Share

私の男運、この人に全振りしてたらしいよ。〜クズばっかり寄る原因、ここにあり!〜
私の男運、この人に全振りしてたらしいよ。〜クズばっかり寄る原因、ここにあり!〜
Penulis: 藍沢咲良

呪いが解ける、音がする

Penulis: 藍沢咲良
last update Tanggal publikasi: 2026-08-30 15:54:43

行きたかったけど、行きたくなかった、大学のサークル、同期会。毎年恒例の、忘年会を兼ねたものだ。

行きたかったのは、友達に会いたかった。久しぶりの子が沢山いる。

行きたくなかったその原因。──彼、翔麿《しょうま》だ。私のハートを木っ端微塵にした男。認めたくなかったけど、私は翔麿をしばらく引きずっていた。

服もメイクも髪も整えた。今の私の、最上級変換。美容院に行ったのなんて、昨日よ、昨日!担当美容師の加護さんには「明日同窓会で。マウント合戦になるの見え見えだから、ツヤッツヤで!お願いします!」なんて言ったら、いつもよりめっちゃ気合い入れて最後のセットをしてくれた。加護さん、過去最高に楽しそうだったな。

「朝比奈《あさひな》さん、ツヤッツヤのサラッサラ。でもね、向こうは大したイケメンになってないからただ朝比奈さんが無双するだけですよ」って悪い顔で言ってくれた。お茶吹くかと思った。

店に到着。集合時間の10分前から近くをうろついて、店のドアを開けたのは5分前。──いた。こちらを見ている。

本当はずっと、会いたかった人。ぼろ切れみたいに捨てられて、それでも忘れられなかった人。もうそれは恋愛の情ではなかったのかもしれない。もはや依存や執着だった。

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi

Bab terbaru

  • 私の男運、この人に全振りしてたらしいよ。〜クズばっかり寄る原因、ここにあり!〜    

    内見車の後部座席には、若いカップルが乗っている。彼氏は物件サイトを見ながら「この辺、家賃安いっすね」と無邪気で、彼女は窓の外を見たまま静かだ。榊くんは運転しながら、完璧な営業の声を出す。「駅距離は徒歩九分。夜道は明るいです。スーパーも近い」私は助手席で、資料を開いて相槌を打つ。仕事。仕事。仕事。──後ろにお客さんがいる。だから私は安全だ。そう思った。信号で止まった瞬間、榊くんが小さく笑って言う。「朝比奈さん、ちょっと固くないです?」声だけが近い。私は窓の外を見たまま返す。「そう?いつもこんなもんでしょ。仕事中なんだから」「じゃあ、僕も仕事中なんで、効率よくいきましょう」榊くんの左手が、またセンターコンソールに置かれた。私の太もものすぐ横。触れてない。でもあと1ミリ。それが一番、言い訳に便利な距離だ。肺が一瞬、空打ちする。ぞわっとしたのは気のせいだ。触れてないのに、触れられてるみたいに息が止まる。後ろの彼女が、視界の隅でバッグの紐を握り直した。彼氏は、まだ物件サイトをスクロールしている。気づいた?……いや、気づかないで。──目を合わせないのに、距離だけ詰めてくる。これが、榊くんの手法だ。客がいる。だから私は、逃げられない。

  • 私の男運、この人に全振りしてたらしいよ。〜クズばっかり寄る原因、ここにあり!〜    

    内見車のドアが閉まった瞬間、空気が変わる。「助手席、どうぞ。いつも通り」榊くんはハンドルに手を置いたまま、当たり前みたいに言った。私は反射で「ありがとう」と返してしまう。断る理由がない。理由がないことが、いちばん厄介だ。シートベルトの金具を差し込む音が、やけに大きい。私の胸の内側だけが、先に騒いでいる。「さっき、所長と何話してたんです?」信号待ち。榊くんは前を見たまま、声だけ落とす。雑談の皮をかぶった確認。私は窓の外を見て答える。「昨日のお礼、チョコ渡したから。その話」「へえ」短い返事。次の瞬間、榊くんは笑った。笑ったのに、目は笑っていない。運転中の横顔って、逃げ場がない。「朝比奈さん、所長には素でいきますよね」“素”って言葉が、肌を撫でるみたいに刺さる。私は笑顔の筋肉だけ動かす。「素じゃないよ。仕事だよ」「じゃあ、僕には?」アクセルが少し踏まれる。車が滑るみたいに前へ出る。私は喉の奥で息を止めた。「……榊くんにも、仕事」言い切ったつもりだった。けれど榊くんは、そこで黙らない。「そっか。じゃ、距離も仕事の距離にしよ──守るために」……何を?“仕事”の名目で、榊くんの左手がセンターコンソールに置かれる。そこは私の太もものすぐ横。触れてない。触れてないのに、触れられてるみたいに体が固まる。待って。息、吸ったら吐くの。忘れないで。私は窓の外の看板を読むふりをして、指先だけ膝の上で握った。──目を合わせないのに、距離だけ詰めてくる。“仕事”って言葉は、便利だ。拒否を悪にできる。

  • 私の男運、この人に全振りしてたらしいよ。〜クズばっかり寄る原因、ここにあり!〜    

    翌朝。開店準備。新着物件の図面を出して、内見用の鍵をまとめる。申込書を補充していると、背後からまた低音が降ってきた。「朝比奈」振り向くと、所長がカウンター越しではなく、ちゃんと仕事の距離で立っている。目は鋭いまま。手には鍵束。「昨日のLINE、既読だけだったな」……そこ拾うんすか?「すみません、夜遅くて……」「問題でもあったか?」真顔。氷みたいな目で、聞いてくる内容が小学生。(いや、問題って……何!?)「問題は……ないです。ただ……」「ただ?」「……意外すぎて、びっくりしました」所長は一拍置いて、首を少しだけ傾けた。「意外か?」「意外です」「そうか」そこで終わる。終わるんかい!私は耐えきれずに言ってしまった。「所長、電車で食べるんですね」「うん」「……家まで我慢とか」「しない」「……子どもみたい」言った瞬間、やばいと思った。こういうの、地雷だ。氷結されるやつ。でも所長は怒らなかった。ほんの少しだけ、口元の影が揺れた。笑うのを堪える時の、あの感じ。「チョコは、食べるだろ」(だろ、じゃない)「そういうこと言うの、反則です」「何が?」「自覚ないんですか?」「ない」鈍感暴力。私はここで、心臓を撃ち抜かれた。そして追い打ちみたいに、所長が鍵束を差し出して言う。「このあと内見二件。朝比奈、案内できる?」──仕事に戻すのも暴力。私は笑顔を作り、鍵を受け取った。「……はい。行けます」(行けるけど、今の私の心拍数も確認してください)この鍵束を受け取った瞬間、視線を感じていた。振り向かなくても分かる、あの“近い気配”。──榊くんが、笑っていない。

  • 私の男運、この人に全振りしてたらしいよ。〜クズばっかり寄る原因、ここにあり!〜   呼吸の仕方

    「朝比奈」背後から落ちた低音で、背筋が勝手に伸びる。氷室所長だ。笑わない。褒めない。雑談しない。スーツの選び方が皇帝で、店の空気を静かに支配している。「この申込、保証会社の承認待ち? 連帯保証人の収入証明、揃ってない」「はい、今お母様にお願いしてて——」「電話。いま。『今日中に』って言え」「……はい」所長は、それ以上言わない。怒ってるのか、淡々としてるだけなのか、分からない目。私生活は全く見えない。指示がいつも最短で、結果だけ出るのが悔しい。プロだ。閉店後。ようやく電話が切れた瞬間、私は小さいチョコの箱を所長に渡した。今日、契約が一件決まったのは所長の一言が効いたから。「お疲れさまでした。今日、助けていただいたので」所長は一瞬だけ箱を見て、いつもの無表情で言う。「気を遣うな」そう言いながら、受け取る。受け取るんかーい。っていう混乱を残して。その夜。スマホが震えた。『チョコありがとうございます!いま電車の中で食べてます!めっちゃ美味しいです!』……え?今、電車?電車の中だって?あの“氷の皇帝”が?人の内見ルートと鍵の在庫には鬼みたいに厳しいのに、チョコは待てないの?私はそのまま固まって、既読だけ付けた。

  • 私の男運、この人に全振りしてたらしいよ。〜クズばっかり寄る原因、ここにあり!〜    

    コピー機じゃない。オフィスでもない。物件資料のファイルを覗き込む角度。PC画面の横に立つ時間。その全部が、“距離”になっていく。「この条件、いけます?」と聞く声が、背後から落ちる距離。一歩、半歩、気づけば私のテリトリーの内側に、当たり前みたいに入ってくる。「朝比奈さん、ここ、僕が入力しときますよ」手伝いの言葉の形をした、侵入。私は笑顔の筋肉だけ動かした。「うん、大丈夫。自分でやるから」柔らかく、でも線を引く。すると榊くんは、ほんの一瞬だけ黙る。傷ついた顔をする。──そういう顔が、上手い。「あの……嫌だったわけじゃ、ないの。私ね、勢いでやっちゃいたいの」嫌だったわけじゃない、じゃない。近いのが嫌だ。境界線を踏まれるのが怖い。私は言えない代わりに、魔法の言葉を使う。「でもありがとう。助かります」言った瞬間、自分の喉が苦くなった。助かるのは私じゃない。彼が“良い人”のままでいられるだけだ。榊くんが、小さく息を吸う気配がした。見ないまま、“気づいた”だけ。(気づかなくていいのに)私の胸の奥が、きゅっと縮む。平常運転の仮面の下で、肺だけが先に逃げようとする。──そして私は、まだ知らない。この人が欲しいのは「私の笑顔」じゃない。私の“境界線を越えた先”にある安心だ。

  • 私の男運、この人に全振りしてたらしいよ。〜クズばっかり寄る原因、ここにあり!〜    

    彼の画面に映っていたのは、物件じゃなくて──彼の私生活だった。休憩中、ふと開いたSNS。ストーリー。夜景。ワイングラス。指先だけ写ったツーショット。タグも名前もないのに、“恋人がいる人”の空気だけは、あまりにも明確だった。(……いたんだ)冷水を浴びた心臓が、きゅっと締まった。反射的にスクショを撮って画面を閉じた。スクショは消さなかった。消す理由が、私にはまだ見つからなかった。気づいた瞬間、頭の中で何かが静かに閉まった。扉というより引き戸。音も立てずに、すっと。私は何も言わない。言えないんじゃない。言う必要がない。だってここは職場で、私は社会人で、彼の私生活は彼のもので。そうやって、今まで何度も自分を守ってきた。だから私は、その後、いつもどおりに振る舞った。いつもどおりに微笑んで、いつもどおりに「助かりました」と言って、いつもどおりに仕事を回した。──“いつもどおり”は、距離を取るための仮面だ。“いつもどおり”を完遂した私、偉い。全人類、今の私を、ベッタベタに褒めて。なのに。次の日から、榊くんが近くなった。前はこんなこと無かった。多少近くても、本当に身体と身体があと1ミリで触れそうなところになんて、榊くんは来なかった。榊くんは、私を混乱させる天才だ。そして混乱した人間から、境界線は剥がれる。

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status