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第0215話

Auteur: 十六子
突然襲いかかってきた辰哉を見て、瑠璃の脳裏に過去の暴力の記憶がよぎった。

一瞬の躊躇の後、反撃しようとしたその瞬間――背後から突風のような動きが駆け抜けた。

隼人の温かい手が彼女の肩をしっかりと抱き寄せ、素早く横へ引き寄せた。

その瞬間、彼女は馴染みのあるようで、しかしどこか遠い温もりに包まれた。

状況を把握する暇もなく、辰哉は空振りし、そのまま木に激突。続けざまに隼人の手によって右腕をねじ上げられた。

「ぐあっ!」辰哉の悲鳴が響く。しかし隼人は手を緩めることなく、彼の膝へ強烈な蹴りを叩き込み、その場に跪かせた後、さらに一蹴りを加えた。

瑠璃は、隼人がなおも容赦なく制裁を加えるのかと思ったが、意外にも彼は突然、彼女を強く抱きしめた。

「怖がるな、俺がいる。もう二度と誰にもお前を傷つけさせない」

隼人の低く柔らかい声が、夜の闇に溶けるように響く。その声音には、今までにない優しさと、どこか切実な想いが滲んでいた。

瑠璃の瞳は驚きに揺れた。彼の腕の力強さを感じながらも、どこか違和感を覚える。

細かな雨粒が静かに降り注ぎ、晩夏の風が冷たく吹き抜ける。

しかし、彼の胸の鼓動が伝わるほどの距離にある温もりだけは、異様なほど熱かった。

彼女の心臓が跳ねる。それが自分のものなのか、彼のものなのか、判別がつかないほどに。

危うく、この感覚に呑まれそうになったその瞬間――

傷口に残る痛みが、彼女の意識をはっきりと呼び戻した。「目黒さん、これ以上続けると……私は本当に怒るわよ」

静かに、しかしはっきりと拒絶を告げた。

隼人の瞳が一瞬揺らぐ。

まるで心地よい夢から、現実へと引き戻されたかのように。

「……すまない」

彼はそっと囁くと、ゆっくりと腕を解いた。

その直後、今まさに逃げ出そうとしていた辰哉の襟首を掴み、無造作に木の幹へと押しつける。

その目には、冷たく鋭利な刃物のような光が宿っていた。

「よく聞け。俺は一度しか聞かない」隼人は低く冷徹な声で言い放つ。「三年前、俺の息子を誘拐したのは、誰の指示だった?」

辰哉は腫れ上がった口元を震わせながら、おそるおそる指を動かし、瑠璃を指し示した。

「……あ、あいつだ!瑠璃だ!俺に連絡してきて、誘拐を指示したのはあいつなんだ!」

まるで昨夜の宴会での発言を完全に覆すように。

その変わり身の早さは
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