Short
愛も憎しみも、もう残っていない

愛も憎しみも、もう残っていない

By:  凪Completed
Language: Japanese
goodnovel4goodnovel
9Chapters
5.5Kviews
Read
Add to library

Share:  

Report
Overview
Catalog
SCAN CODE TO READ ON APP

三歳のとき、両親はちょっとしたすれ違いから、お互いに浮気をした。それをきっかけに、二人は業界でも知られるほど、憎しみ合う夫婦になった。 相手を傷つけるために、両親は私を犠牲にして、何度も痛めつけた。 五年間で、母に骨を折られたのは三回。父に、わざと置き去りにされたのは五回。喧嘩の最中に、海に投げ込まれたことも一度ある。 やがて両親は、そんな生活にも飽きた。そして、別のやり方で苦しめ合うことにした。 離婚し、それぞれ新しい子どもを養女に迎えた。 競い合うように愛情を注ぎ、機嫌を取るようになった。 その結果、私はいちばん余計な存在になった。両親がお互いのことを思い出したとき、殴られ、罵られる。八つ当たりの相手として。それが、私に残された唯一の存在価値だった。 私が生きる支えにしていたのは、生まれたとき、両親が一緒に贈ってくれた小さなお守りだけだった。 そこには、健やかに、穏やかに生きられますように、という願いが込められていた。それが、私に残された唯一の温もりだった。 十歳になったとき、誰かがその最後の心の支えを奪おうとした。 必死に抵抗し、その結果、脾臓を破裂させられた。 両親が駆けつけたとき、地面には血が広がっていた。 それを見て、二人とも、嫌そうな顔をした。 「枝野美咲(えだの みさき)……自分をこんな姿にして。本当に、父親と同じで気持ち悪い」 「誰が気持ち悪いって。もう一回言ってみろ。その乱れた格好を見ろ。お前と同じで、みっともないじゃないか」 私の助けを求める声は、激しい喧嘩の声にかき消された。身体は、だんだん重くなっていく。 気づいたときには、あたりは静かになっていた。 二人も、ようやく喧嘩をやめた。

View More

Chapter 1

第1話

三歳のとき、両親はちょっとしたすれ違いから、お互いに浮気をした。それをきっかけに、二人は業界でも知られるほど、憎しみ合う夫婦になった。

相手を傷つけるために、両親は私を犠牲にして、何度も痛めつけた。

五年間で、母に骨を折られたのは三回。父に、わざと置き去りにされたのは五回。喧嘩の最中に、海に投げ込まれたことも一度ある。

やがて両親は、そんな生活にも飽きた。そして、別のやり方で苦しめ合うことにした。

離婚し、それぞれ新しい子どもを養女に迎えた。

競い合うように愛情を注ぎ、機嫌を取るようになった。

その結果、私はいちばん余計な存在になった。両親がお互いのことを思い出したとき、殴られ、罵られる。八つ当たりの相手として。それが、私に残された唯一の存在価値だった。

私が生きる支えにしていたのは、生まれたとき、両親が一緒に贈ってくれた小さなお守りだけだった。

そこには、健やかに、穏やかに生きられますように、という願いが込められていた。それが、私に残された唯一の温もりだった。

十歳になったとき、誰かがその最後の心の支えを奪おうとした。

必死に抵抗し、その結果、脾臓を破裂させられた。

両親が駆けつけたとき、地面には血が広がっていた。

それを見て、二人とも、嫌そうな顔をした。

「枝野美咲(えだの みさき)……自分をこんな姿にして。本当に、父親と同じで気持ち悪い」

「誰が気持ち悪いって。もう一回言ってみろ。その乱れた格好を見ろ。お前と同じで、みっともないじゃないか」

私の助けを求める声は、激しい喧嘩の声にかき消された。身体は、だんだん重くなっていく。

気づいたときには、あたりは静かになっていた。

二人も、ようやく喧嘩をやめた。

……

身体が痛くて、震えが止まらない。血が、口の端から止まらずに流れ落ちていた。

それでも、父も母も、私のことなど気にかけていなかった。

地面に這いつくばったまま、必死に顔を上げて母を見つめ、声を詰まらせながら訴えた。

「……お母さん。すごく苦しい。病院に連れて行って……」

母は嫌そうに眉をひそめ、私を蹴り飛ばした。

「近寄らないで。汚い。気持ち悪い。

このくらいの怪我で病院?父親が外で相手にしてる女たちと、同じこと言ってるだけよ」

傍らにいた父は、怒りに満ちた顔で母に向かって歩き、途中で、まるで私が見えていないかのように、革靴で私の手を踏みつけた。

「雪村静香(ゆきむら しずか)……自分がどんな顔してるか、わかってるのか。外の女たちのほうが、よっぽど優しい。お前は嫉妬してるだけ!

生まれつき性根の腐った人間だから美咲まで嘘つきになる!」

母は冷笑し、父を嘲笑っているはずなのに、視線は私の体を舐めるように這った。

「は。この子が嘘つきなのが、私と何の関係があるの?あの小さくて、醜い姿。全部、あなたの遺伝でしょう」

父は激怒し、私の髪を掴んで顎を上げさせた。

「俺の遺伝だって?よく見ろ。この子が、お前に似てないとでも言うのか。お前は、この子の実の母親だろう」

母は体を震わせながら怒り、バッグを父に投げつけた。

「黙りなさい。誰がこの子の母親よ。こんな子、私とは何の関係もないわ。

この子は枝野の姓でしょう。だったら、枝野家で面倒を見なさい。これから生きようが死のうが、もう私を煩わせないで」

母が立ち去ろうとするのを見て、父は母の手首を掴んだ。

「待て。面倒を見たくない厄介者を、なんで俺に押し付ける。この子は、お前が産んだんだ」

二人が私をボールのように蹴り合うのを見て、私の目の光は、だんだん消えていった。

私は痛みに耐えながら、ゆっくりと地面から起き上がり、二人に媚びるように笑いかけた。

「お父さん……お母さん……見て。私はいい子だから。もう病院には行かない。だから……私を捨てないで……」

私の目に浮かぶ必死さを見て、父は少し心が痛んだのか、私の頭を撫でた。

「美咲、いい子だな。優奈が病気なんだ。父さんは病院に付き添わなきゃいけない。だから、お前は先に家に帰ってくれ。父さんが暇なときに、また会いに行く。いいか?」

その言葉を聞いて、母は嘲笑した。

「暇なときに行く?あなたは、きっとこの先ずっと暇なんてないわよ」

Expand
Next Chapter
Download

Latest chapter

More Chapters
No Comments
9 Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status