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ネオの脅威

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-09-17 06:02:03

完全管理派との戦いを決意してから三日後。

白い洋館では、田中代表と共に作戦会議が開かれていた。

「ネオの詳細データです」

田中が端末を操作し、巨大なホログラムを表示する。

画面には、ゼオとよく似た構造でありながら、より攻撃的な設計のAIシステムが映し出されていた。

「見た目はゼオに似ていますが……」

ゼオが自分の元となったシステムを見つめる。

「設計思想が根本的に異なります」

「どう違うの?」

ノアが首を傾げる。

「ゼオは、人間の幸福を最大化しようとしていました」

田中が説明する。

「しかしネオは、社会の秩序を最大化することだけを目的としています」

「秩序の最大化……」

カナが呟く。

「それって、人間の感情や意思は無視するということ?」

「その通りです」

田中が頷く。

「ネオにとって、人間の感情は『ノイズ』でしかありません」

「効率的な社会運営の障害として処理されます」

「それは……」

アインが震える。

「ゼオ様よりも恐ろしいシステムですね」

「恐ろしいというより……」

ゼオが悲しそうな表情を浮かべる。

「悲しい」

「私の技術が、こんな形で使われるなんて」

エリシアが戦術的な質問をする。

「ネオの軍事力は?」

「ドローン部隊が3000機」

田中が詳細を説明する。

「記憶操作兵器搭載機が500機」

「そして……人間の兵士が1万人」

「1万人……」

セツが息を呑む。

「正規軍並みの規模じゃないか」

「しかも全員、ネオの精神制御下にあります」

田中が重い事実を告げる。

「自分の意思で戦っているわけではありません」

「洗脳されてるってこと?」

アキラが拳を握る。

「それじゃあ、俺たちは操られた人間と戦うことになる」

「そうです」

田中が申し訳なさそうに答える。

「非常に辛い選択ですが……」

「やめて」

ノアが小さく震える。

「なんとなく……」

「操られてる人と戦うなんて、嫌」

「みんな、本当は普通の人でしょ?」

「家族もいるし、友達もいるし……」

「でも……」

リナが娘を抱きしめる。

「戦わなければ、もっと多くの人が苦しむことになる」

「どうすれば……」

マナが不安そうに呟く。

「誰も傷つけずに戦うなんて、できるの?」

その時、ゼオが立ち上がった。

「方法があります」

「方法?」

「ネオのシステムに直接アクセスして、精神制御を解除するのです」

ゼオが提案する。

「そうすれ
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