author-banner
宮乃
Author

Nobela ni 宮乃

死に戻る君に救いの手を

死に戻る君に救いの手を

地球によく似た青い惑星『ハコブネ』を管理する『管理者』は、念願の後継者を発見する。しかし、剣叶糸は幾度もの死に戻りで既に魔力をほぼ使い果たし、あと一度死ねばもう『後継者』の権利を失う寸前の状態だった。叶糸を救うため直接向かった管理者は、彼の認知の歪みで“マーモット”の姿になってしまう。だが癒しを求めていた叶糸にあっさり受け入れられ、【アルカナ】と名付けられた管理者は、不遇な彼の心を癒やしつつ、自らの願いを果たすために寄り添っていく。
Basahin
Chapter: 【第2話】環境
「も、もふもふだぁ」  余裕で標準よりも重い十キロ以上はありそうなむっちりボディにされてしまった私を抱き上げ、はあはあと息を荒げまでして、瞳がヤバイ雰囲気になっているこの興奮気味の《男》の名前は【|剣叶糸《つるぎかなと》】という。《狼》の《獣人》だ。195センチの高身長とガタイの良い体にグレーの尻尾と頭部の耳がとても似合っている。  支配階級である《貴族》に籍を置きながらも彼がこんなボロ屋で生活している理由が、今尚補佐達から送られてきているデータで、彼のフルネームを知ってやっと私にもわかった。 それは、彼が《平民》出身の《獣人》だからだ。 私の知る限りは例外なく、《《今の世》》では、《獣人》は全て《貴族》である。だが様々な理由から平民階級の中でだって獣人は産まれる。そりゃそうだ、平民と火遊びをする貴族だっているし、彼の様に先祖返りというパターンもあるのだから、どんなに《貴族》の中で《獣人》という優秀な血統を囲い込もうとしたってそもそも無理があるんだ。 だけど、平民の家系に生まれた《獣人》は、まず間違いなく産みの親の元には居られない。 クズ親が《貴族》に売っていたり、良識のある親であっても人身売買を生業にしている者達に子供を攫われて売られたりもしてしまうからだ。特殊な例ではあるが、産院の医師達が『赤子は死産だった』という事にして、大金と引き換えに、そのまま貴族に手渡した事件も過去にはあった。  ——そんなこんなで結局《獣人》は全て《貴族》の元に集められるのだが、『平民出身である』というレッテルは一生其の者を苦しめる。特に、この国の貴族達に与えられた特権的習慣で、『獣人の赤子』には洋風の名前をつける為、彼の様にその名前ですぐに『平民出身だ』とわかってしまうパターンなんかは最悪だ。どんなに優秀であろうがその血統だけで卑下され、馬鹿にされ、素晴らしい功績を上げようが評価されない。だけど『名は体を表す』文化が根強いせいで、名付けの時点で《名前》が魔術によって《魂》に刻まれてしまい改名なんか出来やしないのだ。(……だから彼は、此処に一人で暮らしているのか) 剣家は《男爵》の爵位を持つ。彼を『買える』くらいなので裕福ではあるのだろうが、爵位は低いからあまり権力は無い。そして《貴族》だからって全員が全員《獣人》ではなくて、むしろ《人間》である者の方が多い。今の剣
Huling Na-update: 2025-11-13
Chapter: 【第1話】平家に住む『男』
 私が『管理』を任されているこの惑星は『ハコブネ』の名を冠している。 とある『青い惑星』の古い物語から引用して、《《自称》》している名称だ。美しい海が星の大半を占め、大きな大陸や島々があり、広大な自然の中には八百万の生命がその尊い命を育んでいる。私の立場上共感しか出来ない理由のせいで魔法と科学が混在し、魔物や妖怪も存在し、警察組織以外にも騎士団があったり、困った事に貴族や平民といった身分制度が世界的に根強く残ってしまっている。城と隣接して高層ビルが建っていたりと建築物なんかも新旧ごった煮状態で、スマホを使いながら魔法陣を駆使して属性魔法を操ったりもしているという——……何でもありな世界だ。  そんな《ハコブネ》では現在九割程の《人間》達が文明を築き上げているが、残り一割は獣と人とを融合させた様な種族が占め、それらをヒトは『獣人』と呼ぶ。《《今の》》彼等はその大半が所謂支配者階級の者達で、その優れた身体能力と動物的な本能は支配者然としており、歴史の積み重ねの中で持ち上げられるべくして持ち上げられたといった感じだ。——今回見付かった『後継者』は、その『獣人』に属する者らしいの、だ、が……。(……本当に、此処に居るというのか?) 都内の有名な高級住宅街の一角にある貴族のタウンハウスの敷地内の片隅に、ポツンと建っている平屋建の建物に件の人物が居る、らしい。プレハブ小屋よりかはやや上等だが、貴族の令息が住むには相応しくはない。でも、補佐達から徐々に送られてくる『後継者』に関するデータをホログラム的に出現させて確認したけど、やはり此処で合っているみたいだ。(玄関から入ろうか) チャイムを押してどうこうする気は無いけど、私は強盗や泥棒ではないので玄関からお邪魔します。  古臭いデザインの引き戸を通過して室内に入ると、夜という時間帯のせいもあってか廊下は真っ暗だ。奥でヒトの気配はするものの、同じ敷地内にある本宅の中みたいに複数ではなく、此処はどうやら一人だけのようだ。対象者は間違いなく御貴族様だけど、この広さ的にも何もかも一人でこなしているのかもしれない。(家電の類がかなり優秀だし、それらが揃っていれば、貴族令息様であろうが案外やれるもんなんだろうな) 平家だからか家の造りはよくあるマンションの中みたいな感じだ。設備は中古品の寄せ集めといった所で、どれも形落ち
Huling Na-update: 2025-11-13
Chapter: 【プロローグ】後継者の発見
 『何も無い』と表現するのが一番適切と言える程にただっ広い空間で一人。巨大な《惑星》の立体的なホログラムみたいなモノの前に居る。周囲には『資料』と呼ぶには名ばかりの雑多な本、箇条書きの文章や絵の書かれた束が大量に積み上がっていて、たまにドササッと崩れていく。フィクション、ノンフィクション、歴史書に、世界地図の他にも科学的な専門書まで。多岐にわたる分野のものがないまぜになってしまっているけど、きっちり分別しておくのは難しい。だって自分自身がそもそもその『違い』がよくわかっていないからだ。 私が《手》的なモノをスッとあげ、左右に動かすと惑星のホログラムみたいなモノが連動して動いていく。同時にその周囲に現れる様々な数値化されたデータ群。それを見て、惑星の環境を微調整をしていく。何だかまるで惑星開拓型のシュミレーションゲームみたいだ。 ……だけどコレは、ゲームではない。 現実に、この星の上では無数の命が生き、そしてポロポロ死んでいっている。永い永い歳月、それらをひたすら前にしていると、どうしたって心が押し潰されて疲弊していく。そのせいで元の姿は随分前に崩れ、私はもう『人間』と呼べる様な形状をしていない。霞のような、光のような、霧のような。とにかくまぁそんな存在になってしまった。こんな姿では眠れず、ずっと《《一つの事だけ》》を願いながら黙々と、もはや『作業』と化した『惑星の管理』を続けている。「——『管理者』様!『管理者』様ぁぁぁぁぁ!大っ変っです!」 珍しく、私の補佐を勤めてくれているモノ達が大騒ぎしている。最初の頃はぼてっとした鳥みたいな形状だったはずの補佐達も、今では『認知』の歪みのせいか蛍程度の光になっていて、会話する度に毎度毎度申し訳ない気持ちに。でも『仕事』という名のお片付けは不思議と出来るままなので、私にだけ、アレらが『そう見えるだけ』なのかもしれない。「どうしたって言うの?そんなに騒ぐだなんて」 呆れながら返すと、「見つかったんです!——『後継者』様が!」と補佐達がワーワーと騒ぐ。 ……『後継者』というワードを聞いても頭が処理出来ない。長年ずっと待ち焦がれてきた反動のせいでしばらく思考停止していたが、やっと理解出来た瞬間、私は「やっと、後継者が!」と叫んでしまった。《私》がまだ人の姿をしていたのならガッツポーズをとっていた所だ。「……ただ、
Huling Na-update: 2025-11-13
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status