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第492話

Author: 雨の若君
精神病患者――それは「正常な人間ではない」という烙印を押されるに等しい。法的責任能力を問われにくくなる代わりに、その言葉の信憑性もまた失われる。

そこまで思い至った幸雄は、思わず目の前の孫の顔をまじまじと見つめた。

冷酷さという意味では、この男は確かに自分の血を見事に受け継いでいる。だが同時に、まだ若く、愚かでもあった。

司野は半ば伏せた瞼の奥へ複雑な感情を押し隠し、低い声で言った。

「外の世論は俺が処理します。美宜の件は、俺に任せてください」

幸雄は、さすがにひと言だけは問いかけずにいられなかった。

「……素羽のことは考えたのか」

司野は静かに答える。

「これから先、彼女には償うつもりです」

残りの人生をすべて使ってでも、彼女への負い目を返し、埋め合わせていくつもりだった。

幸雄は、それ以上この問題へ深入りしなかった。若い男女の情愛など、もはや首を突っ込む気力も興味もない。

だが、会社の利益が絡むとなれば話は別だった。

彼は冷然と最後通牒を突きつける。

「お前に与える時間は丸一日だ。処理できなければ会社を退き、美宜もこちらへ引き渡せ」

誰であろうとグループ
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Comments (3)
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kuromameazuki299
あーあ。どんどん取り返しのつかない方向に自分で持ってって…毎度お得意の「埋め合わせる」ね…埋め合わせってのは相手が受け入れてくれなきゃ成立しないのに。精神病ってのも、素羽が自分から診断書と被害時系列を出せば、追い詰められた挙句に病んだってことで罪を増すだけだし。
goodnovel comment avatar
中村 由美
おー! 司野を殺しても無実になるぞ!
goodnovel comment avatar
丿丿
司野は地獄に落ちてほしい
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    精神病患者――それは「正常な人間ではない」という烙印を押されるに等しい。法的責任能力を問われにくくなる代わりに、その言葉の信憑性もまた失われる。そこまで思い至った幸雄は、思わず目の前の孫の顔をまじまじと見つめた。冷酷さという意味では、この男は確かに自分の血を見事に受け継いでいる。だが同時に、まだ若く、愚かでもあった。司野は半ば伏せた瞼の奥へ複雑な感情を押し隠し、低い声で言った。「外の世論は俺が処理します。美宜の件は、俺に任せてください」幸雄は、さすがにひと言だけは問いかけずにいられなかった。「……素羽のことは考えたのか」司野は静かに答える。「これから先、彼女には償うつもりです」残りの人生をすべて使ってでも、彼女への負い目を返し、埋め合わせていくつもりだった。幸雄は、それ以上この問題へ深入りしなかった。若い男女の情愛など、もはや首を突っ込む気力も興味もない。だが、会社の利益が絡むとなれば話は別だった。彼は冷然と最後通牒を突きつける。「お前に与える時間は丸一日だ。処理できなければ会社を退き、美宜もこちらへ引き渡せ」誰であろうとグループの発展を妨げる存在を許さない。たとえ、それが実の孫であっても。本邸を出ると、司野は無言のまま車へ乗り込んだ。車は夜の街を滑るように走り出す。薄暗い車内で、司野の瞳には陰鬱な光が宿っていた。煙草を咥えたまま、彼は岩治へ命じる。「素羽が以前通っていた精神科の診断書を手に入れろ。入手次第、広報部へ回して世論の流れを変えさせる」岩治は、その言葉だけで司野の意図を理解した。ハンドルを握る手がわずかに震え、目には驚愕と恐怖が走る。乾いた喉を鳴らしながら、彼はようやく声を絞り出した。「……素羽さんこそ、この件の本当の被害者です」実際のところ、司野の側近を務められるほどだ。岩治も決して甘い人間ではないし、汚れ仕事だって数え切れないほどこなしてきた。だが、それでも素羽は、曲がりなりにも五年間を共に過ごした妻だった。そのうえ、祖母を亡くしたばかりで、流産までしている。そんな彼女に対してこんな真似をすれば、間違いなく本物の狂気へ追い込むことになる。素羽が被害者であることなど、他人に言われるまでもなく司野自身が一番理解していた。だが、彼女が事態をここまで

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