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第246話

Author: 風羽
京介は、滅多に涙を見せる男ではない。

けれど今、目尻には確かに光るものがあった。

舞の頬は、薄い布越しに彼の胸にぴたりと触れている。

彼女の手は、あの無惨な腕を強く握りしめていた。

その心には、言葉にできないほどの感情が渦巻いていた。

愛と憎しみが、胸の奥で絡み合う。

ついに、堰が切れた。

舞は顔を彼の胸に埋め、拳をぎゅっと握って、その胸を何度も打ちつけた。

その口からは、言葉にならない叫びが漏れた。

「周防京介……恨んでる。どうして……どうして、私にもっと憎ませてくれないの?

私が一番憎んでるのは、他でもない、あなただよ!」

……

その声は掠れ、か細く、最後には声にならなかった。

十年以上の愛と憎しみ、数年に及ぶ結婚生活——

すべての思いが、一瞬にして噴き出した。

溢れ出したのは——激しい愛情であり、激しい憎悪だった。

この世において京介ほど彼女の心を掻き乱す男はいない。

彼だけが、彼女をこれほどまでに愛させ、これほどまでに憎ませた。

そして、何食わぬ顔でまた彼女の人生へ土足で踏み込んでくる。

逃げようとしたって、無駄だった。

彼だけが、死んだはずの心を再び燃え上がらせたのだ。

それが、愛であろうと憎しみであろうと——

……

窓の外では、雨が静かに弱まっていた。

夜に濡れた木の葉が、闇の中で仄かに輝いている。

やがて、二人は静かに身を離した。

舞は一歩、また一歩と後ずさりしながら、静かに京介のもとを離れていった。

そして、ゆっくりと顔を上げた。

その瞳にはまだ涙が浮かんでいたが——

その眼差しは、これまでにないほど澄み切っていた。

まるで、あの日プロポーズを受けた時のように。

舞は言った。

「京介……子どもを作りましょう。体外受精で」

……

彼女は知っている。

体外受精がどれだけ苦しいか。

出産が、どれほどの命懸けか。

でも、澪安は彼女の子。

お腹に十月宿して産んだ、大切な我が子だ。

もう、これ以上失いたくない。

そのためなら、何だってできる。

出産の痛みなど、怖くない。

——澪安のためなら。

京介は、何かを言いかけた。

だが次の瞬間、またしても彼女の平手が飛んだ。

その顔を見据えながら、彼女は震える声で罵った。

「周防京介……この、最低のクソ野郎!」

涙を流しながら、必
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