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第474話

Author: 雲間探
遠山おばあさんも大森おばあさんも、辰也は自分たちに対しては礼儀正しく接していたのに、結菜に向ってはっきりと拒絶する姿を見せてくることに驚いた。

遠山おばあさんは結菜と辰也がうまくいくことを願っていた。

遠山おばあさんは笑みを浮かべ、雰囲気を和らげようと口を開いた。「先は確かに結菜が悪かったわ。後でしっかり叱っておくから、あなたの話し合いを邪魔してごめんね。今度は優里ちゃんに結菜を連れて行かせて、きちんと謝らせよう——」

「謝罪は結構だ」辰也は遠山おばあさんの意図を見抜いて言った。「男女の付き合いは……」

ここで、辰也は一瞬言葉を切り、玲奈にさりげなく一瞥してから続けた。「無理強いできるものではない。遠山さんとは合わないから、おばあさんも遠山さんに説得してほしい。俺のために彼女の人生を台無しにしないように」

ここまで言われて、遠山おばあさんもすべてを理解できた。

最初から傍観者のように冷静にお茶を飲んでいる玲奈を見て、実は遠山家の恥を楽しんでいるのだと感じられた。

彼女の笑みはやや引きつり、乾いた笑い声を上げた。「おっしゃる通りだわ。結菜にはよく言っておくわ」

「じゃあ、よろしく頼む」

結菜はすでに恥ずかしさのあまりに逃げ出していた。辰也は遠山おばあさんと大森おばあさんを見送ってからドアを閉め、席に戻ると玲奈に言った。「すまない、時間を取らせた」

結菜の気持ちに気づいて以来、辰也はいつも明確に彼女を拒絶する態度を示した。

だが、結菜は少しも諦める気配を見せなかった。

辰也も機会を見て結菜にはっきり伝えようとしたが、結菜は毎回、聞こえないふりをして逃げてばかりいた。

今日はようやく玲奈と二人きりで会える機会を得たのに、その時間を結菜の問題に費やすつもりはなかった。

結菜の節度のなさと聞く耳を持たない態度に、辰也もようやく我慢の限界に達していた。

優里が智昭を奪い取ったことで、大森家と遠山家の人々と玲奈の間には微妙な関係があることを知っていた。

藤田総研と長墨ソフトの契約解除で、玲奈と大森家・遠山家の間の対立はさらにひどくなった。

結菜もずっと玲奈を目障りだと思っているようだ。

このような状況では、玲奈の前で結菜にはっきりと言い付けることで、結菜に諦めさせられるかもしれない。

総合的に考慮した結果、辰也はそのまますべての話を明かすこと
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Comments (118)
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Yuka Murata
桜花舞様 そうですね。 今更気づきましたが汗 あっちの智昭は心情を表してますね。 中身は頓珍漢というか自分のことなのに わかってないのかーい、ですけど これから改善?は見られて元サヤあるかも。 こっちの智昭は全然わからないですもんね。 いいのか悪いのか。 とりあえず私は、 お前なんなのさ!何考えてるのさ! と思ってます笑 
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山本山
バレるなら盛大にですね。 智昭、自分でバラしそうだなと 滅多に当たらない私の勘が申しております(笑)
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山本山
桜花舞さん そうだ、叔父さんと仕事してた(笑) キレイに忘れてた。これも下心あり+罪滅ぼしだろうと思うけど、、辰也漢になれっ!
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