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第15話

Author: 信陽侯
【2021年6月9日

私たちは結婚したけれど、なぜか私の想像とは全く違う。

彼は私に冷たい。私はそんなに嫌われるようなことをしたのかな?

まだ慣れていないだけだよね。

大丈夫、これからの時間は長いから。

感情はゆっくり育てていける、私は諦めない!】

【2021年12月7日

なぜまたあんな風にするの?外の女が私より美しいの?

なぜ家に帰ってきてくれない?私を一度も見ようとしないの?

スープを作ってあげるために、私の指まで火傷した。

それでも渡したら容赦なく捨てられた。

もう彼のために自分を変えるのはやめる。彼が嫌いだ】

これを見た瞬間、天承はページの端を震える指でつまみ、濁った涙が一滴落ちてきた。

黄ばんだ紙の上に落ちた涙が、嫌いという言葉をぼんやりと滲ませた。

愛情がなかったから、彼は二人の結婚式にあまり力を入れなかった。

結婚写真も撮らなかった。

その後数日間、彼は政略結婚が表向きにはお互いに敬意を払っているように見せかけ、裏ではそれぞれが好き勝手に過ごすものだと思い込んでいた。

だから、もちろん彼は遠慮せず、友達と一緒にバーで夜を明かし、いろんなクラブに出入りしていた。

愛人を何度も何度も入れ替えていた。

あの頃、彼女が何度も言いかけては黙っていたことを思い出した。

もしかしたら、これが理由だったのかもしれない。

彼は心の中で止まない後悔が込み上げてきた。

天承は次のページをめくった。後の方の彼女の日記には、まるで別人のようだ。

前の明るくて活発な性格は、もはやどこにも見当たらなかった。

日記の内容もますます短くなった。

時には一言で、時にはいくつかの句読点だけだった。

そして、特に何も書かれていなくて、ただ心情を書いただけだった。

最後の更新日は2023年11月28日だ。

彼女が書いたのは、【もしできるなら、私は彼と出会いたくはなかった】という一文だけだった。

その後、日記は一切更新されなくなった。

その時から、彼女はもう彼との離婚を決めていたのだろう。

実は、彼らの間にはたくさんの問題があったことを、天承は初めて知った。

それは茜のことだけではなく、最初から最後まで問題があったのは自分自身だった。

その一行の文字を見つめながら、天承は突然嗚咽し、涙がぽろぽろと日記帳の上に落ちた。

その一行の
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