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第263話

Author: 雨の若君
吐き終えた素羽は、床に崩れるようにへたり込んだ。体はわななき、手足の感覚は遠のき、背筋を冷たい汗が伝っていく。

素羽は首にかかる鎖のごときネックレスを引きちぎるように外すと、忌々しげに傍らへ投げ捨てた。

荒い息遣いがようやく静まると、素羽は顔を洗い、口を漱いでからベッドへと倒れ込む。そうして身を丸め、布団を固く身体に巻き付けた。

——

その夜、素羽は司野と揃いの色調のドレスに身を包み、共にパーティーへと赴いた。

司野が持つ地位と、恵まれた容姿はどこにあっても際立つ。パーティー会場に足を踏み入れた途端、挨拶をしようと人々が次々と彼らの元へ集まってきた。

司野はさも思いやりのある夫であるかのように、素羽を人々に紹介することも忘れなかった。

「こちら、妻の素羽です」

その一言を皮切りに、素羽は四方からお世辞の言葉を浴びることになった。

「本当に、絵に描いたような美男美女で。実にお似合いのご夫婦ですね」

耳に心地よい言葉が、湯水のごとく溢れ出る。だが、何も考えずに口をついて出るからこそ、そのどれもがひどく安っぽく響いた。

なぜ司野が今になって自分を公の場で紹介し始めたのか
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