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第753話

Auteur: 風羽
所詮、男の腹の内を読むのは男だ。

西園寺は一目で悟った――澪安は慕美に目をつけたのだと。

自分もその娘は気に入っていた。だが権勢には抗えない。所詮は遊びの相手、情が尽きればただの知人に戻るだけ。西園寺は即座に天秤を傾け、にこりと笑った。

「なんと澪安様のご友人とは。久々の再会なら、ゆっくり語らうべきですな。我々は席を外しましょう」

居並ぶ者たちはその潔さに驚愕した。

せっかく準備した舞台を、丸ごと澪安に譲ったのだから。

だが西園寺は理解していた。

――澪安様が自分に損をさせるはずがないと。女など、また探せばいい。

旨みのある話なんてそう転がってはいないが、綺麗な娘ならクラブにいくらでもいる。

感嘆とざわめきの中、人影はすっかり消えた。

広大な室内に残されたのは、澪安と慕美だけ。

男は扉を閉め、振り返る。その声音はわずかに和らいでいた。

「何か弁解は?」

慕美は静かに問い返す。

「弁解って、何を?私たち、特別な関係じゃなかったはずでしょ」

澪安は鼻で笑い、ゆっくりと歩み寄った。鋭い視線を落としながら身を屈め、耳もとで囁く。

「俺は名刺を渡したはずだ。困ったら連絡しろと。それが今の仕事か?身を売ることなのか?」

慕美は彼を強く突き放した。

「私と西園寺社長は本気よ!」

澪安は喉の奥で乾いた笑いを洩らす。

「ほう?あの豚面に口づけできるんだな」

ふと、冷たい疑念が胸を刺した。

肩を掴み、低い声で問う。

「もう寝たのか?」

「頭おかしいんじゃないの?」

慕美は振り払い、出口へ駆け出した。だがすぐに腕を取られ、細腰を引き寄せられる。強く抱きすくめられ、男の胸に押し込められた。

澪安は強情だ。

慕美もまた、引かない。

もつれ合い、ついにはソファに倒れ込んだ。女は押し伏せられ、必死に抗う。

「私はあんたの妻じゃないわ、干渉しないで!」

その一言に、二人は同時に息を呑んだ。

「なら、あの男より俺の方がましだろ」

「やっぱり頭おかしい!」

罵声を無視し、澪安は顎をつかんで唇を奪った。

数多の女はウサギのように従順だった。

だが慕美だけは違う。

名刺を渡したというのに、電話一本寄こさない。

挙げ句の果てには、H市でクラブ暮らしをし、男から金を稼ぐ。

――俺を死んだ者扱いしているのか。

唇が触れた瞬間、稲妻のよ
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