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第250話

Author: 風羽
舞は、ほんの少し眉をひそめた。

身体が、熱を帯びた男の身体に押しつけられていた。

その手は、彼女の手をがっしりと包み込んでいた。

そして次の瞬間、状況は一気に混沌と化す。

熱を帯びた男の顔が、彼女の首筋に寄り添い、低くかすれた声で囁いた。

「朝っぱらから男の寝室に来て、何する気だったんだ?」

舞は身動きが取れなかった。

彼女はすぐに気づいた。

京介が、どうやら火照っているようだと。

舞の柔らかな体は、熱を帯びた男の体に押さえ込まれたまま。

何も無理強いされてはいないが、それでも京介の体温と接触は、十分に足を震わせるには充分だった。

かつて、何度も身体を重ねた記憶があるからこそ、尚更——

舞がやっとのことで声を絞り出した。その声はかすれて震えていた。

「……澪安の服を取りに来ただけ」

彼の唇が、彼女の首筋をかすめた。

そして、ゆっくりと顔を上げ、彼女の唇を探し、そっと重ねた。

その唇から漏れる声は、熱にうなされたようにかすれている。

「……タイミングがいいな。動くなよ、キスだけだから」

舞は顔を左右に振った。

でも、逃げられなかった。

男は身体を折り曲げ、まるで飢えたように熱く彼女にキスを落とした。

まるで、生まれて初めて女に触れたような狂おしさで。

彼の指が彼女の手をしっかりと絡め取り、十指を交えたまま、唇も理性もすべてが崩れていく——

男という生き物は、本当に単純だ。

理性を失った瞬間に、どんな言葉も約束も意味をなくす。

京介も、例外ではなかった。

彼は舞を抱き寄せ、黒い瞳に艶やかな光を宿しながら、耳元で囁いた。

「今このまま妊娠すれば、体外授精なんて要らないだろ?」

——パチン、と。

部屋に明かりが灯る音と同時に、舞は彼を強く突き飛ばした。

すぐにドアノブに手をかけ、部屋を出ようとする——

だがその細い身体は、すぐに男の腕に抱き止められた。

京介はようやく冷静さを取り戻し、舞の肩に顔を預けると、荒れた呼吸をゆっくりと落ち着かせた。

かすれた声で、彼は言った。

「お前が帰ってくるって言った時——お前が、子どもを産むって決めてくれた時から——

俺は勇気を持てるようになった。頭の中は、お前とのことでいっぱいになった。

俺は聖人君子なんかじゃない。好きな女と、そういうことをしたいって、当然思うさ。

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