Compartir

340話

Autor: 籘裏美馬
last update Fecha de publicación: 2026-07-23 18:53:39

サァッ、と徳居の顔色が悪くなる。

パソコンのマウスを握る手も、カタカタと小刻みに震えていて、髙野辺はちらりとその様子を見たが気にせず言葉を続けた。

「──他人の名前でログインし、我が社のデータを他社に渡したな?そのせいで、我が社は新商品を発売出来なくなった。その損失は如何程になるだろうな」

「──あ、ちが、違うんです……」

「我が社が被った損失を計算し、後日損害賠償を請求させてもらう。それと、君は今日付けで懲戒解雇だ。賠償に関しては、後日弁護士から連絡を入れさせてもらうから──」

「ま、待ってください聖さん!わ、わたっ、私!こんな事になるとは思わなくって……!ただ、ただちょっと、あの女を懲らしめてやろうって……、ただ、それだけだったんですっ!痛い目を見せてやろうって……!こんな事っ」

髙野辺の言葉を遮り、徳居が叫ぶ。

自分勝手な言い訳を始める徳居に、髙野辺は不愉快そうに眉を顰めた。

徳居の態度に、後ろに控えていた蒔田も我慢ならなかったのだろう。

蒔田は真っ直ぐ徳居に近づき、口を開いた。

「社長、と呼びなさい。あなたはただの一社員。勝手に社長の名前を口にしないよう
Continúa leyendo este libro gratis
Escanea el código para descargar la App
Capítulo bloqueado

Último capítulo

  • 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した   341話

    パタン、と背後で扉が閉まる音がした。 髙野辺は驚きに目を見開き、顔だけ扉に振り返る。 「──こもも。……胡桃?もみじさんの妹の名前が、どうしてあの女性の口から……」 髙野辺は呟き考えるように自分の口元に手を当てる。 そうして、はっとすると急いで廊下を歩き出した。 ◇ 「──もみじさん!」 「わっ!?」 デザイン室の扉が勢い良く開き、髙野辺が焦った様子で駆け込んで来る。 帰り支度をしていたもみじは、勢い良く入ってきた髙野辺にびっくりして声を上げた。 「ど、どうしたんですか髙野辺さん?」 「──彼女、徳居 朱音の口から、もみじさんの妹の名前が出てきたんです……!」 「え……っ。胡桃の名前が……?どうして……」 「俺にも詳しくは分からないのですが……もしかしたら今回、俺ともみじさんが写真を撮られた事も、それを記事にされた事も、妹さんが関わっているのかもしれません……。それと、今回我が社のデータを他社に売ったのも……」 そこでいったん言葉を切った髙野辺は、ちらりともみじを見る。 まさか自分の名前でログインされている、とはもみじも知らないだろう。 だが、当人が知らぬ間に犯人に仕立て上げられる。 そんな事が実際、起こったのだ。 巻き込まれたもみじにも、知る必要がある。 「……今回、他社に情報を売ったのは徳居さんでした。……その時、データを入手するために社外秘のサーバーにログインする時に、徳居さんはもみじさんの名前でログインしたんです」 「──えっ!?私の名前で、ですか!?」 ぎょっと目を見開くもみじに、髙野辺は申し訳なさそうに眉を下げ、説明をした。 そもそも、営業社員と会社の役員がログイン出来るサーバーの情報が他社に流れた。 デザイナーであるもみじは、そのサーバーへのアクセス権限は持っていない。 それに、ログインするためのIDもパスワードも発行されていない。 普通の営業社員だったらそれくらい簡単に分かる。 だが、徳居の目的は仕事ではなく髙野辺個人だったのだ。 だから会社のシステムも、仕事もどうでも良かった。 覚える必要がなかったのだ。 そのため、徳居はその基本的な情報すら頭に入れていなかった。 だからこそ、そんな信じられないミスを犯したのだが──。 「徳居さんが、こももの言う通りにやったのに、と呟いたのが去り際に

  • 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した   340話

    サァッ、と徳居の顔色が悪くなる。 パソコンのマウスを握る手も、カタカタと小刻みに震えていて、髙野辺はちらりとその様子を見たが気にせず言葉を続けた。 「──他人の名前でログインし、我が社のデータを他社に渡したな?そのせいで、我が社は新商品を発売出来なくなった。その損失は如何程になるだろうな」 「──あ、ちが、違うんです……」 「我が社が被った損失を計算し、後日損害賠償を請求させてもらう。それと、君は今日付けで懲戒解雇だ。賠償に関しては、後日弁護士から連絡を入れさせてもらうから──」 「ま、待ってください聖さん!わ、わたっ、私!こんな事になるとは思わなくって……!ただ、ただちょっと、あの女を懲らしめてやろうって……、ただ、それだけだったんですっ!痛い目を見せてやろうって……!こんな事っ」 髙野辺の言葉を遮り、徳居が叫ぶ。 自分勝手な言い訳を始める徳居に、髙野辺は不愉快そうに眉を顰めた。 徳居の態度に、後ろに控えていた蒔田も我慢ならなかったのだろう。 蒔田は真っ直ぐ徳居に近づき、口を開いた。 「社長、と呼びなさい。あなたはただの一社員。勝手に社長の名前を口にしないように。それに、あなたの言い訳は自分勝手な言い草で聞くに絶えない。社長の言葉を遮らず、黙って聞いていなさい」 「──なっ、た、たかが秘書如きが私と聖さんの会話に割り込まな──」 「徳居 朱音」 蒔田の言葉にむっとした徳居が、苛立ち顕に声を荒らげる。 だが、今度は徳居の言葉を髙野辺が途中で遮った。 「君は自分が仕出かした事の大きさを理解していないのか?……以前の記事に関しては、俺の不用心が招いた結果だったから目を瞑った。だが、今回は見逃す事はできない。君には会社を去ってもらうし、それ相応の賠償金を請求する。それと──もみじさんの名前を騙った事。それを訴えるか否かは、もみじさんの判断に委ねるが、もしもみじさんが訴えると言うなら、我が社──いや、俺個人としてもみじさんを全面的にバックアップする」 「な、なんで……聖さ……っ、私たち……付き合っていたんじゃ……」 信じられない、どうして私にこんな事をするの?と涙を滲ませる徳居。 その徳居を、変わらず冷たい目で見据えたまま髙野辺ははっきりと告げた。 「俺が君と付き合っている?妄言はやめろ。俺は君をただの一社員としてしか見ていない」

  • 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した   339話

    「──社長、蒔田です。お連れしました」 社長室の扉前。 ノックをした蒔田が、徳居を連れて来た事を告げる。 すると、中から髙野辺の低い声が一言返った。 「入ってくれ」 「失礼します」 扉を開けた蒔田が、後ろにいる徳居に入るよう目配せをする。 何が嬉しいのか、興奮に頬を微かに紅潮させた徳居は、笑顔で「失礼します」と入室した。 髙野辺と自分だけが部屋に残るものだと思っていた徳居は、蒔田も入室して扉前に控えている事に驚いた。 出来れば、髙野辺との2人きりの時間の邪魔をして欲しくない。 そう考えた徳居が蒔田に退出するように告げようと口を開いた。 ところで。 「徳居 朱音さん、こちらに」 髙野辺の冷たく、低い声が部屋に響く。 徳居ははっとして髙野辺に向き直り、呑気に笑った。 「はい、何でしょうか社長」 徳居は小走りで髙野辺が座るデスクの前に向かう。 にこにこ、と嬉しそうに髙野辺に視線を向ける徳居。 だが、髙野辺は徳居には一切目を向けず、低く冷たい声で告げた。 「徳居さん……自分で話す気はないか?」 「──?」 こてん、と小首を傾げた徳居は「何をですか?」と本当に何が何だか分からない、といった態度だ。 髙野辺ははあ、と溜息を1つ零す。 そしてここでようやく徳居に視線を向けた。 「──ッ」 髙野辺の冷たい視線を受けた徳居は、びくりと体を震わせた。 髙野辺の目には確かに怒りの感情が。 ふつふつと沸き上がる怒りの感情を、どうにか必死に留めているような、爆発させないように抑えているような、そんな様子に見える。 徳居は、どうして自分が髙野辺にそんな目を向けられるのか分からない、というように狼狽えて見せた。 (え……っ、聖さん、私に怒ってる……?どうして……?どうして私に怒っているの……?私、何も……) ふるふる、と震えてくるのが自分でも分かり、徳居は震える指をぎゅっと握りこんだ。 髙野辺はデスクに置いてあった茶封筒を手に取ると、中から書類を取り出して徳居の目の前にばさりと放った。 「……自分の目で確認しろ。愚かな行動によって、我が社は甚大な損害を被った。この責任は君に請求させてもらうぞ」 「──えっ、え??」 徳居は、慌てて自分の目の前に散らばった書類を手に取る。 書類は、徳居には小難しくて何が何だか分からなかった。

  • 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した   338話

    ◇ 終業時間を迎え、徳居は帰り支度をしていた。 徳居は鼻歌でも歌い出しそうなほど、上機嫌だ。 そんな徳居を、神咲はじっと見つめていた。 周囲は。 神咲や徳居を指導してくれている営業の先輩達はまだ忙しそうに仕事をしている。 (会社から、まだ何も今回の件について発表されていない……。新商品、どうするんだろうか……) 今後、会社の行動を先読みして仕事をしようとしている社員がほとんどだ。 その中で、徳居は晴れやかな表情で「お先に失礼します」と告げ、デスクから立った。 その時──。 「徳居さん。徳居 朱音さんいらっしゃいますか?」 騒がしいはずの営業フロアに、静かな低い声が不思議と響いた。 神咲は「えっ?」と声を漏らし、徳居を呼ぶ声の方向を見やる。 すると、そこには──。 「蒔田秘書……?」 どうして社長の右腕である蒔田秘書が、ここに。 そう思ったのは神咲だけじゃないようだ。 フロアに残っていた社員が訝しげに徳居を見る。 当の本人、徳居はキョトンと目を瞬かせていた。 徳居は返事をしていないが、彼女を見つけた蒔田が「ああ、まだ帰られていなくて良かった」と言いながらフロアに入ってくる。 そして徳居の目の前まで歩み寄ると、ぼうっと蒔田を見上げる徳居に、蒔田は表情を変えずに告げた。 「社長がお呼びです。来てください」 「──えっ、ひじ……っ、髙野辺社長が!?分かりました、すぐに伺います!」 髙野辺が自分を呼んだ。 その言葉を聞いた瞬間、徳居はぱっと花が咲くように満開の笑みを浮かべる。 嬉しそうにバッグを手に持ち、蒔田を急かすように「早く行きましょう!」と急ぎ足でフロアを出て行く。 蒔田はくるりと振り向くと、フロアにいる社員達に対して申し訳なさそうに微笑んだ。 「騒がせてしまい、申し訳ない。……君たちも残業はほどほどにして帰社してください」 それだけを言うと、蒔田は徳居を追うようにフロアを出て行った。 ぽかん、と口を開けてその光景を見守っていた神咲のもとに、先輩社員が椅子のままやってくる。 「──おい、社長が徳居さんを呼んだって……。彼女、何か今回の事件に絡んでいるって事か……?」 こそこそ、と耳打ちしてくる先輩に神咲は曖昧に笑って誤魔化す事しか出来ない。 そうだと思います、なんて言う事はできなかった。 だが、徳居の

  • 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した   337話

    「──わあ、美味しそう……!」 「良かった。まだ熱いから気をつけて食べてくださいね」 にこり、と笑顔の髙野辺にナイフとフォークを渡されてもみじは頷いた。 程よく焦げ目がついたパンの上には、艶々のベーコン。ベーコンには卵が程よく絡められていて、もみじの分はパンを4等分に切ってくれている。 逆に髙野辺の分はパンを切っておらず、そのままだ。 「ありがとうございます、髙野辺さん!すっごく美味しそうです!」 「どういたしまして。さあ、食べましょうか」 「はいっ!」 もみじは4等分に切ってくれている内の一切れにフォークを刺して、口に運ぶ。 サクサクとした食感のパンに、ジューシーなベーコン。 そしてベーコンに絡む卵の塩梅が何とも言えず、とても美味しい。 もっと気の利いた言葉が言えればいいのだったが、もみじはただただ「美味しい」と連呼してしまう。 一方髙野辺は男らしく、サクサクと食べ進めて行く。 もみじとは違い、1口1口が大きく、あっという間にぺろりと平らげてしまった。 もみじがようやく2切れめの半分を食べた頃、髙野辺は2枚目に口を付けていた。 それもぺろりと平らげてしまっていて、髙野辺はグラスに口を付けている。 やっぱり男の人は食べるのが早いな。 と、もみじが感心していると、ふと髙野辺と目が合った。 「──?」 きょとん、と目を瞬かせるもみじに、髙野辺はふふっ、と破顔する。 そして僅かに体を乗り出すと、もみじの口元に手を伸ばした。 「もみじさん、口元にパンがついてしまっていますよ」 「──えっ!?す、すみません……!」 かぁっ、ともみじは恥ずかしさで顔を赤くする。 サクサクのパン生地が美味しくて、夢中になって食べてしまったからだろう。 子供みたいだ、ともみじが恥ずかしがっていると、髙野辺が指の甲でもみじの口端を拭った。 「喉を詰まらせないでくださいね」 「す、すみません……美味しすぎて、がっついてしまいました……」 「お気に召していただいて光栄です」 ふふ、と悪戯っぽく笑う髙野辺に、もみじも笑い返す。 2人で笑い合い、穏やかな時間を過ごした後。 食器は2人でキッチンに運び、もみじが食器を洗って髙野辺が洗い終わった食器を拭いて、元の棚に戻す。 濡れた手を拭きつつ、髙野辺はもみじに顔を向けて口を開いた。 「──もみ

  • 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した   336話

    デザイン室に戻った髙野辺は、部屋に備え付けられている冷蔵庫から飲み物を取り出す。 デザイン案の作成に集中しているもみじの傍らにあるグラスの中身は、ほぼ空になっていた。 髙野辺はなるべく音を立てないようにグラスを回収し、飲み物を注ぐ。 そして、もみじの近くにそれを戻すと時計を確認した。 (終業時間まで……あと少しだな。集中しているもみじさんには悪いが……後で話しておかないと) どうせ帰る場所は一緒だ。 それにもみじは、会社のために集中してデザイン案を考えてくれている。 もみじの集中力は凄まじく、髙野辺が周囲で多少動いていたり、物音を立ててしまってもタブレットに向かうもみじの手が止まる事はない。 ペンを握るもみじの手は、先程からずっと動いている。 何度もデザインしてはそれをボツにし、修正してはボツにし、それを繰り返している。 髙野辺はふと、自分のお腹がくぅ、と鳴った事に気が付いた。 「──っ」 慌てて自分の腹を押さえ、もみじの様子を窺う。 幸いにも、髙野辺の腹の音はもみじの耳には届いていなかったらしく、髙野辺はほっと安堵の息を吐き出した。 (そう言えば、昼過ぎにもみじさんと合流して……それから何も口にしていないな。もみじさんもデザインに集中しているが、昼飯を抜くのは体に良くない) 夕食を家で食べるなら、軽くつまめる軽食を用意した方がいいだろう。 そう考えた髙野辺は、デザイン室に備え付けられている簡易キッチンに向かった。 冷蔵庫の中身を確認し、卵とベーコンが入っているのを見ると、髙野辺は冷蔵庫横に食パンがあるのに気が付いた。 「ベーコンエッグでいいか……」 顎に手を当て、呟く。 食パンを軽く焼いて、その上にベーコンエッグを乗せる。 軽く食べる程度なら丁度いいだろう。 そう考えた髙野辺は、フライパンを取り出してコンロの火を付けた。 「──ん?」 ふ、と鼻腔をくすぐる良い匂いにもみじは小さく声を上げた。 目の前にあるタブレットから顔を上げ、もみじは開いていたパソコンを閉じた。 食欲を唆る良い匂いを嗅いだからか、もみじの腹は空腹を思い出したように「くぅ」と小さく鳴いた。 もみじが顔を上げた先には、簡易キッチンに立つ髙野辺の姿が見える。 慣れた様子でフライパンを振り、何かを作っているようだった。 「た、髙野辺さん……?

Más capítulos
Explora y lee buenas novelas gratis
Acceso gratuito a una gran cantidad de buenas novelas en la app GoodNovel. Descarga los libros que te gusten y léelos donde y cuando quieras.
Lee libros gratis en la app
ESCANEA EL CÓDIGO PARA LEER EN LA APP
DMCA.com Protection Status