女は急いで言った。「山本さん、すぐに蓮見社長に電話を回して。言いたいことがあるの！」「久遠さん、蓮見社長は今忙しくて......」「それなら、今どこにいるか教えて！私が直接会いに行くから！」乃亜はイライラしていたので、凌央に対して怒りをぶつけたかった。「会社にいます」「分かった、10分後に行く！」そう言って電話を切った。その時、創世グループの社長室では。凌央は手に書類を持ちながら、耳を澄まして山本と乃亜の会話を聞いていた。山本が携帯をポケットにしまった後、蓮見社長の手に持っている書類が逆さまになっているのに気づいた。少し迷った後、思わず小声で言った。「蓮見社長、書類が逆さまですよ」凌央はパッと書類を机に置き、咳払いをしながら、「どうした？」と言った。「久遠さんが来ると言っています」山本は蓮見社長の表情を気にしながら、慎重に言った。どうやら、蓮見社長は嬉しそうだ。「俺は彼女に会う約束はしていない！」凌央は鼻で笑った。「もういい、お前は出て行って、俺は書類を見てるから！」山本は蓮見社長をちらりと見た。もし蓮見社長の口元が上がっていなければ、彼は本気で乃亜に会いたくないと思っただろう。実際、誰よりも彼女に会いたいはずだ。山本は社長室を出ると、気配りをして空中回転レストランを予約した。最近、蓮見社長が最も行きたがっているレストラン。高い......そして、見晴らしも良い。乃亜は車を速く走らせ、10分足らずで創世グループのビルの前に到着した。車を停め、降りて。彼女は玄関の前に立ち、かつて何度も凌央に弁当を届けたあの高層ビルを見上げた。胸にいくつかの感慨が湧いた。あの頃は、凌央のことばかり考えていた。彼がすべてで、彼のために生きていた。でも今は、自分の仕事があり、人脈や生活圏もできて、自分の力で生きていける。もう、彼に依存することはない。「久遠さん、いらっしゃいましたか、どうぞお入りください！」山本はすでにエントランスで待っていて、乃亜が来るのを逃すことがないようにしていた。もし彼女を上に案内できなければ
永遠の毒薬 第485話
「私はその知らせを受けて、すぐにその人を探しに行きました。結果、その人は調査を受けていると言われました。こんな突然の出来事、明らかに誰かが裏で波紋を広げているように見えます！」乃亜は深呼吸し、心の中の感情を抑え込んだ。「上層部に電話して会議を開かせて！私は今すぐ会社に向かいます！」「わかりました、すぐに通知を送ります！」と相手が返答した。電話を切った直後、拓海の声が聞こえた。「何かあったのか？手伝おうか？」拓海は本当に手伝いたかったが、無断で手を出すと乃亜が怒るだろうと思った。乃亜は呼吸を落ち着け、彼に向き直り、申し訳なさそうに言った。「ごめんなさい、今夜は伯父さんと伯母さんに会いに行けそうにないの。会社で問題が起きたの。紗希は今病院にいるから、私が行かなきゃいけないの。もし助けが必要なら、電話するからね」拓海は少し寂しげに感じた。彼が準備していたサプライズは、次回に持ち越しになったからだ。「じゃあ、あなたは晴嵐と一緒に行って。私は自分で車を運転して会社に行くよ」乃亜は言いながら、車を降りようとした。「送っていくよ！」拓海は急いで彼女を呼び止めた。「大丈夫よ、送ってもらうと時間がかかるし、あとであなたの両親が待ってるでしょう！」乃亜は振り返り、手を振りながら言った。「晴嵐、今度はおじいちゃんおばあちゃん家に行くから、ちゃんとお利口にしてね！」晴嵐は不満そうな顔をしていた。帰ってきたばかりなのに、ママが本当に忙しすぎると感じていた。乃亜は自分の車に乗り込むと、アクセルを踏んで駐車場を出て行った。拓海はその車が去っていく方向を見つめ、ポケットからジュエリーボックスを取り出した。中にはダイヤモンドの指輪が入っていた。光の下で、それは煌びやかに輝いていた。眩しいほどに。彼はずっと乃亜にプロポーズしたかった。この指輪も前から買ってあったのだが、タイミングがなかなか合わなかった。今夜がその機会になると思っていたのに、結局......次回に持ち越しだ。晴嵐は背もたれに身を任せながら、拓海の手にある指輪を見て、無邪気に尋ねた。「パパ、どうしてその指輪をママに渡さないの？」拓海は指輪をしまい、苦笑しながら言った。「次の機会にママに渡すよ、いいかな？」晴嵐はお利口にうなずいた。拓海は胸の中のつらい感情を
