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第135話

Auteur: ザクロ姫
「お礼なんていいですよ。健吾さんが間に合ってくれてよかったです。じゃなかったら、あなたに何かあったかもしれません」

杏奈は頷いた。

今思い出しても、まだ少し怖かった。

彼女は凪を見て、「でも、どうして私が拉致されたって分かったんですか?」と聞いた。

「お昼になっても来ないし、スマホも電源が切れているから、健吾さんに電話しました。そしたら彼が……」

そこで、凪は少し言葉を詰まらせた。

そして何事もなかったかのように続けた。「彼が結衣さんに電話しました。そこで、橋本家の人たちが防犯カメラを調べてあなたを見つけてくれたそうよ」

「そうですか。本当にありがとうございます」

凪は杏奈に手当てをしてあげた後、彼女のことを見つめた。

何があったのか、詳しいことは健吾からメッセージで聞いていた。

杏奈が落ち着くまで時間がかかるだろうと思っていた。でも、彼女は思ったよりずっと強かった。

さっきドアのところで会った時、彼女はまだひどく怯えて、警戒しているようだったのに、でも今は、もう平気な顔をしていて、さっきの出来事がまるで嘘のようだった。

しかしそうは言うものの、あんなことがあっ
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