共有

第3話

作者: ご飯ちょうだい
後部座席の窓も半分ほど開き、よく知る顔があらわれた。みんな普段、祐大とつるんでいる友人たちだ。

彼らは詩織の言葉に笑いだし、雨の音に混ざってからかう声が聞こえてきた。

祐大は傘を手に持ち、車から降りてきて、慌てずゆっくりと私の前まで来ると、ハンカチをさし出した。

「遅れてごめん。

これで拭いて。それから手続きに行こう。負けた分の2000万は俺が代わりに払っておくよ」

私はそれを受け取らなかった。

ただ、目を真っ赤にして、祐大を見つめた。

「つまり、あなたは早くに到着していたのね。

そしてあの人たちと一緒に車の中にいて、私が寒さで震えながらあなたを待つ様子をずっと見ていたんだ?」

祐大は少しソワソワしていた。

彼は私の濡れた髪を拭こうと手を伸ばし、優しい声で私をなだめようとした。

「9時に到着したよ。

俺もすっげえ怒ってたんだ。昨日君を大事にしていないみたいなこと言われたから。ほら、こういう態度こそ猫や犬に対する態度って言うんだぞ。今までこんなこと紬にしてこなかっただろう?だから、もう怒らないで、中に手続きに入ろう、な?」

私の濡れた髪を拭こうとした彼の手を、私は掴んで止めた。

そして彼を見つめた。

寒かった。

全身が冷えて、思わずガタガタと震えてしまった。

「私は、あなたがもし遅れてきたら別れるって賭けたの。知ってるでしょ?

あなたと結婚はしない。他の誰かを見つけてちょうだい」

そう言い、傘を持ってその場を去ろうとした。

しかし傘を奪われて、近くにあった水たまりに捨てられてしまった。

「なにが他の誰かを見つけろだ!言っただろう、負けた分の2000万は代わりに払うって。

一体、何にこだわってるんだよ!」

私は首を横に振った。

「止めないでよ、意味ないから。

会社に行かなきゃ。来週月曜日から向こうでの仕事が始まるの」

祐大は私の言葉を聞いて、可笑しく思ったらしい。

「まだ駐在のこと言ってんの?少ししたら、きっと電話がかかってくるぞ」

彼がそう言ったそばから、岡崎社長から電話がかかってきた。

「桜井さん、上からの指示で、駐在の話はなしになった。

それに、君には仕事を辞めてもらうように私から伝えろと指示があったんだ。退職金は会社の規定の最高額が支払われる。君にはもうこの会社で働いてもらいたくないんだと。もしかして、誰かを怒らせたのか?」

その言葉に頭の中が真っ白になった。

私は彼に返事することなく、呆然としたまま電話を切った。

この時、祐大が近づいてきて、私の手をとり、市役所に入ろうとした。

私は足を止めた。

「あなた、私の駐在行きを取りやめて、クビにさせたの?」

まるで何事でもないかのように、彼はただ笑った。

「悪いのか?これは詩織の提案だぞ。

彼女が、君は最近きっと仕事のストレスが大きいから、俺と別れたいって言い出したんだろうって言ったんだ。俺たちに君の少ない収入が必要なわけでもないし。ちょうど、俺、紬の会社の会長と知り合いになったから、昨日の夜、君の負担を減らすためにも、解雇してくれって頼んだんだよ」

私はその言葉にショックを受け、彼の手を振りほどいた。

「なんで私に一言もなく、勝手に決めるわけ?」

「別に伝えるまでもないだろ、大した仕事じゃなかったんだから。一カ月にたった3、40万だろ?暇なら俺んとこで働いたらいいじゃないか。今の給料の二倍、いや、十倍払うからさ」

私は完全に失望してしまった。

祐大の服の袖を掴み、声を絞り出し、問い詰めた。

「私がどれだけ苦労して今の仕事を見つけたと思ってるの?

毎日朝早くから夜遅くまで必死に働いたの。もう少しで中央区での巨大プロジェクトを任されるところだったのよ。年末……年末にはプロジェクトマネージャーになれたのに!」

祐大には私のこの苦しみが理解できない。ただ、私が取るに足らないことで喚いているとしか思っていない。

「はあ、そんなにその仕事にこだわるってんなら、あとで電話して、年末と言わず、すぐにでもそのプロジェクトマネージャーに昇進させるよう伝えるよ」

彼は軽々と、傲慢な顔つきで私にそう言った。

目の前にいる彼が知らない人のように感じた。今日初めてこの人の知らない一面を知ったようだ。

私が黙っているので、私の怒りがおさまったと彼は思ったらしい。

そして彼は呆れたようにため息をついた。

「これでいいか?そろそろ手続きしに入りたいんだけど。

俺からしてみれば、君は家でしっかり結婚の準備をしているべきだよ。いくら必要なのか言ってくれれば、俺が渡すし。それで詩織が紬のことを金にがめつい人間だって言うわけだよな。その会社のプロジェクトマネージャーの給料で、お前が納得できるとか……」

バシンッ!

私は顔をあげ、祐大の頬を思いきり引っぱたいた。

この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード

最新チャプター

  • 私は自分が後悔しないほうに賭ける   第9話

    私は岳の傍まで行き、二人のピリピリした空気を感じ取った。何があったのか尋ねようと口を開いた瞬間、祐大のほうが先に話し始めた。「来たんだね。インタビューは予定を早めて始めてもいいだろうか?みんなスケジュールがきついから」私は異論はなく、頷いた。ビジネス界の大物のスケジュールが分単位で詰まっていることは常識だ。予定を早めて取材をするのも規定の範囲内と言える。それに、そもそも私は今日、仕事のためにここに来たのだから。岳は私のほうへ手をさし伸ばし、軽く私の手の甲を叩いた。「行っておいで、ここで君を待っているから」私は頷いて、取材用のノートを手に、祐大の後ろから貴賓室へと向かった。数歩進むと、彼は突然顔を横に向けて、声を抑えてこう言った。「君の婚約者は度量が大きいんだな。元カレの俺と二人っきりになるのも気にしないのか?」探るような言い方に皮肉を感じ取ったが、私はただ淡々と一言返した。「彼はずっと私の気持ちを大事にして、仕事に理解を示してくれているの。公私混同はしないのよ」私のこの言葉が祐大を黙らせた。彼はぎゅっと拳をつくり、それ以上何も言わなかった。そして黙ったまま、貴賓室のドアを開けた。「高峰社長、それではインタビューを始めましょうか」さっき私が言った公私混同しないという言葉が彼の胸に刺さったのだろうか。祐大は私を困らせてくることはなかった。インタビューを受けている間、彼はずっと集中して受け答えし、本筋から逸脱するような話をすることはなかった。ただ、終わって去る時に、祐大は突然私を呼びとめた。「紬、さっきは俺にたくさん質問しただろう、今度は俺が尋ねてもいいか?」「どうぞ」彼は何度も唾を飲み込み、悔しそうに言った。「どうしてあいつで、俺じゃないんだ?俺のどこがあの男に劣ってる?どうして俺たちじゃダメなんだ?」私は冷たく鼻で笑い、取材用のノートを閉じた。「高峰社長、本気であなたが私を大事に思ってくださっているのなら、そのような質問はしなかったでしょう」そう言い終わると、私は立ち上がってドアを押し開けようとした。「紬、俺たち本当に……少しも可能性は残ってないのか?」私は首を横に振った。「少しもありません。私はもう前を向いて歩いています。あなたも同じように、振

  • 私は自分が後悔しないほうに賭ける   第8話

    海外へ行ってから、私は祐大とは、ずっとつかず離れずの距離を保っていた。彼は1ヵ月か2ヵ月おきに、メッセージを送ってくる。【最近こっちは寒くなってきたんだ。君のほうも寒い日は多めに着るようにね】と、メッセージを送ってくることもあれば、私たちが結婚して暮らす予定だったあの新居の写真を送ってくることもあった。彼も多く語ることはなく、写真を送ってくるだけだった。まるで以前交わした約束を今でも一人で守っているかのようだった。彼からメッセージが届くと、私は数日から半月ほど経って、短く返事をしていた。【どうも】【元気よ】【あなたもね】祐大もそんな短いメッセージにしつこく何かを返すことはなく、二人海を隔てた薄い関係が続いた。経済新聞には、いつも高峰グループの情報が載っていた。ある時、彼は新聞の一面を飾ったり、ある時は彼がインダストリーサミットに出席した際の写真が掲載されたりもした。以前の彼はインタビューを受ける時にはいつも、無意識に偉そうな雰囲気を醸し出していた。ここ2年でその雰囲気はだいぶ消えていた。前回見たインタビュー動画では、司会者が経営管理の核心について尋ねていた。祐大は数秒ほど沈黙してから口を開いた。「大事にすることです。規則を重んじ、一人一人を尊重するんです」スマホ画面をタップする指を一瞬止め、お勧めで上がってくるニュースを閉じ、引き続き自分のインタビュー構成案を書いた。2年間の課程を終え、私は指導教授に紹介してもらったこの国で最も有名な経済関連メディアに就職した。そして本格的にデプスインタビューを行うジャーナリストとして活動を開始し、主に金融・経済分野を専門とした。専門性に加え、業界の暗黙のルールに果敢に挑む鋭い質問を駆使したことで、私はたちまち業界内で頭角を現した。来週の業務予定には、太字で書かれた重要な仕事がある。【高峰グループCEO・高峰祐大氏の特別インタビュー】私は画面に映るその名前を見て、パソコンを閉じた。そのインタビューは、今回のレセプションが終わってから2時間、時間が取ってある。しかし、私は少し用があって、遅れてしまった。会場に到着した時には、レセプションはすでに後半だった。シャンパンタワーがシャンデリアの光をキラキラと反射する中、私は大勢の中に祐大を見つけた

  • 私は自分が後悔しないほうに賭ける   第7話

    祐大は私の言葉を聞くと、背中を丸めて立ち上がり、外へ出ようとした。「祐大!」私は突然彼を呼びとめた。その瞬間、暗く落ち込んだ彼の瞳が輝いた。「家の鍵を返してくれる?2ヵ月したらこの部屋は退去するから」その言葉に彼は落ち込んだ様子で頭を重たく下げ、ポケットから鍵を取り出して、玄関にあるシューズボックスの上に置いた。それから玄関のドアが穏やかに閉まった。カチャっという音とともに、部屋の中は静かになった。彼とは6年付き合い、結婚する手前までいった。やはり、私は涙を堪えきれなかった。それでもすぐに涙を拭った。とてもつらかったが、絶対に後悔したりしない。別れてから3ヵ月、家の中はうっすらと埃が積もり、長期間置かれていた日用品の多くもなんとなくカビっぽい。必要なものは一気に全て買い替えた。翌日の朝、私は付近のスーパーへ買い物に行った。レジを出たところで、詩織に出くわした。互いに客としてここにいたのではない。詩織はスーパーの店員の制服を着用し、レジに立って、ある客のカゴの中にある商品をバーコードスキャナでスキャンしていた。視線が合った瞬間、私たちはともに一瞬驚いた。すると彼女はすぐに顔を下に向け、バーコードスキャナを持って私のカゴの中にある商品をスキャンし始めた。彼女はずっと顔をあげることはなかった。私も黙っていた。そして暫くしてから、詩織は顔をあげて、目を真っ赤にさせて私を睨みつけてきた。悔しそうな声に、トゲトゲしさが混ざっている。「いい気分でしょうね?あなたが去ってから、すぐにうちは大変なことになったわ。あなたはいいわね。約束通り帰ってきたのでしょう?祐大が私を助けてくれないのはまだしも、毎日毎日あなたを追いかけ回してさ。口には出さないけど、心の中ではスッキリして、ざまあって思ってるんでしょうね」私は無表情で、淡々と言った。「別にいい気味だなんて思ってないけど。私は彼とは完全に別れた。あなたの家についてだけど、ビジネスの世界には勝ち負けが存在するって、それは当然のことでしょ」私は視線を詩織に向けた。彼女が着ている服の袖は毛玉ができ、スニーカーには泥がついている。また、髪は手入れがされておらず、枝毛もできてパサパサだった。「以前あなたが使ってきた姑息な手段、私にと

  • 私は自分が後悔しないほうに賭ける   第6話

    私と祐大はソファの両端にそれぞれ座った。私たちの距離はローテーブルの半分ほどの長さしかなかった。祐大が先に口を開いた。「ごめん、あの時は君で賭けをするべきじゃなかった。それに、君の事を俺が勝手に決めるべきでもなかった」私は首を横に振った。「いいよ、私だってあなたに謝らなきゃ。何があったとしても、人を叩くなんて間違ってた。頬……まだ痛む?」祐大はまだ涙が滲んだ瞳で、私を見つめた。「そんなのとっくに痛くないさ。紬、離れてからまだたった3ヵ月だっていうのに、俺たち、なんでこんなによそよそしくなったんだ?天野さんの家を買ったんだ。見に行ったよ。部屋中君が綺麗に飾りつけてくれたんだね。カーペットも君が選んでくれたんだ。リフォームの設計図だって、君が何度も満足できるまで手直ししてくれた。本当にすまなかった。君があんなに心血を注いで努力してくれたのに、からかうような真似をして。俺たちの関係まで賭けにしたのも間違ってた」私は淡々と笑った。「いいよ、もう過ぎたことだし」祐大は、その言葉に刺激を受けたように勢いよく顔をあげて、焦った声で言った。「もう過ぎたことってどういう意味だ?俺たち、こんなんで終わるわけにいかない!紬、俺が間違ってた!俺が君を大事にしてなかったって、あの言葉の意味はもう理解したよ。すぐに、もとの会社に復帰できるように手配するから。今後二度と君の仕事に口を挟んだりしない。それから、あのグループの誰にも、俺たちの関係を賭けたり、金にがめついとか言わせないから」私はため息をついて、彼に視線を向けた。ただ、とても残念に思う。「祐大、もう遅いの。私はもうあなた達からどう見られるかなんて、どうでもよくなった。実際、私は昔から誰から自分をどう言われようと気にしてなかった。だから、以前彼らが何度も私をからかって楽しんでも、本気で気にしたりしてなかったの。私はただあなたの態度を気にしていただけ。何度もあなたに言ったけど、まったく相手にしてくれなかったじゃない。そして、あなたがやっと理解した時には、私はすでにあなたから離れることに決めてしまった」その言葉に顔を真っ青にした彼を見つめ、私ははっきりと伝えた。「高峰祐大さん、私、本気であなたと別れるつもりよ」彼はその瞬間言葉に詰まり、まだ何か言い

  • 私は自分が後悔しないほうに賭ける   第5話

    5時間後、飛行機が目的地に到着した。スマホの電源をつけて、ロックを解除したとたん、一気に十数通の未着信通知が飛び込んできた。大半は祐大からのものだった。いくつかは知らない番号からかかってきたものだった。本来、泊まる宿を探そうとスマホを開いたが、知らない番号から電話がかかってきて、少し迷い、何度もかけてくるその電話に出ることにした。それは祐大といつもつるんでいる悪友からだった。「桜井さん、やっと出てくれた。繋がった!祐大、電話、繋がったぞ!どこにいるの?祐大があちこち君を探して……」彼がそこまで話すと、スマホを誰かにとられたらしい。そしてすぐに祐大の声が耳に入ってきた。「紬、帰ってこい、ちゃんと話し合おう!君の荷物はまだ家に置いてあるぞ。何も言わず、こんなふうにいなくなるなんて無責任だと思わないのか?それか、どこにいるか教えるんだ。今すぐそっちに行くから!」私はスマホを握りしめ、空港から遠く見える海を眺めた。私は前のようにトゲトゲした声ではなく、ただ落ち着いた声で話し始めた。「祐大、私は自分が無責任だとは思わない。ただつらかった。気持ちを落ち着かせるための場所を見つけたかったの。私たちお互いに距離を置くべきだと思う。帰ったらこっちから連絡するから、いいでしょ?」「ダメだ!」祐大はほぼ私の声が聞こえた瞬間に、怒鳴るようにそう返してきた。彼はどうやら勢いよく立ち上がったらしい。「気持ちを落ち着かせる?どこにそんな必要があるっていうんだ?俺が間違っていた、それでいいだろ?今すぐどこにいるのか教えてくれ。すぐに行くから。直接会ってはっきり話そうじゃないか!」私はもう呆れてため息をついた。「私からのお願いよ、いいでしょ?」祐大は突然、口を閉ざした。私は彼と6年付き合った。高峰家はA市で圧倒的な影響力を持っている。当初、天野詩織に連続で、いくつものプロジェクトを横取りされ、私は借りている部屋の床にしゃがみ込み、悔しくて声をあげて泣いた。その時でさえ、彼に「お願い」したことはなかった。そして今、私は初めて彼にお願いした。しかも、その願い事は、私から離れてくれという頼みだ。祐大は指の関節が白くなるほど、力を込めてスマホを握りしめ、暫く経っても一言も発しなかった。「3ヵ月。

  • 私は自分が後悔しないほうに賭ける   第4話

    「金にがめついですって?クソくらえ!」そう罵ると、スカッとした。傘など気にせず、私は大雨の中へ歩き出した。車で待機していた祐大の友人たちは、彼が私にビンタされたのを見ると、続々と車から降りてきて、心配そうに彼に声をかけた。詩織はというと、誰よりも早く彼のもとへ駆けつけていた。そして私の背中に向かって、大声で怒鳴ってきた。「ちょっと、桜井さん、あなた頭でもおかしいんじゃないの!祐大はあなたにとっても良くしてあげてるっていうのに、その気持ちを理解しないばかりか、手まであげるなんて!私が……」私は立ち止まり、振り返って嘲笑した。「またなの?また私が取ってきた仕事を誰かに頼って横取りする気?あんた、これでもう何度目?親に頼りっぱなしだし、それだけじゃなく、私と祐大を仲違いさせようとして、あんたって本当に何の能力も持たない人間なのね。ねえ、そこのお嬢様、帰ってお宅の天野家の経済状況でもお尋ねになったらいかが?ちゃんと家の経済状況を知ったら、焦ってもう、私で賭けして遊ぶ暇はなくなると思いますけど?」私はそう言葉を吐き捨てると、引き続き前を向いて歩いていった。後ろから突然、祐大が私を引き留める叫び声が聞こえてきた。「紬!」私は立ち止まらなかった。「紬!聞こえてないのか、止まれ!今すぐ戻って、手続きに行けば、何もなかったことにしてやる。もしそのままいなくなるってんなら、俺たちは本当にこれで終わりだぞ。後悔しても、一生お前と結婚なんてしてやらないからな!」祐大が叫び終わると、一台のバスがちょうどバス停に到着した。そのバスの行先など見もせず、私はさっさと乗り込んだ。祐大は後ろで、恐らくまだ何か叫んでいたことだろう。ドアが閉まり、私には何も聞こえなかった。それに、彼が何を言っていようが、どうでもいい。家に帰ると、退職を要求するメールがすでにメールボックスに届いていた。それに伴う退職金の明細が添付されていた。岡崎社長からは意味不明なメールが二通届いていた。【すぐに、高峰社長に謝罪したほうがいい】【彼は本当にお怒りのようだ。本気で桜井さんがこの業界で仕事できなくさせるかもしれない】返信はせず、スマホを放り投げて、荷造りに集中した。私自身、どこへも行くあてなどないが、ただただ、苦しかった

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status