author-banner
月咲やまな
月咲やまな
Author

Novels by 月咲やまな

独立した末っ子が執愛属性持ち『魔王』になって帰って来た

独立した末っ子が執愛属性持ち『魔王』になって帰って来た

レオノーラは五人の子を持つ女性だが、その子らと血縁はなく、種族も竜人やエルフなど多種多様だ。『子供達には経験を積んで欲しい』との信念の元、成人までは面倒を見て順々に独立させた。とうとう末っ子カラミタもが独立。その後三年、義兄達よりも先に帰省した彼は、突然「結婚して」と彼女に迫る。さらに「邪魔な実父(前・魔王)と兄姉を討伐し、新たな魔王に就任した」と告げられ彼女は戸惑う。彼は本気で、自身が赤子から育てた子からの執愛にレオノーラは翻弄されてしまう。 【全50話】
อ่าน
Chapter: 【第2章・第10話】《回想》令嬢の告発
 この二年間で、冒険者ですらないカラミタまでもがすっかり通い慣れてしまったギルドマスターの部屋の扉をアイシャがノックすると、すぐに「——どうぞ」と声が返ってきた。 扉を開け、アイシャ、カラミタ、リトスの三人が室内に入る。すると、彼の定位置でもある執務用の席に腰掛けているライゼの他にも、手前側にある応接スペースに一人の男性がいた。冒険者ギルドが総本部を構えている此処・シルト王国の王太子であるアリスター・クラウ・シルト殿下だ。魔王討伐に向けての国際会議などといった席で既に兄弟達と面識があり、彼自身Aランクの冒険者でもあるため、討伐に向けてシルト王国の代表として橋渡し役を担ってくれている。「——三人は、テオドールの件で来たんだね?」 簡単な挨拶もそこそこに全員が席に座り、アリスターはすぐ本題に入った。「共に育った兄弟だもんなぁ、安否が気になるのはわかるが、そう心配すんな。今は王宮の一室で待機中だ」 「牢にはぶっ込まれていないんだな」 『待機中だ』と言うライゼの言葉を聞き、リトスが安堵した。軽いノリでアイシャ達に知らせてはいたが、あれはどうやら弟達を不安にさせないためにとの考えからとった態度だったようだ。「経緯を聞かせてもらってもいい?あのテオが、意味も無く貴族を斬り殺すとは思えないんだよね」 アイシャの問いかけに対し、「それなら儂からよりも、アリスター王太子殿下からの方が良さそうだねぇ」と言ってライゼはアリスターに視線をやった。「あぁ、そうだね。私も丁度その話をしにギルドに来ていたんだ。ライゼは二度目になるけど、このまま此処でまた同じ話をしてもいいかな?」 「他の部屋じゃ、残念ながら誰が聞き耳を立てているかも知れんしな。此処でがベストだろうさ」 「重要な話なら防音魔法の二重掛けでもしておく?」とアイシャが訊いたが、「あ、いや。現状レベルの防音で充分だ」とアリスターは断った。「まず先に結論から言っておくと、テオドールは今回の件で罪には問われないよ。アイデル・ロゼ・モルジャーヌ公爵の斬首は王命だった扱いにするからね。これはもう父と——国王陛下と早急に協議した『結論』だ」 カラミタを筆頭に、三人がほっと息を吐いた。だが今度はそこに至った経緯が気になる。そうであると既に察しているアリスターは三人にテオドールの一件について語り始めた。       ◇
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-12
Chapter: 【第2話・第9話】《回想》手のひら返し
 冒険者ギルドのギルドマスターであるライゼだけじゃなく、セリン達も予想はしていた事だが、残念な事に『魔王討伐』までは、なかなかそう上手く話は進まなかった。『魔族』への恐怖はかなり根深く、各国の王族や皇族なども冒険者ギルドの伝手を駆使して巻き込みはしたが、世界的な連携を取るに至るまでだけでも二年近くかかってしまった。 他にも、『恩賞として、外界の土地や資源の採掘権を与える』とは誰も宣言していないのにもかかわらず、勝手に『利権の配分』ばかりを今から心配している者や、少しでも多くの利益を得ようと『魔王』となる予定のカラミタに対して媚を売る者なども多く現れ始め、毎日その姿を裸眼で見ようともレオノーラ不足に陥っているカラミタのストレスが日に日に溜まっていっている。「レラ成分が足りない!」「いや、今だってずっと見てんじゃん。満足しておきなよ」 冒険者ギルド総本部内に用意された自室で、机を叩きながら叫ぶカラミタにすかさずアイシャがツッコミを入れた。育ての親であるレオノーラに七年間会えていない身だからか、激しく同意しつつも、少しだけ不機嫌顔だ。自分が置いていった羊皮紙の魔導具のおかげで他の兄達が独立した時よりかはかなり頻繁にやり取りを出来てはいるが、育ての親を恋しく思う気持ちは二十二歳になった今でも隠しきれないみたいだ。それだけ十五歳になるまでの生活が幸せだった証拠だろうと当人は思っている。「目の前に居るのにこの手で触れないんだぞ?逆に拷問だと思わないか?」 「……自分でやっておいて、何言ってんだよ」 十七歳になり、随分と素晴らしい体躯に育ったカラミタの頭を容赦なく叩く。「痛いよ、兄さん!」と『弟』らしく口を尖らせながら、カラミタは斜め後ろに立つアイシャの方に振り返った。 『エルフ族』であり、その為成長の遅いアイシャの方は今も変わらず160センチ程度と男性としては小柄なままだが、『魔族』であるカラミタはこの二年間で随分と成長した。再会した当初はアイシャよりは少し大きい程度だったのに、今ではもう195センチにまで背が伸び、テオドールやリトスよりも大きくなった。流石に250センチもあり、『竜人族』のセリンと並ぶと『弟』感が残ってはいるが、もう彼を『末弟である』とは誰も思わないだろう。 肩まである紺色の髪をハーフアップにしてまとめ、左目側の空洞を隠す為にしている眼
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-10
Chapter: 【第2章・第8話】《回想》冒険者ギルド④
「まぁ、わかった。先ほどまでの話から察するに、『魔王』の『性質の支配』の影響下に無いおかげで、カラミタは『特別な個体』って事だな?」 「そう思ってくれて構わない」とライゼの問い掛けにカラミタは答えた。 「そうか……。——なあ、セリン達よぉ」 セリンを筆頭とした兄弟達の視線がライゼに集まった。窓を背にして執務用の席に座るライゼに背後から太陽の光が強く差し込み、彼の表情を分かりにくくさせている。「現・魔王は随分と『好戦的』らしいが、カラミタの『性質』は、我々にとっても、次世代の『魔王』になるに相応しいもんなのかい?」「正直な話、少なくとも『王の器』ではないですね。ですが、統治力を求められる立場でもない様ですから問題はなさそうですけど」 「『相応しいか』と訊かれると『微妙』としか。ただ理由も無く拳を振り上げる様なタイプではないな」 「コイツの重度のマザコンっぷりが、他の魔族達にどう反映されるかが不安だってくらいだな、俺としては」 セリン、テオドール、リトスが順にそう言うと、ライゼはリトスにだけ「お前が言うなや」とつっこみを入れた。どうやらライゼの中では、リトスのマザコンっぷりも十分重度のものの様だ。「ちょっと待て、オレはマザコンじゃない。レラを一度も『母親』だとは思った事がないんだからな」「うん、知ってるよぉ。でも一応はまだ『母親』だから、ね」と言い、アイシャが不機嫌そうにしているカラミタの肩を軽く叩く。 「悪かったって。お前を『弟』だと思ってるから出た発言なんだから、このくらいは許せって」 リトスの謝罪を聞き、ライゼが首を傾げた。『レラ』という女性が『母親』である事は間違いなさそうだが、『そうは思っていない』となると、じゃあ『どう思っているのか』が気になる所だ。「でもまぁ、母さんの次に一番長くカラと暮らしていたウチとしては、『カラミタ』は次の『魔王』になる素質を充分備えていると思うよ」 魔族の生態に関してのメモを取り続けていたアイシャが手を止め、ニッと笑う。「ぶっちゃけ、現・魔王を殺すつもりでいるんなら、こんな場所に立ち寄ってないでそのまま真っ直ぐ魔王の所に行けばいいのに、わざわざウチらに話をしに来たのってさ——」「魔族同士の『内戦』や『内輪揉め』で終わらせるんじゃなく、『魔族との和平』のきっかけにするつもりだからでしょ」 一度話を切
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-06
Chapter: 【第2章・第7話】《回想》冒険者ギルド③
 ギルドマスターの部屋の応接スペースに置かれたソファーに五人が腰掛ける。体が大きく、筋肉や種族特性の関係で分厚いセリンとリトスの二人が並んで座り、残りの三人はその対面にあるソファーに座った。「——んで、だ。カラミタ、お前さんの事をちょっと教えてもらってもいいかい?出来ればギルド本部への訪問の理由よりも先に、『特別な個体』である理由の方を聞かせてもらえんかねぇ。警戒心をどうにも捨てきれない儂を安心させて欲しいんだ」 ライゼにそう言われ「あぁ」とカラミタが素直にうなずく。その様子からすると、その点に関しても元々話すつもりで来ていた様だ。「かなり長くなるとは思うんだが、まずは、『魔族』の特性から話してもいいか?」 そう問われ、アイシャの目が輝く。長年『魔族』である末弟・カラミタと暮らしてはきたが、その特性や性質に関して語り合う様な機会などなかった。好奇心旺盛な彼は興味津々といった様子で、早速大量の紙と羽ペンを、腰に身に付けている収納魔法が付与された小さな鞄の中から引っ張り出した。「まず、『魔族』も『樹界』に住む者達となんら——」まで言ったカラミタの言葉を最速でアイシャが「待ったぁ!『樹界』って何?」と大声で遮った。 「『樹界』は、此処の様に、世界樹の影響下にある土地に対しての呼称だ。多分、魔族のみでの言い方なんだろうな、他では聞かないから」 「そっかそっか。おっけー話を続けて」 「『樹界』に住む者達と、『外界』に住む『魔族』の生態に大きな差はない。両親から生まれ、寿命があり、老いて、いずれは死ぬ。そして全ての個体が『天災』レベルの脅威でもなく、そういった個体はせいぜい上位一割程度だ」 この話には流石に納得がいかなかったのか、驚く声が他からあがった。「いやいや、よく考えてもみろ。じゃないと、今頃樹界はとっくに壊滅していてもおかしくないだろう?でも実際にはそうじゃないのが何よりの証明だ」「……確かに、そうだな。いくら世界樹の影響下にある地域には……君は別の様だが、何らかの理由で通常は来られないとしても、魔族全員で遠距離から大量の魔法をぶっ放すって手もあるんだしな」とライゼが口にし、うなずいた。 「能力的に上位に当たる魔族達は、他種族からは『天災』扱いされてはいるが、奴らには最大の欠点がある」 「欠点、ですか?」とセリンがこぼし、家族達を魔族に殺され
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-04
Chapter: 【第2章・第6話】《回想》冒険者ギルド②
 テオドールはカラミタを連れて二階に上がり、冒険者ギルドの最高責任者であるギルドマスターの部屋に彼を案内した。流石に、部屋に入るなり、此処でまで攻撃をされたりはしなかったが、威圧的なオーラを纏ったギルドマスターと目が合った途端、カラミタが顔を顰めた。「……本当に、攻撃の意思は無いようだねぇ」 そう言うと、ギルドマスターの表情から威圧感がスッと消え去り、温和な表情になっていった。 彼は八十代にまで達しているのだが、まだまだ現役にも負けぬ圧と実力を兼ね備えた人物だ。『器用貧乏』と言われがちな『ヒューマ族』でありながら二十年近くギルド長を務めており、ご高齢になった今でもまだ現場に出る事のある行動派でもある。長めの白髪を後で緩く結いまとめ、髭を生やし、彫りの深い顔には年齢を感じさせる皺はあれど、その体躯は若者にも負けぬ程に逞しい。「まぁ、カラミタは、ただ俺達に会いに来ただけだろうからな。——でしょう?」 テオドールにそう問い掛けられ、「あぁ」とカラミタがうなずく。「こっちは、門番に『冒険者であるセリンに会いたい。もしくは、テオドールかリトス、アイシャでもいいんだが』って言っただけなのに、急に攻撃されて、致し方なく防衛しただけだ」 「入口を守る者には訪問者が不審者かどうかを見分けるために、変装などを見破る魔導具を持たせていますからね。いくらアイシャが作った偽装効果のある魔導具を身に付けていたとしても、『魔族』であると看破出来てしまいますから、それこそ事前に『来る』と言ってくれれば、こちらもそれ相応の用意をしたんですが……まぁ、それも今更ですね」 どこの国も主要な都市の門や施設の入り口などを守る警備兵などは、変装、もしくは擬態などの魔法を使っているか否かを判断出来る魔導具を身に付けている。指名手配犯ではないかをチェックする機能も搭載された優れ物だ。冒険者ギルドの門番が装備していた物の製作者がアイシャでなければ、それさえも誤魔化してすり抜けられただろうが、今回は相性が悪かった。「……その発想が、そもそも無かったな。『行けば何とかなるか』程度にしか考えていなかった」 「まぁ、そうですよね。僕らの育ち方では、どこかへ訪問するための礼儀なんかは学べませんでしたし。てっきり、カラは成人後も実家に残ると思っていたので、正直、今カラがここに居る事にすごく驚いています」と
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-02
Chapter: 【第2章・第5話】《回想》冒険者ギルド①
 レオノーラを膝の上に乗せ、ご満悦の顔になったカラミタの話は三年前の出来事にまで遡った所から始まった。        ◇ ——カラミタが成人を迎え、レオノーラの元から旅立った日の同日夕刻頃。 シルト王国の国史に残る一大事が王都北東部にある冒険者ギルドの総本部で起こった。 『魔族』の襲来である。 各国の主要都市の地中深くには、世界樹の根の中でも際立ってかなり太い根が張っている。そのおかげで長い歴史をどんなに遡っても『魔族』からの襲撃は一度も無く、外界から近づいて来る危険な魔物の出没確率もかなり低く済んでいる。それに加え、世界樹そのものからも比較的近い、もしくは細いながらも根が地中深くに張っている場所は安全地帯だとされ、首都以外の都市や各貴族の領地などがその上に点在している。根の上部では『魔力溜まり』も現れやすいため、魔力資源確保の観点から見ても昔から都市が出来やすいのだ。 王都などのように重要な都市であればある程、その分当然守りはどこよりも堅いが、あくまでも他国との戦争や魔物を対象とした物であり、『天災』にも等しい『魔族』の襲来までは想定していない。頑丈な壁、屈強な騎士や兵士達、冒険者などにも守られている都市とはいえ、人口が多い分統制が取れず、その被害も他の領地とは比べ物にならないだろう。街を守るための壁のせいで逃げ場がなく、一方的に蹂躙されてしまう可能性もあり得る。 だからこそ、この襲来により冒険者ギルドの総本部に走った激震は言葉では例えようがない程のものだったに違いない。「——今すぐ攻撃を中止しろ!止めろと言っていんだ!聞こえないのか⁉︎」 冒険者ギルド・総本部一階。 訓練場がある最奥から正面入り口方向へ移動しながらテオドールが怒号のような声をあげた。十五歳で家を出た時よりも随分良い体躯になった体で全力疾走しようとしているが、慌てふためく者達や建物の内部なせいで速度が制限されて苛立ちを覚えている。思うように先へ進めず、黒く短い髪をグシャリと掻きむしり、眼鏡の奥にある茶色い瞳が不安で揺れた。「とは言っても、相手は『魔族』ですよ⁉︎」 悲鳴のような声が周囲から返ってきた。運悪く今日が警備当番だった冒険者の一人だ。「よく見ろ!向こうに殺意は無い!こちらからの攻撃を、今すぐに、止めろと言ってるんだ!」 どうにか問題の地点にまで辿り着いたはいい
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-01-29
異世界に逃げたら仮初の夫に取り憑かれた!

異世界に逃げたら仮初の夫に取り憑かれた!

綺麗な水と豊かな大地に多種族が暮らす大陸オアーゼ。しかし狭い環境ゆえ争いが起き、魔王ブリガンテの台頭で人間と獣人は追い詰められていく。——だが魔王の自殺で形勢は逆転した。 復興が始まるも人材不足は深刻で、人々は“異世界”からの人材勧誘を開始する。現実から逃れるように幼い弟を抱え移住した彼女もその一人だった。 まさか自分が逃亡先の異世界で、魔王をも操っていた影の存在と仮初の夫婦契約を結ぶことになるなんて思いもせずに。
อ่าน
Chapter: 【第22話】三人目に、是非!・後編(スキア・談)
「ところで、二人で料理をしたりはしないのか?」 もぐもぐと、一口サイズにちぎったパンを食べつつシュバルツが訊いてくる。「料理は僕の担当だ。ルスに任せると……その、節約メニューになるからな」 調味料の必要性すらピンときていないレベルだ、調理を任せる気になど到底なれない。ルスも一応は“知識”としてちゃんとした料理の手順くらいは知っているみたいだが、知っている『だけ』では作れないので、今後も僕が作る事になるだろう。(久しぶりの食事だ、ちゃんと美味しい物を食べたいしな)「じゃあさ、今度手が空いている時で良いんだ、ボクに料理を教えてはくれないか?嫁達にばかり任せては、夫として失格だからな」 瞳を輝かせて素晴らしい台詞をさらりと言うが、お前はまだ独身だろ。「あのなぁ……。そうやって理想を語るのは悪い事ではないが、複数の相手へ同時に結婚を申し込むのは失礼じゃないか?」 溜め息を吐きつつそう言うと、「……そうなのか?」とシュバルツがきょとん顔をする。ルスもちょっと困り顔になってこくりと頷いた。「えっと、ワタシの暮らしていた世界では一夫一婦制の地域が圧倒的に多かったらしいから、正直理解に苦しむ、かな」 ルスの発した『《《らしい》》』という言葉が妙に引っ掛かったが、そこに触れる前にシュバルツが「そうなのか。ボクの暮らしていた世界ではそれほど珍しいものではなかったから、そういう感覚は失念していたな。——すまない」と、また素直に謝ってきた。「……まぁ、アンタの元の世界と同じく、この世界でも複数の者との婚姻は公式に認められてはいるし、アンタの行動は間違っちゃいない。……ただ、『相手を選べ!』とは思うけどな」 独身であるマリアンヌに結婚を申し込むのはまだいい。所詮は他人事だし。だけど、愛情の無い仮初の関係だとはいえ、『結婚している』と宣言している僕らにするのは止めてくれ。(事実婚のままじゃなく、早めに届出の方もやっておくか)「そうか……ボクなりの誠意のつもりだったんだが、迷惑だったのかな」 「誠意?」 複数への同時求婚が何故に誠意を示す事になるのだと思いながら、不思議そうな顔をしているルスと共に、夫婦揃って首を横に傾げた。「これは完全に私事なんだけど……。——ボクの父親は、そりゃもう気の多い人でさ」 「だろうな」 シュバルツの言葉をぶった斬るみたいにツッ
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-12
Chapter: 【第21話】三人目に、是非!・前編(スキア・談)
「リアン。すまないが、食事はまだちょっと待っていられるか?」 前のめりになりながら口から涎を垂らし、尻尾を振っていたリアンに『待て』と言う。途端に瞳をウルッとさせて悲しそうな顔をしたリアンの頭を優しく撫でると、僕とルスは二人で玄関まで足を向けた。「どちら様ですか?」 誰が来ているのかはもう『たのもう』の一声からわかっているはずなのだが、それでも一応確認をするくらいの警戒心を意外にもルスは持っていたみたいだ。小さな弟と二人暮らしをしているからだろうな。彼女が一人暮らしだったら何の確認もせずに扉を開けていそうだけれども。「昨日、山猫亭で会ったシュバルツだ。早速隣の部屋に引っ越して来たから、ぜひその挨拶をと思って」 顔を向かい合わせて『なるほど』と頷き合う。彼はまだ単身でありながら、将来を見越して本当にファミリー向けの部屋を借りたみたいだ。だが本当に複数の嫁を娶る気ならそれでも全然部屋が足りないだろうから、まずはルスとマリアンヌの側で暮らしておこうという魂胆も多少はあるのかもしれない。当初の予定通り、ただここが、多くのギルドから一番近い賃貸物件であるというだけの理由のままかもしれないが。「今開けるね」と返事をしてルスが玄関を開ける。するとそこには、顔が隠れて見えなくなる程に大きな花束を持ったシュバルツが立っていた。 「驚いたかい?ルス、君への贈り物だよ!」 赤や白い薔薇などをふんだんにあしらった花束の横からひょいっと顔を出し、次の瞬間にはルスの方へその花束を差し出してくる。驚いた顔をしながらも、反射的にそれを受け取ろうとするルスの手よりも先に、「そりゃどうも」と不機嫌な声で答えながら僕が花束を受け取る。するとお次は即座に扉を閉めようと手を伸ばした。「待って!君にあげたわけじゃないよ⁉︎」 「知ってる。——じゃあな」 この度の憑依先であるルスのおかげで得た長い腕を有効に使い、扉の端を掴んでそのまま閉めようとすると、シュバルツがその身を犠牲にして挟まってくる。「うぐおっ!」と、何か巨大な物に踏みつけられた時みたいな声をあげても尚逃げようとしないでそのままでいる根性は認めてやろう。 「引越しの挨拶は済んだし、花も受け取った。もう用事は無いだろ?」 心底嫌そうな表情を隠す事なくそう告げると、「いやいやいや、用件ならまだあるぞ?」とシュバルツは体を扉に
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-10
Chapter: 【第20話】朝食の用意(スキア・談)
 翌朝。 目を覚ますと、今日は僕の方が目覚めが早かったのか、すぐ隣で眠っているルスの寝顔が目に入った。猫みたいに尖ったシルエットの獣耳がピクピクと軽く動き、少しだけ開いている口の端っこからは涎が垂れていて、無防備な姿がバチクソ可愛い。——だがすぐに、そう思ってしまった自分に腹が立ち、彼女を起こさない様にゆっくりベッドから這い出しつつ、脳内でルスのふさっとした大きな尻尾をこれでもかってくらいに踏み付けまくった。 ちゃんと着替えるのは面倒なので、着替えをした風に装う為に服装を変えておくかと決めて、昨日山猫亭に居た客の着ていた格好を真似てみる事にした。ゆったりめで丈の長いカウルネックの白いシャツとグレーのジョガーパンツ、外に出る時用にパンツと似た色のボタンアップブーツを靴箱の中にしまっておく。靴は別の場所から拝借してきた物だが、それ以外は自分自身の姿をちょっと変える要領で着替えているので、『脱ぐ』という行為が出来ない。だが、消し去る事は可能なので不自由はないだろう。(さて、早速二人が起きる前に朝食を用意しておくとするか) それこそ面倒だと、どこかから出来合いの品を頂戴する事も可能だが、早急にルスの心を僕のモノにしてしまうにはやはり手作りが一番だ。早く心酔させないと、僕の方が彼女の持つ善意に毒されてしまいそうだから、本当に急がねば。 問題は食材だが、これに関しては昨日きちんと買い揃える事が出来たので、今日は真っ当な料理が可能だろう。まず手始めにジャガイモとトマトのスープでも作ろうと決めて鍋を用意した。 ——昨日はあの後、山猫亭で昼ご飯を済ませ、マリアンヌの仕事が落ち着くのを待ってから家賃を払うと、僕達は逃げるみたいにして店を後にした。彼としては『つるぺた胸発言』に対しての謝罪と言い訳をもっと沢山したかったみたいだが、流石にリアンが暇を持て余し、ルスの尻尾で遊んだり噛んだりし始めたので、向こうも無理に引き止めようとはしてこなかった。せめてものお詫びにと、日持ちしそうなお菓子を大量に持たされはしたが。 その後いったんもらったお菓子を置く為に部屋に戻り、今度は露店の並ぶ市場へ向かった。 一昨日の夜は閑散としていた場所だったが、昼間はとても騒がしく、買い物に来る人達でとても賑わっていた。家族らしく、何か摘まみながら三人でデートでもと思っていたのだが、今度はリアンが
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-06
Chapter: 【第19話】山猫亭③(スキア・談)
「はぁぁぁぁぁぁ⁉︎」 店内どころか、外にまで聞こえそうな声をマリアンヌがあげた。彼自身がこの店や周辺一体のオーナーでもなければ通報モノの大声だ。“男”丸出しの低い声だったからか、彼を“彼女”だと認識していたルスがかなり驚き、僕の履いているスラックスの太腿部分をぎゅっと掴んでくる。その甘えがちょっと嬉しいなと思っている自分に喝を入れつつ、「その夫です」と宣言して僕は軽く手を挙げてみた。「最初から『誰だ?コイツ』とは思ってはいたけど、ま、ま、まさか、一番有り得ないだろうと思った答えだったなんて…… 」 愛どころか恋すら理解していなさそうな(実際問題、マジで理解していないのだが)くらいに幼い容姿をしたルスの連れが、こんなオッサンでは確かに一番予想しない関係性だろう。しかも昨日まではこの町に居なかった、急に降って湧いた存在だし、当然か。「……あ、詐欺?詐欺ね?結婚詐欺。『お金あげるから結婚しろ』って言われて『うん』って答えちゃったんじゃないの?ルスちゃん!」 結婚詐欺としては辻褄の合わぬ内容を早口でまくし立て、僕の腕の中に綺麗に収まったままになっているルスの方へ、ぬっと筋肉質な腕を伸ばし、マリアンヌが彼女の右手をぎゅっと掴んだ。「お金なら私がいくらでもあげるから、そっちじゃなくて、私と結婚しときましょ!」 ごつい体型の顔だけ美人が、叫ぶわ半泣きだわでもう、この席周辺だけ完全に地獄絵図である。何故僕は、この短時間の間に二度も嫁(仮)が求婚を受ける様子を目にせねばならんのだ。愛情ありきで結婚したわけではなくても不愉快極まりない。「まさか、この色香に惑わされたの⁉︎駄目、絶対!こういうタイプの男はどこに行っても散々モテまくって浮気し放題よ!釣った魚には餌もやらず、ルスちゃんが浮気を責めたら『お前は黙って家に居ればいいんだ、面倒臭い奴め』って自分の行為を棚上げしてくるに決まってるんだからっ」 散々な言われ様だが、僕のこの容姿を充分評価しているみたいだ。五十代くらいのオッサンである点を除けば、彫りの深い目鼻立ちや少し垂れ目がちなのに意志の強そうな印象のある青鈍色の瞳、シミのない艶やかな肌質や、後ろにただ流しただけなのに様になる髪質などはかなりの高得点をつけられるものがあるので、マリアンヌが警戒心を丸出しにするのも納得である。「ルスちゃんみたいに純粋無垢な子には
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-04
Chapter: 【第18話】山猫亭②(スキア・談)
「外にある掲示板を見て来たんだが、ここの大家と話は出来るかな?」 丁度昼時で食事をしに来ている客でごった返している店内を、真っ黒なマントで身を包んでいる男が堂々と横切っていく。身長と声からするとまだ少年の様だ。《《いかにも》》なとんがり帽子を頭に深くかぶり、手には外にある掲示板に貼ってあったであろう“空き部屋情報”の書かれた紙を持っている。そのまま持ち歩くには大きなサイズのものだからか、ぐるっと筒状にしているが、よくまぁあれを剥がして持って行こうって気になったものだ。「オーナー!賃貸の件での要件があるって方が来てますけど、奥の席にご案内しておいてもいいですか?」 ホール担当の女性が厨房に戻っていたマリアンヌに声を掛ける。彼がした『OK』の合図を見て、「こちらの方でお待ちいただけますか?」と店員が声を掛け、全身真っ黒な少年風の男が僕達の座っている席の方へ案内されて来た。「何か飲み物でもお持ちしましょうか?有料ですけど」 「じゃあ、オレンジ……いや、ホットコーヒーをブラックで!」 「ホットコーヒーですね。今は丁度忙しい時間なのでオーナーとお話するには結構待って頂く事になると思うんですけど、お時間は問題ないですか?」 「あぁ、問題ない」 不遜な態度でそう言うと、少年と思われる男は案内された席に座ろうとした。が、ちらっとこちらの席に視線をやったかと思うと、とんがり帽子とマントの隙間から少しだけ見えている顔を真っ赤に染めて、急にルスの方へぬっと腕を伸ばし、彼女の手を勝手に握った。「君!——ボクの、嫁にならないか?」 「はぁぁぁぁぁ⁉︎」 少年の声とほぼ同時に叫んだのは、夫(仮)である僕ではなくて、厨房からリアンのための料理を運んで来たマリアンヌの方だった。その隙に僕は少年の手を叩き落としてルスの隣に席を移し、彼女の肩を抱いて自分の方へ、これ見よがしに抱き寄せておく。愛情の伴っていない仮初の夫婦であろうが、夫婦は夫婦だ。憑依先でもあるルスを盗られまいと少年の顔をキッと睨む。「ちょ!そっちもそっちで何やってんのよ!」 怒った猫みたいに毛を逆立ててマリアンヌが怒っている。高身長のせいか、『山猫亭』という店名と同じヤマネコが怒っているみたいにも見えた。「あ、リアンちゃんのご飯持って来まちたよぉ」 急に声を甲高くしてそう言うと、マリアンヌは持っていた大皿
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-02
Chapter: 【第17話】山猫亭①(スキア・談)
 昨夜は興味も薄かったから、この辺一体にある賃貸住宅群の大家が営んでいる料理店の店構えをよく見てはいなかった。ルスとリアンの借りている一号室からは徒歩十歩程度と言う好立地にも拘わらず、節約のためにと、一度も食事をした事がなかったせいで彼女から得た“記憶”の中でもこの店の様相はうろ覚えである。 そんな料理店の名前は『山猫亭』。何ともまぁ、店員からの注文の多そうな名前だ。名前に相応しく、小憎らしい目をした山猫の描かれた巨大な木製の看板が扉の上にドンッと飾ってあって結構目立つ。そんな絵に対して興味津々といった眼差しを向けるリアンの頭を軽く撫でてやりつつ扉を先に開け、ルスを店内へ先に入れてやった。「いらっしゃいませー!何名様かしらん?」 随分と、無理矢理甲高い声を出しています感の強い声が聞こえた。ここの大家は、厨房は他の者に任せて、自分は“ウェイトレス”をやっているらしいから、この声はきっとオーナーであるマリアンヌのものだろう。ルスの“記憶”から得ている大家の容姿は確か……黒髪で、背の高い妖艶な印象の美人だ。……だった、んだが……。(——おいっ、またか!)「あらーん!ルスちゃん、いらっしゃい!お昼時に顔を見せてくれるだなんて初めてじゃない?」 頑丈そうな腰をくねらせ、嬉しそうにマリアンヌがルスの方へ駆け寄って来る。最速で彼女の腰に手を回し、「丁度良いわ!今日こそはご飯食べて行って頂戴な!」と奥の方へ誘導していく。 「はい、ありがとうございます」 嬉しそうに答え、されるがまま席に案内されていくルスについて行くと、四人掛けの席に着いた。一切声を掛けられてはいないが、一応僕の存在も認識はしているらしい。「すぐにリアンちゃんの椅子も持ってくるわね!メニューを見て待っていて」 「はい、ありがとうございます」 定型文しか話せない玩具みたいに先程と同じ言葉を口にし、ルスが椅子に腰掛ける。僕は彼女の向かい側に座ると、丁度リアン用の子供椅子をマリアンヌが軽々と片手で持って戻って来た。「はーい、リアンちゃんはこちらに座りまちょうねぇ」 微妙に赤ちゃん言葉を使いながらマリアンヌがリアンに声を掛けると、彼も慣れた様子で子供用の椅子の方へ飛び移った。首周りからの温かなモフッと感が急に消え、少し寂しい気持ちに。「さて、何がいいかしらん?まずはドリンクでもどう?サービスし
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-01-29
死に戻る君に救いの手を

死に戻る君に救いの手を

地球によく似た青い惑星『ハコブネ』を管理する『管理者』は、念願の後継者を発見する。しかし、剣叶糸は幾度もの死に戻りで既に魔力をほぼ使い果たし、あと一度死ねばもう『後継者』の権利を失う寸前の状態だった。叶糸を救うため直接向かった管理者は、彼の認知の歪みで“マーモット”の姿になってしまう。だが癒しを求めていた叶糸にあっさり受け入れられ、【アルカナ】と名付けられた管理者は、不遇な彼の心を癒やしつつ、自らの願いを果たすために寄り添っていく。 【全45話】
อ่าน
Chapter: 【第19話】南風家との契約②(アルカナ・談)
 運ばれながら行き着いた先は、随分と広めではあるものの、どうやら予想通り客間の様だ。隣接している和室も繋げていてかなり広い。部屋の上座部分に大層立派な椅子が置かれているが、和室には似つかわしくない。どうもその椅子は私の為に用意していた物だったみたいで、玉座にも等しいその椅子の上に下ろされ、続いてアルサ達がその前にずらりと並び、正座をした。 全員の視線が一斉に集まり、うぐっと喉が鳴った。記憶にある限りではこんな扱いは初めてなせいかちょっと緊張してくる。「改めまして、当家にお越し頂き誠に恐悦至極——」 アルサが深々と頭を下げてそんな事を言い始めたものだから、私は慌てて「待て待て待て!そう畏るな。こっちが緊張する、わい!」と割って入った。「今は時間も無い。堅苦しい挨拶は抜きで頼む」 「……かしこまりました」 少し不本意そうな声ではあるものの、顔を上げ、目が合った途端にまたアルサが鼻血を垂らし始めた。……もう病院に行った方がいいんじゃないだろうか。 彼の事が心配ではありつつも、外が段々と明るくなり始めているせいで気持ちが焦る。「急な話で悪いのだが、実はな、折り入って南風家の当主に頼みがあって来たの、じゃ」「貴女様が、私にですか⁉︎」 胸元に手を当て、興奮気味な声が即座に返ってきた。はあはあと呼吸が乱れてとても苦しそうだが、いよいよもって救急車でも呼ぶべきか?「——あ、そう言えば自己紹介が遅れたな。私は、君達が推察していた通りの立場の者で、我らは自分の事を“管理者”と代々自称している。だが、新たに『アルカナ』という名を最近貰ったので、今後はそちらで呼んで欲しい」 「畏まりました、アルカナ様っ」 瞳を輝かせながら名前を呼ばれるとすごく照れる。叶糸以外から呼ばれたのは初だが、改めて、良い名をもらったなと実感した。「所で、『頼み』とは?」 前のめり気味に訊かれたが、ここで引いては意味が無い。一度咳払いをし、私はしっかりと前を向いて、真面目に用件を伝えようとしたのだが……胸元を押さえている者や過呼吸気味に口元を覆っている者ばかりが増えてきたのは気のせいか?「……君らはさっきから何なのじゃ」 困惑気味に訊くと、「申し訳ありませんっ!」と土下座をされる。一同全てに謝罪され、ちょっと逃げ出したい気持ちになってきた。「その、私達南風家は一族全員が、そう全
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-11
Chapter: 【第18話】南風家との契約①(アルカナ・談)
「…………」 まさか見えているのか?と疑問に思いながら、慌てて我が身を確認したが、季節に反して真冬向け並みの脂肪蓄えムッチリボディであるという問題点がある以外は至ってちゃんと姿を消せている。叶糸レベルが相手では通じないままだが、保有魔力が高めであろうが看破出来ないくらいにはしっかりと隠しているのにと不思議でならない。 きっちりと跪礼されたままで、依然として御一行は頭を上げず、最前の中央に位置している一人以外は微動だにしていない。これでは埒が明かないなと考えはしたが、私はこのまま「……もしかして、私の姿が見えているのか?」と素直な疑問を口にした。 即座に「——あ、楽にしてから答えて欲しい、ぞよ」とも付け加える。また変な見栄を張ってしまって恥ずかしくなったが、もう遅い。 叶糸同様、彼らも私の変な言葉遣いを華麗にスルーしてくれ、まるで事前に訓練でもしたのか?と思うくらい綺麗に皆が一斉に顔を上げた。一番手前の中央で、一人だけずっと肩を震わせていた者が現在の当主である南風アルサだった。黒に近い茶色い髪色、同系色の瞳と褐色肌が特徴的な青年である。若いながらに一国の『宰相』という職に就いているにしては随分と優しげな雰囲気があり、眼鏡で知的さをプラスでもしていなければ、『職業は保育士です』と言われた方が納得出来る風貌の御仁だ。「いいえ。私如きの瞳では看破出来ぬ完璧な隠滅状態ですよ。ですが我々は、長年訓練を積み、『種族特性』を最大限にまで引き上げているので、こちらの女性は愛らしき足音や羽ばたきで、そこの男性は木蓮のようなその匂いで貴女様の位置を把握しており、私めは超音波の代わりに魔力を用いて『反響定位』いわゆる『エコーロケーション』の様なもので周囲の状況を感知しています」と教えてくれた。「……すごい、ね」(『種族特性』か。叶糸の場合は、あの脚の速さだろうか)「ありがとうございます」と微笑みながらアルサが頭を下る。姿さえ隠せばどうとでもなると思っていた自分の甘さを忘れてしまう優しい笑顔だ。だけど私は『今度は獣人の種族特性をも意識して行動せねばな』と反省した。「ここではなんですから、場所を変えませんか?」 そう提案され、「あぁ、そうじゃな」と答えながら姿を現す。するとアルサが急に崩れ落ちる様にその場で伏せ、慌てて顔面を手で覆ったかと思うと、今度はボタボタと手の隙間か
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-09
Chapter: 【第17話】『幸せ』の為に、私に出来る事を(アルカナ・談)
 泥沼にでも嵌まったみたいに抜け出せずにいた睡眠状態から、明け方近くになってようやく目が覚めた。相変わらず私の体はマーモットのままだ。あんなに強固だった『認知』が随分と緩んだおかげで今もまだ他の姿への変身は出来そうだけど、やっぱりこのままが一番楽だなと、変化せずともわかる。  いつも通り隣には妙にスッキリとした顔の叶糸が眠ったままで、私がちょっと動いても起きる気配はなさそうだった。(叶糸も初めての夜会で相当疲れたのだな。……となると、出掛けるなら今がチャンスか) 実は、今後の為にも早めにやっておきたい事がある。だけど叶糸は私に拘束魔術をかけたくらいにとっても過保護だから、彼が起きている時には単独での外出は嫌がりそうな気がするのだ。なので、いっその事彼が眠っている今のうちに用件を済ませておこうと、そっと叶糸の腕の中から抜け出してみる。 時間帯のおかげか彼の眠りはまだまだ深いみたいだ。先ほどまで私を包んでいた腕がぽすんとベッドに落ちたが起きそうな様子はない。その事にほっと息を吐き、引き続きノソノソとゆっくり布団から這い出て行く。 ベッドからトンッと降りて後ろを確認したが、幸いにして叶糸は今も眠ったままだ。『よしっ』と心の中だけでガッツポーズを取り、窓枠に手を掛けて、幽霊みたいにするりと窓を通過していくと同時に、我が身を『雀』の姿に変えた。あまり派手な鳥だと早暁であろうが目立ちそうなので、どこにでもいる小さな鳥を選んだ。何も考えずに、移動が楽だからと『飛べる生き物』とだけイメージしたら獣人化した時の姿に引っ張られて、巨大な龍になるか、あるいは鳳凰にでもなってしまいそうだったから、きちんと意識をしてこの姿に体を固定した。(うーん、やっぱちょっと疲れるな……) この姿で居ようと意識しないとすぐにマーモットに戻ってしまいそうなくらいに引っ張られる。『どんだけマーモットが好きなんだ、叶糸は!』とちょっと文句を言いたい気持ちになりながらもふわりと飛び立ち、目的地を目指す。 ——だがその同時刻。 叶糸がのそっとベッドから起き出して裸足のまま歩き、窓の外を見上げて虚な瞳のまま、丈夫な爪でガラスを引っ掻いていた事にも、いつもの自慰行為がマーキングと同等の効果を持っている事にさえも気が付かぬまま、私は愛らしい雀ボディで必死に大空を羽ばたき続けた。       ◇ 今
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-05
Chapter: 【第16話】夜会の後で——(剣叶糸・談)
 面倒事に、付き合わされる事になった。 侯爵の爵位を持つ星澤家で開催される夜会の話を義父から聞かされた時に思った、率直な感想だ。都内に住む貴族達の情報は叩き込まれてはいるが、あくまでも基礎的なもので最新の情報じゃないから知識の更新が必要だし、兄達から『やっておけ』と指示されているレポートの用意や、本当に使うのか不明ではあれども普段の勉強の為に要点をまとめたものの準備もしてやらねばならない。そして今は何よりも自分の時間も欲しいというのに、更にまたアイツらに時間を奪われるのか、と。(だけど、行って良かったな) 立場的に『断る』という選択肢は無かったとはいえ、今は心底そう思う。(拘束魔術でしっかり軟禁しておいたのに!) 会場内でアルカナを見た時は『どうしてここに?』とかなり慌てたが、標準よりもずっとむっちりとしたぬいぐるみ系ボディで必死にホール内を歩く(……いや、あれでも一応は走っていたのかも?)姿も見られたし、超が付く程の希少種である『龍』の『獣人』となった彼女と踊る事が出来たのは何よりの幸運だった。(でも、アレは反則だろ……) ただでさえ好みの匂いだというのに、アルカナの『あの姿』を思い出すだけで顔どころか耳まで熱い。 クロスタイをやや乱暴に外し、シャツの前ボタンにかけていた手を止め、右手で顔を覆ったが、冷やす効果はなさそうだ。 人生初だった夜会を無事に終え、かなりの疲労を抱えながらも自宅に戻れはした。慣れぬ行為ばかりですぐに寝たいくらいに疲れているのに、寝室で無防備に眠るアルカナを前にすると、腹の奥が急速に重くなっていく。御丁寧に扉が閉まっていたせいか、隙間風がよく吹き込む部屋なのに彼女の甘い香りが充満しているからだろう。(……鼻が利くのも考えものだな) まんまるな背中をさらしてくーくーと眠るその姿に『龍』の『獣人』であった面影は少しも無い。存在自体が幻想かと思うほどの儚さも、威厳も、何もかも会場に置いて来たみたいだ。「……あの後は大変だったんだぞ?」 ベッドに両腕だけを預け、アルカナのふわふわとした頭に顔を埋めたが、起きる気配はまるでなかった。 ——星澤家の邸宅で開催された夜会でアルカナと夢の様なひと時を過ごした直後、彼女は霧が如く消え去ってしまった。 今まで誕生報告情報すら無かった『龍』の『獣人』が会場に現れ、そして忽然と消えた
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-03
Chapter: 【幕間の物語②】叶糸の一人目の婚約者 ③(アルカナ・談)
 将来有望な後継者を廃人にされた事もあり、西條家の本家と親族一同はソロアを『西條』から除籍すると決意した。あんなに毛嫌いしていた『平民』のレッテルをあえてソロアに与え、大きくなる一方の腹を抱えたまま、とある僻地にある『静養所』とは名ばかりの『収監施設』に送る事になった。超が付くほどの問題児を|体《てい》良く閉じ込めておくための施設らしい。一度入るともう二度と戻ってはこられないって感じの場所だ。 末弟であるソリアは心身共に回復は見込めず、治療の一環として、問題となった記憶の消去が決まった。医師免許と魔術師、双方の資格を持つ者が、国の許可を得て行う特別な医療行為だ。じゃないと記憶を消し放題になっちゃうから、使用条件が厳しいんだよね。 生活に支障が出ないよう、本来なら問題の原因となっている記憶を消去するのみで終わらせるのだが、今回の一件は、厄介な事に『加害者』が『実の姉』である。生まれた時から関わってきた人間が加害者であった場合、トラウマ化した出来事の記憶のみを消去したとしても深層心理の傷は癒えず、残っている別の『加害者』に関連した『記憶』や『思い出』が悪さをして精神的ストレスを負い続ける可能性があるため、ソリアは今まで生きてきた十二年間すべての記憶が消去される。 少年の身でありながら、中身は赤ん坊からのやり直しとなったのだ。    大事な息子として、そして後継者の筆頭としてソリアに費やしてきた全てがリセットされてゼロになる。実父でもある当主の心の苦難はもう想像を絶するものだったに違いない……。        ◇ とうとうソリアが西條家から除籍される日になった。  本家にて、西條家一同が見守る中で除籍手続きを執行。そして除籍後は『静養所』に送るための事前準備としてソロアの魔力が封じられる。逃走防止、且つ施設運営者達の安全のためだ。 魔法も使えなくなり、特権階級から平民への転落。 そして腹の子供と共に僻地に捨てられる。 彼女の状況はそう言っても過言ではないだろう。 差し迫った事実を全く受け入れられず、少しも悔恨する事もなく、ただただ『高貴なワタクシが何故⁉︎』と騒ぐばかりで反省の色は微塵もない。これまでの日々で散々親や弟妹達から行動の問題点を説明されてもまともに聞こうともせず、身の回りにあった高価な装飾品や衣類などの全てを没収されても憤慨する
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-01-30
Chapter: 【幕間の物語②】叶糸の一人目の婚約者②(アルカナ・談)
 当人同士の了承も覚悟も何もかもないまま、剣と西條の両家で婚約が成立してしまった。 『獣人』であり、『貴族』として育ってはいても、その血筋は『平民』で、王家や皇家とは一切無関係な叶糸との婚約など、気位の高いソロアは当然受け入れるはずがなかったのにだ。 案の定、西條家の当主でもある父に何を言われようが、末弟に説得されようが聞く耳も持たず、暴れに暴れて頑なに拒絶した。家の財政状態を懇々と説明されても、『現実を見るように』と諭しても無駄だった。 叶糸もこの婚約を歓迎などしてはいなかったが、『このまま剣の家に居るよりはマシかもしれない』とは考えていた。『実家との縁さえ切れてしまえば、あとはどうとでもなるのでは?』とも。 何をどうしようが婚約相手から好かれないのはわかっている。叶糸もソロアの噂は知っているからだ。お互いに愛情が無いのなら、形だけの契約結婚にでも持ち込めるかもしれない。立場的に自分からは無理でも、向こうから早々に離婚を提案してもらえるという可能性だってありそうだ。——そう割り切り、渋々ながらも叶糸は婚約話を受け入れた。 義父に言われて彼は月に二、三度、婚約者となったソロアと交流を深める為にと西條家を訪れる様になった。だが玄関にすら辿り着けず、正門前で門前払いを喰らった。毎度毎度毎度、行くたびに『平民を家に入れるな!』と事前に指示されている西條家の警備員から申し訳なさそうに『通せない』と告げられる。それでも礼儀として半年間はそれを続けたが、流石に不毛だと悟り、学校関連などで多忙にもなってきた事を理由に行くのをやめると、今度は『平民如きに蔑ろにされた!』と余計に激怒し、ソロアは完全にブチギレてしまったそうだ。 ——四ヶ月程経ったある日の事。 ソロアは父に『子供が出来た。平民との婚約関係を解消する』と、少しも悪びれる事なく告げてきた。 父は『……剣家の彼との子供じゃないのか?実は、そうなんだろう?』と何度も言い聞かせ、無理矢理そうである事にしようとしたのだが、ソロアは頑なに『違う』と言い、でも子供の父親が誰なのかは絶対に言わなかった。『あの平民の子なんかじゃない。会った事もない』 徹底してそう言い続け、そしてそれが事実である事は西條家で働く者全員が知っている。 どんなに箝口令を敷こうが、どこから事実が漏れ出るか分からず、結局この婚約は破談となっ
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-01-28
黒猫のイレイラ

黒猫のイレイラ

箱庭の様な世界に突如召喚されてしまったイレイラ。自分を召喚した、羊の角を持った獣人みたいな神子・カイルに「君の前世は僕の猫だったんだ」といきなり言われても意味がわからない。 『猫』発言のせいで彼は『飼い主』だったのかと思ったら、まさかの『夫』であった事が発覚。距離感ゼロで愛情を注がれ戸惑うも嬉しい乙女心と、少しずつ知っていく過去の自分。——あれ?もしかして、異世界での生活も悪くないかも。 【全48話】 【イラスト・くない瓜様】
อ่าน
Chapter: 【第30話】貴方だけを想い咲く花(カイル・談)
「ふぅ……」 温かなお湯に入ると、ジワァと熱が染みて体が冷えていた事に初めて気が付いた。ずっと横になっていたせいか少し体が固い気もする。手でゆっくりマッサージをしながらそれらをほぐし、一息つく。 ——すると考えるのは、やはりイレイラの事だ。「……イレイラは大丈夫かな、悪い事したかな……」 神殿内を案内した時。 何かに刺激されて、イレイラが前世の記憶を取り戻しはしないだろうかという期待を少ししていた。記憶があろうがなかろうが、もう既に今の彼女をも愛している事に変わりはないのだが、もし過去世を思い出してくれるなら、嬉しいというのが本音だった。 初めて逢った時から、一緒に過ごした九年という歳月。それらを共に思い出し、語らう事が出来たら幸せだなと思ったのだ。 この神殿内には多くの思い出に溢れている。一緒に行った事の無い場所の方が少ない。特に結婚式を挙げた“祈りの部屋”では、此処なら何か思い出すんじゃないかと期待したのだが、『綺麗な場所ですね』と感嘆の息を洩らすだけで少しガッカリした。 それなのにまさか、昔一度だけ、一悶着があった玄関ホールの方でそれらしい反応を見せ、その場で倒れたうえに、昏睡状態になってしまうとは思いもしなかった。 幸せな思い出よりも、辛い思い出に反応された事に対して複雑な気分にもなった。語り合いたいのは幸せな記憶の方なのに……。 ズルズルと体が滑り、湯船の中に沈む。口元まで隠れた辺りで流石に力を入れて止まり、そのまま薬草の溶けたお湯の表面を見つめた。周囲をうっすらと、鏡のように周囲を写す様を見ているとどうしたって色々考えてしまう。 ……早く、イレイラに逢いたい。 無事をこの目で確かめたい。 触れたい。 撫で回したい。 んで、あわよくばキスとか……もっとその先の事も、早くしたい。 もう大人だって知った晩に見た夢みたいな事を、すぐにでもしたい。もう我慢出来ない。そうだ、僕はもう十分我慢した! ——そう思った瞬間、体に違和感を感じた。 その事に慌て、ガバッとお湯から顔を上げて下を見る。案の定、下腹部の剛直が激しく存在を誇示していた。「いや、あの……起きてすぐコレは……」 今までの長過ぎる歳月を処女神のように清くすごしてきたのに、イレイラに逢ってからのコレの自己主張には、自身の事なのに呆れてしまう。彼女を“伴侶”として娶っ
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-11
Chapter: 【第29話】貴方だけを想い咲く花(カイル・談)
「……イレイラ!」 意識が戻った瞬間、僕は飛び起きて周囲を見渡して叫んだ。僕の傍にイレイラが居ない。 ——どこに行った?彼女は目を覚ました筈だ。何故此処に居ない? 不安になる。 僕はどのくらい意識が無かった? まさか……。 あれからまた何かがあったのか? 眠っていた時間が長過ぎたのかも……。 様々な不安と疑問が心にわいてきて、考えを支配する。 怖い、怖い、怖い! こんなに早く、また愛しい人を失ってたまるか。い、いないなら早く再度召喚ないと、すぐ準備しなきゃ、あぁぁぁぁぁ、どうでしようどうしよう、どうしたら……。 クラッと目の前が揺れ、僕は頭を抱えた。「……おい。落ち着け、|主人《あるじ》。イレイラは今、庭に居る。気分転換をしろと皆で庭に行けと薦めたらしいぞ」 音もなく、声の主が僕の元へ飛んで来て肩に留まった。今は此処に居ないはずの存在に驚きが隠せない。「……サビィル?帰っていたのか?」「主人が倒れたと聞いて、慌ててな。仕事どころではないだろう」 僕の伝達役を務める白梟のサビィルが、『褒めろ』といいたげな瞳で言った。「……イレイラに、逢いに行かないと」 そう言って、僕は布団の上を這う様に移動し、ベッドから脚を下ろした。「気持ちはわかるが、私を無視するな。イレイラに会いたいなら、まずはさっさと体を洗って来たらどうだ?体を拭いてはいたが、一週間ぶりに逢うのにそのままは流石になぁ」 肩の上で頭を揺らしながらサビィルが諭してくる。「イレイラは、無事なんだな?」 眉間に皺を寄せ、僕は再確認した。早く安心したい。無事だと聞いても、まだ少し怖い……。「あぁ、無事だ。もっとも私もまだ会ってはいないがな。だが、セナとエレーナが『無事だ』と言っているから間違いないだろう」「……エレーナが、帰っているのか?」 懐かしい神官の名前に、少し嬉しくなる。彼女が亡くなってからまださほど経過していない。なのに、もう戻ったのか。「“前世持ち”で生まれる事が出来た神官は、他の者も皆戻っている。お前の話を聞き、焦ったらしいな。主人の危機だ、皆、私並みの忠誠心で素晴らしいじゃないか。これも全て、主人の人徳というところか」 誇らしげな雰囲気のままサビィルが説明してくれる。ホント、よく話す梟だ。まぁ、だから伝達役にしたのだが。 そんなやりとりの音を聞きつ
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-09
Chapter: 【第28話】貴方だけを想い咲く花(桜塚イレイラ・談)
 一息つき、口を開く。「……何で、今回は倒れたのかなって不思議に思って。倒れたのは、『初めてだ』って皆さん騒いでいましたよね?じゃあ、私が死んだ時はどうして平気だったのかなって。あ、すみません、『私』……じゃないや……えっと、猫の方です」「いいんですよ訂正しなくても。イレイラ様はイレイラ様です。生まれ変わり、姿が変わっても」 一呼吸おき、セナさんが言葉を続ける。「それは多分。思い出の量の問題ではないかと思います」「思い出の、量?それって……」「猫だった時のイレイラ様とは、振り返る事が出来る記憶が多くありますし、死期を覚悟する時間も沢山ありました。でも今回は、思い出があまりにも足りなくて怖くなったのではないかと。今の貴女様の姿にも、カイル様は一目惚れされていますから。これから多くの経験を二人でしていこうと思っていた矢先の事で、すぐに『次の貴女様を呼べばいい』などと割り切る余裕は無かったのでしょうね」「カイルが……『私』にも一目惚れ、していたんですか?」「はい。疑いようのない程わかりやすく」「でも、彼は『猫』だった時の私が好きなんですよね?今の私の事も好きって……裏切りなんじゃ?」「何故ですか?“魂の結婚式”をなさったお二人が、死に引き裂かれても何度も惹かれ合うのは当然です。生まれ変わった貴女へ好意を抱けない方が、むしろ裏切り行為だと私は思います。先程もお伝えした通り、生まれ変わろうともイレイラ様は、イレイラ様なのですから」 セナはそう言うと、私の左胸をスッと指差してきた。「ここにその証がありますよね?薔薇の花の様な、小さな約束の印が」「あります。でも、何で知って?……あ、そうか、セナさんは証人として『あの場』に居たからか」「おや?思い出したのですか?」「あ、いえ。思い出した訳では無いんですが……その、色々ちょっと」 言葉を濁して口を閉じる。話せば長くなるし、話して信じてもらえるかどうかわからない。『魔法なんてモノまであるこんな世界で、何を迷う?』とも思うが、カイルにすらまだ話していない件だし、そもそも話が脱線してしまう事も懸念材料になった。「いいんですよ、無理に説明は求めません。ただ、難しく考えるな事はないと思いますよ?お二人は魂の伴侶なのですから、惹かれ始める事に時間は必要ないかと」「でも、私は猫だった時の事を何も覚えていないし
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-05
Chapter: 【第27話】貴方だけを想い咲く花①(桜塚イレイラ・談)
 玄関ホールで残留思念を読み取った後、私はその場で倒れたらしい。夜には熱が上がりだし、その後三日間昏睡状態が続いたそうだ。私が目を覚ました時に見たカイルは、三日間片時も離れず傍に居てくれていたらしく、顔は酷くやつれていて青白くなり、このまま後一日でも私が目覚めるのが遅かったら、彼は本当に死んでしまったんじゃないかと思うくらい弱っていた。 そのせいで今度は彼が寝込んでしまった。 彼が永劫にも等しい時を生きてきて初めての事だったらしく、神殿中が大騒ぎに。王族の方々が見舞いに訪れたり、まだ来訪していなかった“前世持ち”の神官達まで慌てて戻って、その中にはまだ幼年期なのも構わずに帰って来た者もいた。 別の神子達も『何か手伝える事はないか』と駆けつけて来てくれたりまでした。その中にあの“ライサ”も混じっていて複雑な気分になったが、彼女はとても私に優しく接してくれて気味が悪い程だった。彼女の兄だと言う双子の“ライジャ”だけは私達にもの言いたげにしていたが、彼女に窘められて黙っていてくれた。       ◇ 私に出来る事は何も無いまま、あれから一週間がすぎた。その間、傍に付きっきりだった私は『このままでは、また貴女様が倒れてしまう』と周囲からとても心配され、気分転換をする様にと庭に追い出され—— 今|此処《庭》に居る。「大丈夫かな……」 気分を変えろと部屋から追い出されても、カイルの事が心配で、綺麗な花も目に入らない。周囲は新緑の木々に溢れ、庭師達が丁寧に手入れした綺麗な花々が咲き誇っているというのに、ただただベンチに膝を抱えて座ったままでいる。景色を楽しむ余裕を持てない事が本当に残念だ。「“前の私”が死んだ時は、カイルはどう乗り切ったんだろう?“今の私”が倒れた位でここまで弱ってたんじゃ、もっと酷かったんじゃないの?……だって、死んじゃったんだよ?」 誰に聞かせるでもなく、呟いた。「……あんなに、愛してくれていたのに」 倒れる前に見た残留思念は、今までの中で一番強烈な記憶だった。その前までは何処か他人事で、VRを使って誰かの物語を楽しんでいるくらいな感覚に近かったのに、玄関ホールでの出来事はハッキリと『私の記憶だ』と思えた。『思い出した』という感覚に近いかもしれない。他の記憶は、相変わらずなのに。 ……怖かった。 ライサに殺されるかもという恐怖より
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-03
Chapter: 【第26話】棘⑥《残留思念》(イレイラ・談)
『——え?何?何それ!』 ライサが悲鳴をあげた。予想外の事にパニックになっているみたいだ。 彼女の仕掛けた魔法陣はその発動をゆっくり中断され、散らばる砂の様に黒いモヤと共に消えていく。『何でそんな事が出来るの?——コレは古代魔法よ⁈』『知るか!お前が知識不足なだけだろ!』 怒気を隠す事なく叫び、カイルがライサに飛びかかった。 愛しい人が胸に飛び込んでくる事でライサは色々勘違いをし、頬を染めて腕を広げている。『やっと私を抱きしめてくれるのね!あぁ、ずっと待っていた、の……——え?…… 』 ライサの言葉が途中で切れた。 カイルの手が光りながら彼女の体にめり込んでいる。少し間を開けてから、スッと、ゆっくりそこから手が抜かれた。でも、彼女の体には何も起きている様には見えない。なのに、ライサの顔色は真っ青だ。『あ……嘘でしょ?待って、やめて……』 ライサの悲痛な声が耳に痛い。床にへたり込み、ライサが懇願するような眼差しでカイルを見上げている。彼女の視線の先にあるカイルの手には、どす黒く光る紅い石が脈打つ姿をして存在していた。『ダメ、やめて?大事なのよ、愛してるの。貴方が好きよ……カイル、カイルカイルゥ——』 ボロボロと、蛇に似た大きな目からボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。『お前なんかいらない。愛していないし、好きですらない。イレイラは僕の魂の伴侶だ。彼女を傷付けて、まさか無事でいられると思うのか?』『待って、本当に、心から愛してるのよ。そんな事しないでぇ……』 ブルブルと震え、ライサが何度も何度も哀願する。祈る様な仕草で、彼女はカイルへにじり寄った。『そんなもの、一度でも僕が欲したか?こんなゴミは、捨てるべきだ!』 そう言ったと同時に、虫ケラでも見る様な冷たい眼差しのまま、カイルは手の中の石を力任せに砕いた。『やめてぇぇぇぇぇぇ!……あ、あぁ……ぁぁぁ……』 急に、ガクンっとライサの首が項垂れる。そしてそのまま動かない。同じ体勢のまま、全く微動だにしなくなった。(——まさか、殺しちゃったの?……嘘でしょ?) 痛みの消えた体をゆっくり起こし、私はライサを見つめた。いくらなんでもやり過ぎでは?とは思えども、どうしていいのか、わからない。『……イレイラ。イレイラ!大丈夫?もう痛くない?』 さっきまでとは全くの別人の顔をして、カイルが
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-01-30
Chapter: 【第25話】棘⑤《残留思念》(イレイラ・談)
『初めまして。私はライサ、見て通り神子の一人よ』 クスクスと笑う声が気持ち悪く聞こえる。彼女の全てに嫌悪感しか持てない。早く逃げたくて、ただひたすらに体を動かすが手の中から出られない。『暴れないでぇ?何も殺そうとかしてるわけじゃないのよ?……たぶん、ね』 うふふ……なんて笑われたが、似合ってない。顔の造形は綺麗なはずなのに、ここまで醜い顔で笑う事が出来る事に驚かされた。 何をしようというのかが分からず怖い。このままじゃマズイ。でも、どうしていいのかわからない。(助けて!怖いよ、カイルッ!) ギュッと目を瞑り心を込めて心中で必死に叫んだ。力の限り、『フニャァァァァァ!』って声にのせて。『——イ、イレイラ⁈何でライサと一緒なんだ?』 さほど時間が経たぬ間に、全速で駆け寄る音と求めていた声が聞こえ、歓喜に涙が出そうになった。 慌てて声のする方へ顔を向ける。玄関ホールの中に彼は居て、既に私を探してくれた後だったのか、髪が乱れて汗を流していた。『常にイレイラの居場所がわかるようにしておけば良かった……クソッ!』 怒りに任せて、カイルが床を蹴った。大理石の床が削れ、その周囲がヒビ割れる。そんなカイルを見て、ライサと名乗る女が破顔した。『あぁ……素敵。カイル、カイル、カイル——何て素敵なの』 私を掴む手に力が入り、息が詰まる。『イレイラを離せ。そしてすぐに帰れ。お前と話すつもりはないってさっきも言った筈だ。そもそもなんだって此処に入れた?』『んー?それはね、愛の力よ!って言いたいけどぉ、答えは違うわ。この子が油断したからよ。魔力の高いこの子の油断が、貴方の結界に隙を作った。ホントバカな子よね。所詮は猫。私達とは違うのよ。すぐ騙されるし、歳をとるし、死ぬし……ねぇ?』 最後の言葉にザワッとする。 この女は私を殺す気だ、そう思った。『邪魔よねぇ、こんなの。消えちゃえばいいのよ。カイルの傍には私が居るもの。いつでも傍に居るわ。ずっと、ずーっと見ていてあげるの。私は死なないのよ?永遠に愛を与えてあげられるの。アンタとは違って、ね』 クッと声が詰まる感じがする。反論出来ない。神子じゃない私は、どうやったっていつか死ぬのだ。永遠に彼の事を癒してはあげられない。 ライサの言葉の一つ一つが、心に刺さる。『カイルはね、本当は私の事が好きなのよ。だって私が
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-01-28
สำรวจและอ่านนวนิยายดีๆ ได้ฟรี
เข้าถึงนวนิยายดีๆ จำนวนมากได้ฟรีบนแอป GoodNovel ดาวน์โหลดหนังสือที่คุณชอบและอ่านได้ทุกที่ทุกเวลา
อ่านหนังสือฟรีบนแอป
สแกนรหัสเพื่ออ่านบนแอป
DMCA.com Protection Status