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第43章:パーティの匂いと忍び寄る影*香澄

last update آخر تحديث: 2025-11-20 23:59:30
【2015年12月25日(金) 夕方】

マンションに戻ると、部屋はすっかりクリスマスの匂いに包まれていた。

奥野が張り切って焼いたローストビーフの香ばしい煙と、温め直したチキンソテーのバター香。生クリームたっぷりのケーキと、シャンパンの泡の音。蓮と菖蒲は小さなサンタ帽をかぶせられ、赤いクリスマススタイ(よだれかけ)を着て「うー!」「きゃー!」と大はしゃぎだ。

「ただいまー! 遅くなってごめん!」

玄関で靴を脱ぐなり、遥花が飛びついてきた。いつもより強く抱きしめ返し、耳元で囁く。

「大丈夫? 怖かったよね」

「……うん。でも香澄が帰ってきてくれたから、もう平気」

遥花の震えが少しずつ収まっていくのを感じて、胸を撫で下ろす。奥野はキッチンで「先輩、おかえりっす!」と手を振ってくれたけど、まだ事情は話せていない。きっと遥花からも、何も説明できなかったに違いない。

朝イチでT探偵事務所に乗り込んで得られた衝撃の事実……探偵に遥花の情報を横流しした神崎一二三は、大道寺悠真の専属ドライバーだった。しかも今日、遥花がマンション前で目撃したという黒のレクサスは、神崎が乗り回す車種とも一致していたそう。

雇用主の悠真本人にも確認したが、神崎は休みを取っていて連絡が取れない。悠真のすぐそばにいる人間が私たちを監視していたのは事実。そして神崎が脅迫状を送ってきた本人である可能性が高い。

一応、遥花の元夫である悠真自身が脅迫犯ではないかという疑いもかけたが、電話で会話した限りではシロと見て良さそうだ。むしろ彼は子供の養育費などの工面まで考えていたが、そこは遥花の意向で断りを入れたところだ。別れた元夫になんて、助は乞わない。私も遥花も、彼とは今後も無関係でいくつもりだ。

「それで、香澄……どうするの?」

遥花が小声で聞いてくる。私はサンタ帽をかぶった蓮の頬をつつきながら、できるだけ明るい声で答えた。

「今夜はまずパーティ楽しもう。奥野も来てくれてるし、犯人が本当に今夜動くなら、むしろチャンス。人数が多い方が安全でしょ?」

「……でも、無関係な奥野さんまで巻きこんじゃって……」

「それは私も申し訳なく思ってたけど……一先ず、できる限りの準備はしてあるから」

私はバッグから、帰る途中でホームセンターで買い揃えたものをそっと取り出す。黒いビニールテープ、結束バンド、玄関ドア用の補助ロック(二重
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