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第4話

Penulis: 日向
私を完全に打ちのめした最後の一撃は、兄のスマホだった。

その日の午後、兄が風呂に入りに行っている間、ソファの上に彼のスマホが置き忘れられていた。画面がふいに明るくなった。

グループメッセージの通知が表示されたのだ。

グループ名は【怜子ファミリー】

メンバーは五人。父、母、兄、綾人、そして怜子。

実の両親も、実の兄も、三年付き合った恋人も、私ではなく、別の姓を持つ怜子と「ファミリー」というグループを作っていた。

そこに私だけが、いなかった。

気づけば、指がそのグループを開いていた。

やり取りの履歴はかなり長く続いていた。引っ越しのまさに当日に作られたグループのようだった。

母が怜子の部屋の写真を投稿し、こう添えている。【うちの怜子にも、やっと自分だけのお城ができたわね】

兄は花火の絵文字を連投していた。【これから大事な妹をいじめる奴がいたら、俺が絶対に許さないからな】

さらに上へスクロールすると、母が笑いを含んだ声で音声メッセージを送っていた。

【綾人くんったら、寧々より怜子のことを気にかけてくれてるくらいじゃない。あの子は昔から苦労してきたから、これからもそばにいて支えてくれるなら、私も安心だわ】

綾人の返信。【おばさん、安心してください。僕、ずっと怜子のこと支えていきますから】

兄も返信した。【お前、さすが分かってるな!】

そして、チャット一覧に戻ると、怜子と綾人との3人グループチャットが最上部にピン留めされているのが見えた。

怜子:【綾人さん、お姉ちゃん、機嫌悪くならないかな……】

綾人:【大丈夫、このグループのこと、あいつ知らないから】

怜子:【よかった。お姉ちゃんを悲しませたくないもん】

そのあとに、飛び跳ねる嬉しそうな絵文字が続いていた。

私を悲しませたくない。そう言いながら、私が知らないと確認できた途端に安心し、あろうことか喜んでいたのだ。

私はスマホをソファに戻した。指先が冷たくなっていた。

まるで、自分とは無関係な判決文を最後まで読み終えたような気分だった。裁判はとうの昔に終わっており、被告人である私だけが、一番最後にその判決を知らされたのだ。

風呂上がりの兄が、顔色を変えて言った。「お前、俺のスマホ見たのか?」

「『怜子ファミリー』」私の声は震えていた。「どうして私が入ってないの」

リビングが一瞬で静まり返った。

母がキッチンから出てきて、父が新聞を置き、怜子が部屋から半分顔をのぞかせた。

兄がスマホをひったくる。

「あれは怜子をどう支えるか相談するためのグループだろ。お前に何の関係があるんだよ」

「綾人は私の恋人だよ!」

ほとんど叫ぶような声になっていた。「お母さん、『そばにいて支えて』だなんて、私の恋人まで怜子に譲れっていうの!?」

母が顔をこわばらせた。「何を騒いでるの!あの子のお父さんは、あんたのお兄ちゃんのために命を落としたのよ!お姉ちゃんのくせに、そんな心の狭いこと言って恥ずかしくないの!」

綾人はちょうど部屋に入ってきたところで、真っ先に自分の立場を弁解した。

「寧々、考えすぎだよ。僕と怜子はただ、普通に支え合ってるだけだから」

「それなら、記念日に私をすっぽかして彼女に付き添ったのは?彼女には1万円以上のプレゼント、私には130円の特売キャラメルだったのは?」

綾人が苛立った声を上げた。「怜子はあの日、気分が沈んでたんだよ。放っておけるわけないだろ。いつまでもそのことでグチグチ文句を言うのはやめてくれないか?」

怜子が泣き出した。「お姉ちゃん……ごめんなさい、全部私のせいで……」

兄が勢いよく詰め寄り、私に指を突きつけた。

「寧々、いい加減にしろよ!怜子のお父さんは、俺を助けるために命を落としたんだぞ!この恩は俺が一生かけて返さなきゃならないものなんだ!お前が一緒に返す気がないなら、出てけよ!」

出てけ。

実の兄が、私に自分の家から出ていけと言った。

リビングには家族全員がいたというのに、誰一人として私のために反論してくれる者はいなかった。

父はこめかみを揉みながら、低い声で言っただけだった。「もういい、みんな少し落ち着け」

兄が間違っているとは言わなかった。私に残ってほしいとも言わなかった。

私はリビングの真ん中に立ち尽くしていた。まるで判決を待つ被告人のように。

私の罪は、何もかも差し出せなかったことだった。

それ以上、何も言わなかった。

踵を返して物置に入り、ドアを閉め、鍵をかけた。

ドアの向こうでは、母が怜子をなだめ、兄が慰め、綾人もそれに同調していた。そうして、何事もなかったかのように、いつもの空気に戻っていった。

まるでさっきの騒ぎが、テレビのどうでもいいコマーシャルのように、ただスキップされただけだったかのように。

それから数日、家の中はむしろ前より賑やかになった。

母は怜子のために早めの誕生日パーティーを企画し、三段重ねのいちごケーキを予約した。

兄は風船とイルミネーションを買ってきて、一晩中しゃがみ込んで膨らませていた。

綾人は毎日食事にやって来て、食後はベランダで怜子と絵を描き、二人の笑い声が廊下の端まで響いていた。

誰も私を冷遇していたわけではない。彼らの賑わいの中に、そもそも私という存在がなかっただけだ。

私は深夜、少しずつ物置の荷物を片づけ始めた。

ゴミ袋に詰めては、団地の大型ゴミ箱にまぎれ込ませる。

教科書、古い服、日記帳。それから、綾人がくれたキャンバス地のバッグと、賞味期限切れのクッキーも。

3年間の恋は、手に持ってみれば空気のように軽かった。

怜子にもらったピンクの小花柄のワンピースは、洗って畳んで、彼女の部屋のドアの前に置いた。

8月14日、夜明け前の午前4時。空はまだ暗かった。

ヨガマットを畳んで壁に立てかけ、モップのバケツを元の位置に戻す。

物置は、まるで最初から誰も住んでいなかったかのように、きれいに片づいていた。

荷物はリュックひとつだけ。

中身は数枚の着替えと身分証、そして着任通知書だけだ。

足音を忍ばせて廊下を歩く。

怜子の部屋からはいちごの甘い香りが漏れ、兄の部屋では扇風機がうなり、主寝室からは規則正しいいびきが聞こえていた。

みんな、ぐっすり眠っている。この家に、私は必要ない。

玄関のドアを開け、タクシーに乗り込んだ。

スマホを取り出し、連絡先をひとりずつ消していった。赴任先では、通信機器をすべて預けることになっている。任期は5年。もう遠く離れてしまえば、ここを振り返ることもないだろう。

朝7時半、母が起きて朝食の支度を始めた。

「怜子、卵は茶碗蒸しにする?それとも目玉焼き?幸樹、いつまで寝てるの!」

物置の前を通りかかり、何気なくドアを押した。

がらんとしていた。壁際に畳まれたヨガマットが1枚、残されているだけだった。

母は電話をかけたが、電源が切れていた。メッセージを送っても、送信済みの表示にはならなかった。

「あなた!」母の声がひっくり返った。「寧々がいない!荷物が全部なくなってる!」

兄が裸足のまま飛び出してきて、何度も電話をかけ直した。そのたびに返ってくるのは、冷たい機械音声だけだった。

綾人が駆けつけ、物置の戸口で呆然と立ち尽くした。

ちょうどそのとき、父のスマホが鳴った。

画面には、見知らぬ番号が表示されていた。

「江藤さんのお宅でしょうか。私、石川俊之(いしかわ としゆき)さんと以前一緒に働いていた田中と申します。先日、石川の遺品を整理していたら、当時の資料がいくつか出てきまして……お子さんが川に落ちた事故について、どうしてもお伝えしておきたいことがあるんです」

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