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【第12話】約束

last update Last Updated: 2025-12-25 10:12:03

 初めて『言葉』を発してから数日後。

 カラミタが深い眠りから目を覚ますと、目の前には長男であるセリンが居た。しかも彼の大きな腕の中に抱えられているという状態で。反射的に「れぉにょ——」と舌足らずな状態のままレオノーラの名を呼ぼうとしたが、「シー。お静かに。母さんはまだ寝ていますから、そのままにしてあげませんか?」と口元に指を立てながら言われた。だがカラミタは顔を顰め、それでも尚彼女を呼ぼうとする。そんな彼をセリンがレオノーラの近くにまで敢えて運んだ。そして「……貴重な寝顔が見られてよかったですね」と小声で言う。するとカラミタがぐっと強めに口を閉じた。いつも自分よりも先に起きているレオノーラの寝顔を見られて歓喜している様だ。

 少しの間。二人は揃って、眠るレオノーラの寝顔を観察した。早朝だからか彼女が起きる気配は無い。外もまだ薄暗く、やっと朝日がかろうじて姿を現したかどうかといった頃合いだ。他の部屋で休む兄弟達が起きている様子もなく、どうやらセリンとカラミタだけがかなり早く起きてしまったみたいだ。

「…………♡」

 セリンがちらりと視線をカラミタの方へやると、彼はいつも通りにレオノーラをじっと見ていた。その表情は完全に恋焦がれている者の目で、決して『赤子』が『親』に向ける視線ではない。

「カラ……」

 愛称で彼を呼び、セリンはとても小さな声で「少し、僕とお喋りしませんか?」と声掛けた。いつもなら問答無用で『ヤッ!』と拒絶してレオノーラにしがみついて離れないカラミタだが、今彼女は眠っている。普段ならば『赤子の特権』とばかりに我儘を突き通す彼だが、この寝顔を崩すのは流石に忍びない。ただ、寝起きのぼんやりとした表情にも興味があって、カラミタの心はしばらく揺れた。

「僕との話が終わったら、ベビーベッドじゃなく、母さんのベッドに降ろすという特典をつけてあげますよ」

 普通の赤子になら絶対に言えない台詞だが、セリンはカラミタであれば問題無いという確信を持ってそう提案する。するとカラミタは黒い瞳をキラキラと輝かせながら何度も首肯を返した。

「では、まだ寝ている人が多いので外に行きましょうか」

「ぁぃっ」と返事し、カラミタの小さくて黒い手がセリンの服をキュッと掴む。もう一年近く一緒に暮らしているのに初めての事で、セリンのドラゴンにも似た口元が優しく綻んだ。

       ◇

 二
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