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Author: 酔夫人
last update Last Updated: 2026-01-13 11:01:07

―― いやあああああああっ!!

あの日の恐怖に染まった桔梗の悲鳴が蘇る。

「桔梗っ!」

夢が壊れる。

幸せな夢。

――蓮司さん。

記憶を失っていても変わらない俺の好きな声。

女性にしては少し低めの、落ち着いた響き。

――好きです。

俺の腕の中で恥ずかしそうに、まるで内緒ばなしのように小さく紡いでくれるその言葉が嬉しかった。

それが――。

―― いやあああああああっ!!

「桔梗っ! 待って……」

「え?」

桔梗の両肩を掴んでこの場に押し留めようとしたが、桔梗の戸惑った声に思わず力が抜ける。

「蓮司さん?」

……いつも通りの桔梗だ。

落ち着い響きで俺の名を呼んでいる。

肩に触れているた俺の手を特に気にもせず、ただ不思議そうにしている。

これは……。

「こいつのこと……」

「え? 英武司さんですよね?」

「ああ」

……どうして?

「ご親族の皆様の話によく出ていらっしゃいますし、何より英家のご当主に御声がよく似ていらっしゃるので」

英家のご当主、春樹小父さんと武司は顔は全く似ていないが声はよく似ている。

「大丈夫か?」

「あの、大丈夫とは、何がです?」

心の底から不思議がるそんな桔梗に……体から力が抜けた。

可能ならこの場にへたり込んでしまいたい。

振り返ると武司も、ガキの頃に見た泣くのを堪えるような顔をしている。

もしかして、俺もか?

それは……格好悪い。

「桔梗、改めて紹介するよ。英武司だ。武美の弟で、俺の補佐をしてくれている」

武司が俺の隣に立つ。<

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  • 知らないまま、愛してた   66

    ―― いやあああああああっ!!あの日の恐怖に染まった桔梗の悲鳴が蘇る。「桔梗っ!」夢が壊れる。幸せな夢。――蓮司さん。記憶を失っていても変わらない俺の好きな声。女性にしては少し低めの、落ち着いた響き。――好きです。俺の腕の中で恥ずかしそうに、まるで内緒ばなしのように小さく紡いでくれるその言葉が嬉しかった。それが――。―― いやあああああああっ!! 「桔梗っ! 待って……」「え?」桔梗の両肩を掴んでこの場に押し留めようとしたが、桔梗の戸惑った声に思わず力が抜ける。 「蓮司さん?」……いつも通りの桔梗だ。落ち着い響きで俺の名を呼んでいる。肩に触れているた俺の手を特に気にもせず、ただ不思議そうにしている。これは……。「こいつのこと……」「え? 英武司さんですよね?」「ああ」……どうして?「ご親族の皆様の話によく出ていらっしゃいますし、何より英家のご当主に御声がよく似ていらっしゃるので」英家のご当主、春樹小父さんと武司は顔は全く似ていないが声はよく似ている。「大丈夫か?」「あの、大丈夫とは、何がです?」心の底から不思議がるそんな桔梗に……体から力が抜けた。可能ならこの場にへたり込んでしまいたい。振り返ると武司も、ガキの頃に見た泣くのを堪えるような顔をしている。もしかして、俺もか?それは……格好悪い。 「桔梗、改めて紹介するよ。英武司だ。武美の弟で、俺の補佐をしてくれている」武司が俺の隣に立つ。

  • 知らないまま、愛してた   65

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