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第519話

Author: 雨の若君
交渉は、ひとまず決裂した。

司野が病室を去ったあと、美宜の手のひらは汗でびっしょりと濡れていた。

淳子は不安と無力感を顔いっぱいに滲ませながら、美宜を見つめる。

「美宜ちゃん……私たち、これからどうしたらいいの?」

司野が最初から美宜を許すつもりなどなかったことを、淳子は知らなかった。

自分が甘かったのだ。

だが美宜は答えず、逆に問い返した。

「お父さんは?」

寛の話題が出た瞬間、淳子の顔色も曇る。

「あの人なら……千尋を探しに行ったわ」

寛本人は、隠れて行動しているつもりだったのだろう。

だが二十年以上連れ添った夫婦だ。何を考え、どう動くかなど、手に取るように分かってしまう。

美宜が刑務所に入ってからというもの、寛は二人に対して次第に無関心になっていた。

そして完全に見放したのは、美宜が事故に遭ってからだった。

娘が廃人同然になったと知った瞬間、彼は完全に興味を失ったのである。

価値を失った娘など、寛にとってはゴミ同然だった。切り捨てるのは当然の選択だったのだ。

それを聞いた瞬間、美宜の顔は醜く歪んだ。口元がひくひくと痙攣し、怒りと狂気が全身を支配する
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