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第8話

Author: 猫丸いぬ子
雫の笑みが、その場で凍りついた。

「……何?」

「お前が真夏の寝室から盗み出した、あの結婚指輪たちだ」

光貴は言った。

「返せ」

病室に、重苦しい沈黙が下りる。

雫の顔から血の気がゆっくりと引き、唇まで震え始めた。

彼女は勢いよく身を起こした。包帯がベッドの柵に擦れ、赤みがさらに濃くなる。

「光貴、どういうつもり!?私、手首を切ったのよ!

死にかけたのよ!入ってきていきなり、あの女の指輪のことを聞くわけ!?」

「返せ」

彼はもう一度繰り返した。

雫はまるで頬を打たれたかのように、その場で固まった。

しばらくして、胸が張り裂けんばかりに泣き出し、シーツを握りしめる指の関節が白くなる。

「あんた、私のこと、少しでも愛したことがあったの?

私はずっと、あの女の代用品にすぎなかったの……!?」

光貴は、泣きじゃくって歪んだ彼女の顔を見つめた。

ふと、何も感じていない自分に気づく。

真夏は記憶を失ってから、性格がどんどん穏やかになっていった。

牙を内に秘めていても、彼に向けて剥き出しにすることは一度もなかった。

考えてみれば、人間とは勝手なもので、彼は次第
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    扉の外にいたのは、光貴ではなかった。背の高い男が、逆光を背にして立っている。顔の輪郭ははっきり見えなかったが、声よりも先に、冷たい気配が流れ込んできた。彼は私を見下ろすと、手を伸ばして頬にかかった髪をそっと撫でつける。5年ぶりの再会。彼の第一声は、信じられないほど掠れていた。「……痩せたな」手には1枚の写真が握られていた。さっきのライブ配信で、ベランダから見えた街並み。それだけを手がかりに、彼は私を見つけ出したのだ。私は彼の手首を掴み、ようやく笑った。「帰りましょう」朔弥の手のひらはひどく熱く、私の手をすっぽりと包み込んだ。車が角を曲がった瞬間、バックミラーに、必死に駆けてくる光貴の姿が映った。扉を叩く音がガラスを震わせるほど響く。どれくらい叩き続けただろう。ようやく扉が開くと、中にいたのは顔を腫らし、怯えきった部下だけだった。「社長……私たち、奥様を引き止められませんでした」車はまた角を曲がり、マンションの前の騒ぎを完全に置き去りにする。私はふっと口の端を上げた。光貴。今度こそ、本当に、二度と会うことはないだろう。車内が静かになり、ようやく隣の男をじっくりと見る余裕ができた。彼も痩せていた。頬の輪郭は以前より硬くなっている。全体の雰囲気は沈み込み、瞳の奥には偏執的とも言える暗い執着が渦巻いていた。少し黙ってから、私は口を開く。「この5年、森上光貴と結婚してたの」「さっき調べて、もう知ってる」彼の声は平坦で、喜怒を読み取ることはできない。「体の関係もあったわよ。もし、気にするなら……」車が急に止まった。男が身を乗り出し、荒々しいキスで、続く言葉を塞がれた。その口づけには、5年分の想いの重さが詰め込まれている。私を粉々に砕き、自分の中に押し込めようとするかのように。彼は私の腰を強く抱きしめ、指が食い込むほどの強さだった。痛かった。けれど、逃げなかった。彼は耳元で、くすりと笑い声を漏らした。息が耳たぶを熱く炙る。「真夏、俺をなんだと思ってる?お前が汚れたからって、嫌になるような男だとでも?」肩から首筋にかけて、温かいものが伝ってくる。顔を横に向けると、彼の瞳の奥がきらきらと光っているのが見えた。「どんな姿でも、お前は神が俺に与え

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