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第25話

Auteur: ちびみかん
翔明はその光景を見て、全然嬉しくなかった。でも母に言われたことを思い出して、

またすぐに涙を拭いた。もうすぐ小学一年生だから、

もう泣いちゃだめだ。

新郎新婦が口づけを交わしたあの瞬間、システムがまた現れた。

「ミッション達成です。おめでとうございます。すぐにミッションの世界から抜け出しますか?」

文香はにこにこしながら、目の前の颯祈を見ていた。

笑顔で目と目が合って、二人は同時に頷いた。

「はい」

白い光に包まれて、すべてが消えた。

再び現実世界に戻ってきたら、二人はもう小久江家の館にいるが、

まだあのドレスとスーツを着ていると気づいた。

静かな夜に、二人の結婚式は幸せな笑顔で幕が下りた。

翌日の朝、二人は奈々を連れて、颯祈の両親の住んでいる家の前でコンコンとドアを叩いた。

ミッションの世界に行く前に、二人はすでに颯祈の両親に海外旅行で結婚式を行うと伝えておいた。

文香に渡された結婚写真を見て、

颯祈の母は笑いが止まらなかった。

ずっと「素敵な写真よ」だと褒めていた。

夜に、奈々は颯祈の母と一緒に寝て、夫婦二人は久しぶりに一緒に寝ていた。

颯祈は文香の頭を撫でながら、細い声で名も知らない鼻歌を歌っていた。

「文香、僕たちの未来はまだ先だよ」

文香は微笑みながら、颯祈の手を取った。

「うん、ずっと一緒にいよう」

また結婚記念日を迎えた。

颯祈は奈々がまだ学校にいるうちに、こっそり文香をフランスに連れてきた。

ミッションの世界で結婚式を行った教会で、もう一度結婚式を行った。

「どうしてここに?」

長い口づけで、文香はもう息が絶え絶えになって、ようやく颯祈に唇から離れられた。

力が抜けた文香は、荒い息で颯祈の胸に寄りかかるしかなかった。

颯祈は文香のほっぺたにそっとキスをしてから、笑顔で気持ちを伝えた。

「あの時、僕たちはもう結婚してるけど、文香がウェディングドレスを着て、子どもを連れて僕のところに歩いてくる姿を見て、ようやく実感したんだ。文香は本当に僕の妻になったんだなって」

「でも、ミッション世界での結婚式は、あくまでも本当じゃなかった。だからこの世界で、同じ教会で改めて行おうって思ったんだ」

「文香、結婚してくれてありがとう。」

文香がそれを聞いて、目が濡れていた。

愛の言葉は、実はそんなに長く必要
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