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第172話

Author: 雲間探
ただし、晴見があの立場にいる以上、いち早く情報を得られる立場にあり、まず身内を優遇するのも当然だ。

上流階級の世界なんて、どこもそんなもんだ。

礼二ももう慣れっこだった。

彼は歯を食いしばりながら言った。「うちの会社も、確かに誰かと組まなきゃプロジェクトを大きくできない。でも最近は、あの徳岡淳一の顔を見るだけでムカつくんだよな……」

玲奈にはわかっていた。彼が淳一を疎ましく思う理由は、優里への感情だ。

でも玲奈自身は、ほんとうにどうでもよかった。

彼女は静かに言った。「プロジェクトが順調に進んで、最大限の利益を取れるかどうかが一番大事よ。他は二の次」

彼女は以前、一度だけ晴見に会ったことがある。

多少の私心はあるかもしれないが、教授たちの対応を見る限り、晴見は信頼に足る人物だと判断できる。

礼二は応じた。「わかってる」

あくまで、ちょっと言ってみただけだ。

彼は顎を上げてふんっと鼻を鳴らし、言った。「ま、正式な募集開始まではまだ間があるし、しばらくはアイツを干しておくわ」

玲奈も笑った。「うん」

彼が楽しければそれでいい。

淳一からの電話の後、玲奈と礼二は再び本題に戻った。

だが、三十
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Comments (3)
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良香
礼二、本当にありがとう。 玲奈さんを知り、支え、決して偏らず真の経営者たる姿、上司の姿を体現してくれてる。 良きお兄ちゃんであり、理解者。 貴方が居てくれた事が玲奈さんの最上の幸運です
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天の川
主導権は自分達にある  玲奈の強さが美しい。
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yoshi horarara
玲奈は大人です 私情挟まずに冷静クズ無視すればいいのに
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