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第146話

Author: 風羽
舞は逃げなかった。

静かに一歩踏み出し、京介の正面に立った。

夜風が強く吹きつける中、黒髪に白のシャツ、赤い唇がネオンの光すらも霞ませる。

「私に何か?」と舞は静かに口を開いた。「蒼真のことなら、私はとても満足してる。むしろ感謝してるくらい」

京介の瞳は暗く沈んでいた。

「気に入ったならよかった」

彼はかつての余裕を取り戻したように見えた。卑屈な懇願は影もなく、どこか気障なほどの口調で続けた。

「気に入ったのなら、明日もっといいのを何人か選んで届けさせようか」

その瞬間、舞の目に浮かんだ言葉はただ一つ。

……頭おかしい、ほんとに。

傍で見物していた蒼真が、ニヤニヤしながらピンクのロールスロイスの助手席を開け、大声で叫んだ。

「ご主人様、お帰りの時間ですよ〜」

京介は眉をひそめた。

「彼、お前のことをご主人様って呼んでるのか?」

舞はロールスに近づき、ドアに手をかけながら冷静に答えた。

「ダメ?私が良ければ、お殿様でも姫でもいいのよ」

京介は黙っていた。

自分が選んだ若者が舞の運転手として送り迎えし、挙句にご主人様呼び——

……いや、自分だって呼べるさ
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