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第1055話

Auteur: 風羽
寒笙は今も大学で教鞭を執っている。

准教授だ。

外目には穏やかで知的だが、願乃に言わせれば、清貧ぶりが行き過ぎて、何ひとつ得にならない男だ。

だが、朝倉家の御曹司であることに変わりはない。

彼は一枚の小切手を願乃に渡し、洗練された仕草で言った。

「翠乃と少し、プライベートな話をさせてもらえないか?」

願乃はニコニコして答えた。

「H市の男のこういうスマートなところ、好きよ」

寒笙は夕梨にも視線を向け、合図を送った。

「義姉さん」

夕梨は義姉としての威厳を見せ、真剣な顔で言った。

「翠乃さんを困らせないでね。公の場で恥をかくようなことは許さないわよ」

「いつからうちの母親みたいになったんだ」

夕梨は微笑んだ。

「兄嫁は母親みたいなものよ」

それでも、彼女は願乃を連れてその場を離れた。

後に残された元夫婦は、華やかな社交界の光の下、無言で見つめ合った。

寒笙は御曹司らしく社交の場にもすっかり慣れていたが、真に人目を引いたのは翠乃だった。初めて足を踏み入れる社交界でありながら、物怖じすることもなく、凛とした佇まいを崩さない。

今夜の彼女は翠色のドレスを纏い
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