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第799話

Author: 花朔
「もういいよ」

文翔は彼女の背後に回り、手を上げて、後ろで結ばれていたスカーフをゆっくりと解いた。

目の前の闇が、すっとほどけていく。

そして代わりに現れたのは――

すべての女性が息を呑むような、あまりにも華やかな花畑だった。

紗夜は、その場に立ち尽くした。

目の前に広がるのは、一つの谷。

その谷全体が、麓から頂上に至るまで、あらゆる色のバラで埋め尽くされている。

赤、ピンク、黄色、白、紫......

名前を知っているものも、知らないものも含めて、何千何万というバラが、午後のやわらかな陽射しの中で競うように咲き誇り、まるで現実とは思えない夢のような美しさを放っていた。

「気に入ったか?」

文翔は背後からそっと彼女を抱き寄せ、顎を彼女の香る髪に軽く預けた。

紗夜は、目の前の光景に圧倒され、言葉を失っていた。

ただ呆然と見つめるしかなく、気づけば、目の奥がじんわりと熱くなる。

「去年、君がまたアトリエを開くって決めたあの日から、ここを買ったんだ。

ここにあるバラは全部、世界中から一本一本、紗夜のために集めてきたものだ」

彼は彼女の手を引き、白い玉砂利で敷かれ
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