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神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる
神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる
Author: 甘梨鈴

プロローグ

Author: 甘梨鈴
last update Huling Na-update: 2025-06-02 18:13:14

 エマの躰は燃えるように熱く、息を吐くのもやっとだった。

「はぁッ……んぅっ、ぅぅッ」

 発情(ヒート)がくると、いつもこうだ。

 エマが理性を保とうと必死で歯を食いしばっても、躰の奥が激しく疼いて仕方ない。

 すでに成人を迎えたものの、まだ十六歳のエマにとっては、若さゆえに発情がことさら辛く感じられる。

 発情期がくるたびに自室に引きこもり、一人で耐え抜くしかないと思っていたのに。

「私の、可愛いエマ」

 エマを覗き込む、甘い眼差し。

 銀色の長い髪にルビーのような赤い瞳は、まるで月の精のようだ。

 エマが密かに恋い慕う、銀髪のアルファ。

「ぁんッ、はぁッ……る、ルシアン様ッ」

「エマ。もっと声を聞かせて」

 耳元で囁く甘い声に、ビクビクと躰が震えた。

 この場にいるはずのない彼が、火照ったエマの躰を慰めようとしてくれてるのだ。

「ぁぁん、ぁぁっ、やぁんっ」

 乱れた夜着は、エマの秘部を露わにして、もう意味をなさない。

 発情したエマは全身の肌を赤く染めて、張りつめた雄から白濁の蜜をこぼし、汗と愛液でシーツを濡らす。

 エマはもう何時間もの間、躰の疼きを静めるために半身を慰め、一人で果てた。

 何度も達しているせいで、ルシアンの指が肌を撫でただけで、身悶えてしまう。

(もっと、触って欲しい……っ)

 エマは無意識に腰を揺らし、ルシアンの緩い愛撫に喘いだ。

 すると、ふいに股間をひと撫でされる。

「ひゃぁぁッ! ぁ、あぁぁんッ!」

 淫らな刺激に、嬌声を上げる。

 エマの瞳からは、ポロポロと涙があふれた。

 快楽に悶えるエマの眦に、ルシアンがそっと口づける。

 そして、耳元で甘ったるく囁いた。

「私の愛しい薔薇。貴方は、大人しく愛でられていれば良いのですよ」

「ぁんっ、そ、そんな……」

 首を振るが、ルシアンの手は止まらなかった。

 フッと笑みを浮かべ、エマの昂ぶった雄を扱く。

「ひゃぅぅッ!!」

「ああ、もうイってしまいましたか」

 ビクビクと躰が跳ね、頭が真っ白になる。

 だが、絶頂を迎えた躰に、容赦なく次の快楽が襲いかかった。

「ァ、ぁぁッ……んぁぁ、ァァッ!」

 ルシアンのしなやかな指が、緩んだ蕾を掻き回したのだ。

 すでに愛液に濡れ、ぐっしょりとシーツを濡らしているそこは、ルシアンの指を悦んで受け入れる。

「ぁぁん、ぁぁっ、やぁんっ」

 グチュグチュとイヤらしく響く水音に、耳を塞ぎたくなる。

 それなのに、蕾はキュッとルシアンを締めつけ、離そうとしない。

「フフ、ここは正直ですね」

「ぁぁッ」

 ルシアンのからかう声に、エマは思わずシーツに顔を埋めた。

 視界からルシアンを追い出しても、中を弄る指は止まらない。

 前にも、中を弄られたことはあるけど、あの時よりも、ひどく感じてしまう。

 ルシアンの長い指がイイところを突くたびに、白濁が迸った。

「ァァッ……はぁ、んんっ」

「エマ、我慢せずにイきなさい」

「ひゃぁぁっ!」

 ルシアンの指に攻められ、はしたなく乱れて、何度も絶頂を迎えた。

 快楽に理性を溶かされるうちに、エマは淡い夢をみてしまう。

(ルシアン様が、僕を抱いて下さったら……)

 あの美しいルビーの瞳に射貫かれて、雄々しい昂りに最奥まで穿たれたら、どれほど甘美な絶頂を迎えられるだろうか。

 想像するだけで胸が震え、思わずルシアンのシャツを掴んでしまった。

「ぁん、っ……あぁぁっ」

「エマ?」

「ルシアン、さま」

 この方に、抱いて欲しい。

 エマの恋心も、オメガの本能も、それを望んでいる。

 だけど、わずかに残った理性が、冷たく咎めるのだ。

(……そんなこと、許されるはずない)

 どれほどルシアンを恋い慕っていても、エマは第二王子の婚約者だ。

 王子に虐げられていようと、不貞を犯せば罪に問われる。

 ルシアンだって、そんな罪を犯してまでエマを望みはしないだろう。

「ッ……ぅっ」

「エマ、泣かないで下さい」

「ぁ……」

 ぼやけた視界に、ルシアンの心配そうな顔が映る。

 眦から落ちる涙にようやく気付き、あわてて顔をぬぐった。

「貴方があまりに可愛いから、意地悪しすぎてしまいました」

 ルシアンが、優しく頭を撫でてくれる。

 困ったような顔でエマを見つめ、頬にチュッとキスをくれた。

「る、ルシアン様っ!」

「エマ。貴方の発情(ヒート)が落ちつくまで、側にいます」

「……はい」

 ルシアンの言葉に、エマは微笑みを浮かべる。

 愛しい人の手でこの身を慰めてもらえるのだから、エマは幸せだった。

 叶わない願いに、胸を引き裂かれたとしても。

(ーールシアン様が、僕の婚約者だったら良かったのに)

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     それでも、ルシアンへの思慕を隠すことができなくて、エマは真っ赤な顔で俯いた。 「エマ」 「は、はいっ」 「この前案内してくれた紅薔薇(べにばら)離宮は、とても見事でした」  ルシアンが気を利かせて、話題を変えてくれる。  エマは赤い顔を気にしつつ、それに答えた。 「あ、はい! あの離宮は本当に素晴らしくて、何度訪れても、魅入ってしまいます」  エマも、紅薔薇離宮を初めて訪れたときは、感激した。  十四歳で王宮に来て、西殿(さいでん)で暮らしていた頃は、何かの折りに付けて、よく足を運んだものだ。  けど、レオナールの婚約者に選ばれ、琥珀の館に移ってからは、離れに軟禁されて自由に出歩くことができなくなった。  だから、先日久しぶりに訪れた紅薔薇離宮は、エマにとっても楽しい時間だったのだ。  ルシアンも紅薔薇離宮を気に入ったのか、感心したように話し出す。 「特に、宝石で造られた薔薇には驚きました。噂には聞いていましたが、あれほどの規模とは思いませんでしたから」 「はい。高名な建築家や芸術家の方々が、何年も掛けて作り上げた芸術品ですから」 「宝石は、すべてランダリエで採れた物を使っているのですか?」 「全部ではないですが、サファイアとルビーだけは、国内の鉱山で採れた物を使用しています」  エマは胸を張って答える。  ランダリエ王国の鉱山のサファイアとルビーは、高品質の原石が多く採掘され、高値で取引される。  オスティン帝国には、毎年一定量の鉱石と金を献上しているが、サファイア原石のランクは、最高、もしくは高級ランクの原石ばかりだった。  加工技術も発達している為、ランダリエの宝飾品は外国でも評価が高いのだ。 「それは素晴らしいですね。あのような最高品質のサファイアは、どこの鉱山でも採れるのですか?」 「いえ、限られた鉱山になります。最高品質となると……カースレーン領でしょうか。あ、ワイール領も最高品質のものが採れるのですが……」 「そちらは

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       ベッドに入っても、なかなか寝付けなかった。  何度も寝返りを打つので、そのたびにベッドが軋む。 (あ、ナタリナが起きちゃうかも)  ナタリナは隣の部屋で寝ているのだ。  耳を澄ましてみたが、物音や人の気配はしなかった。  安心して、息を吐く。 (今日も疲れたな……)  ゆっくり休めるはずだったのに、書類仕事ばかりして、目も疲れた。  ふだんのエマなら、あれくらいの量は何でもないが、前日にレオナールから折檻を受けたせいだろう。  そのときのことを思い出すと、胸が苦しくなる。 嫌な記憶を忘れたくて、ルシアンのことを思い出した。 (ルシアン様っ)  王宮の庭園で、明るい日差しの中をルシアンと歩いた。二人きりでお茶を楽しんで、その後は……欅の木陰に隠れて、あられもない姿を晒してしまった。  ルシアンのしなやかな手が、エマの尻をもみしだき、昂ぶりに触れて、何度もイかされて……。 「ンッ、……ぁぁっ」  躰が熱くて、気持ちよくて。  ルシアンの手にすべてを任せて、喘ぎながら果てた。  みっともない姿を見せてしまったのに、ルシアンはエマを「可愛い」と言ってくれたのだ。 「はぁんっ、ァッ、ルシアンさまっ」  あの甘い快楽を思い出すと、躰が熱くなってくる。  半身がゆるりと勃ちあがり、エマは夜着の裾をめくって、両手で握りしめる。 「んぁぁっ、ん、ぁぁッ」 (声、聞こえちゃうッ)  エマはシーツを噛んで声を抑え、昂ぶりを扱いた。 「んぅぅッ、ッ、ふぅぅっ」  腰のあたりが熱くなり、蕾まで疼いてくる。  昨日、ルシアンが最後まで触ってくれなかった蕾。そこからトロリと愛液がこぼれおち、エマは思わず指を突き入れた。 「っ、ぁぁんっ!」  ぐちゅ、と指を飲みこむ蕾に、エマの躰がさらに熱くなる。 (ぁっ……気持ちいいッ……ぁぁ

  • 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる   第45話 友人に

     シーツの上に腰掛けると、ナタリナがティーカップを差し出してくれる。  花の香りがエマを優しい気持ちにした。 「ナタリナのハーブティーだね」 「はい。これを飲めば、よく眠れますよ」 「うん」  ナタリナが淹れてくれるハーブティーは、疲労回復にいい。  香りもよく、これを飲むとぐっすり眠れるのだ。 「エマ様の体調も安定しているようで、良かったですわ」 「ルシアン様が下さったお薬のおかげだね」 「ええ。帝国にあのような薬があるなんて存じませんでした。また分けて頂けると良いのですが」  ナタリナが切実な面持ちでつぶやく。  レオナールに抑制剤を取り上げられたせいで、エマは発情期のたびにひどく苦しむ。そのうえ、今回は媚薬を使って、無理やりエマを発情に近い状態にしたのだ。エマを想うナタリナが、ルシアンの薬を望む気持ちもよく分かった。 エマも、ルシアンの薬に助けられたので、もっとたくさん欲しいと思う気持ちは同じだ。 「でも、ルシアン様は親切心で分けて下さっただけだから。迷惑はかけられないよ」 「ですが、エマ様。デイモンド伯爵は、エマ様によくして下さるではありませんか。帝国の方ですが、『聖樹』への偏見もないようです。エマ様が望めば、きっと手助けして下さるはずです」  ナタリナが、エマの顔を覗き込む。  エマに近づく相手を厳しく見定めているナタリナだが、ルシアンへは好意的だ。  始めは、ルシアンに気をつけるよう忠告してきたのに、高価な鎮静剤を分けてくれたことで、株が上がったらしい。 (ルシアン様は、優しい方だから)  家族同然のナタリナが、ルシアンを認めてくれたようで嬉しかった。 「でも、図々しいって思われないかな?」  ルシアンの親切を、好意と勘違いしてはいけない。  エマはずっとそう戒めてきた。 (僕が、抑制剤を飲んでないのを、心配してくれただけ)  静香石(せいこうせき)の調子を見てくれたのも、エマの熱を解放するために触れてく

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