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6話

Author: 籘裏美馬
last update publish date: 2026-01-26 17:44:23

「──ぇ」

もみじの声が、ぽつりと零れる。

どうして胡桃が、誠司から指輪をプレゼントされているのか──。

自分には、婚約指輪だって。結婚指輪だって用意してくれなかったのに。

誠司は、会社が軌道に乗ったら。

もっともっと稼げるようになったら、もみじが驚くほどの結婚式を挙げよう、と言われていた。

それに、指輪も結婚式の時にもみじに喜んで欲しいから、と婚約指輪も、結婚指輪も誠司は用意してくれなかった。

だから、もみじは誠司と結婚して2年も経っていると言うのに、もみじの薬指には指輪ははまっていない。

左右、どちらにも、だ。

「指輪は、特別な証なんじゃないの……?だから、誠司も……指輪はもうちょっと待ってって、言ってたのに……」

それなのに。

もみじの義妹、胡桃にはこうしていとも容易く誠司は指輪をプレゼントするのだ。

もみじがずっと焦がれているものを。

長年、誠司から贈られるその時をもみじが心待ちにしていると、誠司も分かっているはずなのに──。

ガツン、と頭をハンマーで殴られたような衝撃だ。

たった1枚の写真。

されど、そのたった1枚の写真がもみじの心をズタズタに切り裂いた。

もみじが放心している間にも、胡桃からの通知は再び送られてくる。

──チロン、チロン。

軽快な音を立てて送られてくるのは、SNSの通知。

それは、胡桃がたった今投稿したばかりのお知らせだった。

画像と、ストーリー。

もみじは、何も考えず、無意識にスマホを見てしまう。

そこに映っていた画像に、もみじは再び胸をぐさり、と刺されるような痛みを感じた。

【大好きな人がすっごい豪華な食事を用意してくれた♡】

そんな投稿と共に、見覚えのある料理が胡桃の笑顔と一緒に映っている。

そして、背後には顔は映っていないし、ぼやけていて良く分からないが、男性が映っている。

胸あたりからソファに座っているのか、膝辺りまでが映っており、その男性の腕に着けられている腕時計にも、もみじは見覚えがあった。

「──誠司、まさか……」

もみじは、リビングのテーブルから勢い良く立ち上がると、冷蔵庫に向かった。

急いで扉を開けて中を確認する。

昨夜、もみじが時間をかけ丁寧に作った豪華な食事の数々。

記念日だから、と誠司の好きな物を沢山作った。

日持ちがするように、誠司が帰ってきた翌日にでも一緒に食べよう、と思って冷蔵庫に保管していたのだ。

それなのに。

それらの料理が、全て綺麗さっぱりと冷蔵庫から消えていた──。

「嘘、でしょう……?」

誠司は、朝の忙しい時間帯に。

眠るもみじを起こす事もなく。

胡桃のためにわざわざ冷蔵庫に保管していた昨夜の料理を全部持って行ったのだろう。

もみじの膝からかくり、と力が抜けてしまいずるずるとその場に崩れ落ちる。

もみじのスマホは、胡桃が投稿したストーリーが流れ始めていた。

【やだー!零しちゃった、ごめんね♡】

【いや、気にしないでくれ。安い料理だ。零れた分は捨てれば良い】

【ふふふっ、優しいわね、大好き♡】

【はいはい、俺も大好きだよ】

もみじのスマホから流れる、聞きなれた男女の声。

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Comments (3)
goodnovel comment avatar
みかん
このクズ夫! せめてプラトニックかと思えば…これ見よがしにあちこちに残したキスマークを「可愛い」なんて! 最低!
goodnovel comment avatar
ゆんちゃん
これはひどい…最低…
goodnovel comment avatar
YOKO
この人鈍感過ぎる。読んで‥てイライラするけど。
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