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第7話

Author: 紗々
葵の言葉に、私は思わず声を上げて笑った。

その夜、私たちは夜遅くまで語り合った。

大学時代の思い出から今の暮らし、葵のどうしようもなかった元彼のこと。そして、かつては誰より信頼できると思っていた私の夫のこと。

葵に「後悔してる?」と聞かれ、私は少し考えてから答えた。「好きになったことは後悔してない。でも、一度裏切られたときに許したことは後悔してる」

葵はしばらく黙っていた。「そこまで分かってるなら、大丈夫だね」

「分かってはいたよ。前からずっと……ただ、手放せなかっただけ」

深夜3時、葵は私の肩にもたれたまま眠っていた。タブレットには、さっきの建築士のプロフィールがまだ表示されている。

私は彼女に毛布をかけ直し、窓の外に広がる見知らぬ街の夜景を眺めた。

この5年間で初めて、息が自由に吸えた気がした。

……

朔弥がそのメッセージを受け取ったとき、彼は琴乃のマンションにいた。

スマホが震え、何気なく画面を開く。だが、表示されたファイルに目を通すうち眉間の皺が深くなっていった。

離婚協議書。

財産分与から債務の扱いまで、一つひとつ細かく記載されている。

それどころ
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    歪んだ文字を見るかぎり、手が震えていたのだろう。しかし、私はそれ以上見ず、指輪もメモもまとめてゴミ箱に捨てた。琴乃のほうも、その後はうまくいかなかったらしい。書店は朔弥からの資金援助が止まり、ほどなくして経営が立ち行かなくなった。何度か人を介して朔弥に会おうとしたものの、そのたび会社の受付で断られたという。その後は別の男と付き合い始めたらしいが、やがて噂も聞かなくなった。その話を葵から聞いたとき、彼女は少し楽しそうだった。自業自得だよ。ああいう人は一回痛い目を見たほうがいいんだから」「もう私には関係ないけどね」葵は私の顔をじっと見た。そこで、私が強がっているわけではなく、本当にどうでもよくなったのだと分かったらしい。にっと笑って、私の肩を抱いてくる。「やるじゃん、梓。もう無敵だね!」私もつられて笑った。無敵になったんじゃない。ただ、守る価値もない相手のために、わざわざ傷つかなくてよくなっただけ。離婚から半年後、私は財産分与で受け取ったお金を使って、F市に小さな書店を開いた。大きくはない2階建てで、1階は本を売り、2階は静かな読書スペースにして、窓辺にはトルコキキョウを並べた。どうしてこの花なのかと聞かれたことがあるのだが、その時の私は、「きれいだし、長く咲いてくれるから。それに、あんまり手もかからないし」と答えた。オープン当日、葵はたくさんの友達を連れてお祝いに来てくれた。店内の壁に用意していたメッセージボードを見つけると、葵が声を上げる。「はいはい、みんな一言ずつ書いて!店長の商売繁盛を祈ってね!」みんな笑いながら、思い思いに書き込んでいった。【目指せ大富豪】や【男より本のほうが裏切らない】と書く人がいる中、葵は【梓は美しくて、一人でも最強!】と大きく書いていた。たくさんのメッセージで埋まった壁を見ているうちに、ふと5年前のことを思い出した。あの頃も、私は自分の書店を持ちたかった。内装も、棚の配置も、どんな本を置くかも、頭の中で何度も何度も思い描いていた。朔弥にその話をしたとき、彼は私の髪を撫でながら言った。「いいな。いつか君のために俺が店を開いてあげるよ」その店は結局、別の女のものになった。でも、もうどうでもいい。私は自分で始めたのだから。朔弥にもらった店じゃ

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