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第2話

Penulis: 無名
真奈美はひとりで病院へ行き、傷を縫ってもらった。

妊娠中だと伝えると、救急の医師は麻酔の使用をやめた。

冷たい針が皮膚と肉の間を行き来するたび、チクッとした痛みが波のように押し寄せる。

真奈美は歯を食いしばり、体を震わせながらなんとか耐えていた。しかし、我慢できずにとうとう涙がこぼれ落ちる。

昔の翔太なら、自分の手に新しい傷を見つけるたびに、すごく心配してくれたのに。

名医が出す高価な塗り薬を、彼は躊躇うことなく戸棚いっぱいに買ってきてくれ、自分のために包帯の巻き方まで覚えてくれた。

なのに今は、自分がこんな怪我をしていても見向きもしてくれない。しかも、別の女を抱きしめて優しく声をかけている。

見るに見かねたのか、医師が声をかけた。「北条さん、傷がかなり深いので、帰ってからもちゃんと処理してくださいね。ちゃんと治さないと、お仕事に響きますよ」

しかし真奈美は、上の空で頷くだけだった。

真奈美が家に帰ると、使用人の翠が二階から一階の寝室へ荷物を運んでいるところだった。

よく見ると、それはなんと自分の服や化粧品だった。

翔太はソファで横になっている恵に優しく話しかけながら、彼女のふくらはぎをマッサージしている。

「どう?足が、まだつっている?」

恵は返事をする前に、真奈美が来たのに気づいて、気まずそうに体を起こした。

「真奈美さん」

真奈美は失笑した。「私たち、名前で呼び合うほど、そんなに仲が良かったっけ?」

その棘のある言葉に、恵はすぐに目を赤くする。そして、お腹を抱えながら「うっ……」と呻き始めた。

「翔太さん、お腹がちょっと痛い……」

翔太は恵のお腹をさすってやりながら、真奈美にきつく当たる。

「彼女は妊娠しているんだぞ。なんでそんなキツい言い方をするんだよ!」

真奈美は鼻で笑った。

「まさか、私に彼女をお姫様みたいに大事にしろとでも?」

そう言いながら、真奈美は包帯だらけの右手を翔太に突き出す。

「私の彼氏はこの女に盗られて、私は彼女の子どもの面倒を見なきゃいけない。おまけにキャリアまでめちゃくちゃにされかけたのよ。これ以上、私にどうしろって言うの?」

それを聞いた恵は、悲痛な表情で翔太を見上げた。

「翔太さん。今日のことはわざとじゃないの。それに、あの夜は間違いだったって言ったでしょ?私がまだ何も分かっていなかったから……一時の感情であんなことを。それで、今ではみんなをこんなに苦しめることになっちゃった……」

恵は顔を覆う。「やっぱり私、ここを出ていく。私さえいなくなれば、翔太さんと真奈美さんはきっと元に戻れるはずだから。

お腹の子のことは心配しないで。産んだらあなたの元へ連れてくるし、二度とあなたたちの前にも現れない。私も、この子を産んだことなんて忘れるから」

しかし、翔太は恵を引き留めた。

「お前は俺の女だ。お腹には俺の子だっている。行かせられるわけないだろ!」

悲劇の恋人さながらに抱き合う二人のそばで、真奈美は自分が邪魔者になったように感じた。

彼女は何も考えずに、一階の寝室へ入って横になった。

夜中、真奈美は誰かに体を揺さぶられて、はっと目を覚ます。

夢うつつのまま目を開けると、そこに疲れ切った表情の翔太がいた。

「真奈美。恵がお腹すいたってうるさくてさ。何か夜食を作ってやってくれないか?」

そこで真奈美はようやく悟った。翔太がなぜ自分を二階から一階の寝室に移したのかを。

この寝室自体は何てことない。ただ、家の中で一番キッチンに近い部屋だった。

真奈美は、こみ上げる怒りを必死に抑えながら言った。「翔太、ふざけるのも大概にして。あなたも、私たちの寝室も、もうあの女にあげた。その上、今度は私に彼女の召使いになれって言うの?」

翔太は困ったように眉間を揉む。

「真奈美、彼女のお腹にいるのは俺の子どもだ。そして、俺たち二人の将来の子どもでもあるんだから」

「私の子じゃない!」真奈美は泣きながら叫んだ。

翔太は目を伏せた。その表情からはためらいが消え、冷たい表情だけになった。

「大野さんの料理は、お前の作るものほど美味しくないんだ。だから、俺のためだと思ってさ、な?」

真奈美は答えずに、くるりと背を向けてベッドに潜り込んだ。それが彼女の答えだった。

これで翔太も諦めて部屋を出ていくだろう、と真奈美は思った。

ところが突然、掛け布団が乱暴にはぎ取られた。彼女は翔太に手首を強く掴まれ、まるで小動物のようにベッドから引きずり降ろされた。

「真奈美、喧嘩したいわけじゃない。料理が終わったら、またちゃんと寝かせてやるから」

キッチンカウンターに押さえつけられ、真奈美はとうとう声を上げて泣き出してしまった。

「翔太、どうしてこんなひどいことができるの?」

翔太とはもう8年の付き合いだった。彼の家族に反対された時も、仕事がうまくいかない時も、二人で手を取り合って乗り越えてきたのに。

それなのに、別の女が自分より先に彼の子どもを妊娠したというだけで、自分はあっさりと捨てられそうになっている。

しかし、翔太は真奈美が泣いているのを気にも留めなかった。

彼は包丁を手に取ると、それを真奈美の前に突き出す。

「真奈美、いいから料理を作るんだ」

翔太は真奈美の手をきつく掴み、無理やり包丁を握らせた。

彼に強く握られ、包帯を巻いた右手から、突き刺すような激痛が走る。

真奈美は声を詰まらせた。「翔太、お願い。離して。手が、怪我してるの」

翔太は一瞬はっとした顔になり、その目にわずかな同情がよぎった。手に込めていた力も少しだけ弱まる。

そして、子どもに言い聞かせるような口調に変わった。「真奈美、さあ、料理を作ろう」

和食から洋食まで何十種類も料理を作り、デザートもたくさん用意した。それでも恵からは、褒め言葉の一つもない。

しかも、恵はどの料理にも一口しか手をつけなかった。中には匂いを嗅いだだけで、箸を置くものもあった。

そんな嫌がらせが真夜中から次の日の昼まで続いた。

キッチンから解放され、疲れきった体でらせん階段のそばを通りかかった時、二階から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

「真奈美さんの料理、とってもおいしいのね。さっき犬にあげてみたら、すごく喜んで食べていたから!」

その声に続いて、翔太の甘やかすような笑い声が聞こえた。

「お前がご機嫌ならそれでいいよ。食べたくないなら無理するな。また食べたくなったら、いつでも真奈美に作らせるからさ」

大きな窓からは暖かい日差しが差し込み、壁に光の模様を描いている。

でも真奈美には、その暖かさも、手の痛みさえも、もう感じられなかった。

ふと、カバンに入っているエコー写真のことを思い出すと、不思議な安堵感が胸に広がった。翔太はまだこの子の存在に気づいていない。今なら、しがらみなくここから出ていける。
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