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第29話

Author: 春うらら
車を走らせながら、涼介の心は怒りに満ちていたが、同時に、言葉では言い表せないような不安と茫然とした感覚もあった。

結衣が、あの証拠をネットに公開したということは、明らかに涼介との関係破綻を公にし、一切の余地を残さないつもりなのだろう。

まさか結衣は……本当に自分と別れる決心がついたのか?ただの駆け引きではないというのだろうか?

涼介はこれまでずっと、自分がどんなに結衣を傷つけようと、彼女が自分から離れていくはずがないと思い込んできた。

しかし、この瞬間、涼介はその確信が揺らいでいるのを感じていた。

車が結衣の住むマンションの前に停まった後も、涼介はなかなか車から降りることができなかった。

自分の心の中にある感情が何なのか、彼自身にもよく分からなかった。

怒り、不安、混乱……さまざまな感情が入り混じっていた。

来る前は、結衣になぜあんなことをしたのか問い詰めるつもりだったのに、今は、なぜか彼女の部屋へ上がる気がしなかった。

突然、助手席に置いていたスマホが鳴った。

相手が篠原玲奈だと分かり、涼介は眉をひそめて通話ボタンを押した。

「社長、どうしよう?今、ネットは私を罵る言葉で溢れてる……それに、家の住所を特定して、死んだネズミを送りつけるって脅迫してくる人もいて……すごく怖いの……こっちに来てくれない?」

玲奈の声は涙声で、震えていて、明らかに本気で怯えている様子だった。

普段の涼介なら、きっと優しく玲奈をなだめて、すぐに駆けつけただろう。

しかし、今の涼介は……自分自身のことで落ち着かず、玲奈のことまで気にかける余裕はなかった。

「今は手が離せない。もし怖いなら、ひとまずホテルにでも泊まるか、中野に電話して、新しい住まいを手配してもらえ」

電話を切った途端、すぐに別の着信があった。

相手が中野直樹だと分かって、涼介は怒りを抑えながら電話に出た。

「何だ?」

「社長、ネットの件が大変なことになっております。どうやら、社長と長谷川本家との関係を暴き出した者がいるようで……先ほど、本家の人たちがお母様の家に来て、お母様を連れて行かれたとのことです……」

涼介の顔色が一変し、即座に言った。

「分かった。すぐにそちらへ向かう」

電話を切ると、涼介は沈んだ眼差しでマンションの上階を一瞥し、すぐに車のエンジンをかけて長谷川本家へと急いだ
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幸子
有能な弁護士だってことをどうしても忘れているのか不思議。徹底的に涼介を叩きのめしてください。
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