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何となく後者の意味合いが強い気がした
「…………す、少し……そのピリッと、して……苦しい、です」
言うなり恥ずかしそうに顔を歪めた
そんな風に思ってしまう自分はおかしいのかも知れないと心の片隅でもう一人の自分が警鐘を鳴らす。
今まで女性と付き合ってきて、これほどまでに支配したいと感じさせられた
それでそう自覚してしまうと言うのもおかしな話だとは思うけれど、実際
「……バーベキューの網と結束バンド?」 結葉が中に入ったものを見て小首を傾げるのを横目に、「それ使って飼育ケース仕上げるからな。楽しみにしとけ」とニヤリと笑ってから、「あー、あと……回し車なんかも買ってきたぞ」と、ペットコーナーから探してきた品々をケースから取り出しては床に並べていく。「餌、回し車、トイレ、トイレ用の砂、巣箱、餌入れ、それと吸水ボトルな……。あー、あとは床材も足り臭ぇから買ってきといたぞ」 床材の入った袋をポンポンと軽く叩きながら「雪日の飼育用品一式、こんなモンで足りるっけ?」と付け足しながら顔を上げたら、結葉の顔が思いのほか近くてドキッとさせられる。「十分すぎるくらい。……想ちゃん、……本当に有難う」 言って、感激のためかウルッと涙目になった結葉を間近に見てしまって、想は(何故そこで涙腺を緩ませる!)と内心慌てまくりだ。 結葉はすごく整った顔をしているから、瞳を潤ませられたりしたらかなりのパンチ力がある。 幼い頃から見慣れているから少しは免疫があるつもりの想だったけれど、長いこと会っていなかった上にこういう不意打ちはやはりまずかった。 ブワリと身体の中の血が沸騰するような錯覚に襲われた想は、その空気を一新するみたいに「伊達に芹の兄ちゃんやってねぇかんな。大いに褒めろ」 努めて明るくおちゃらけて見せたら、結葉が「うん、そう……だね」とポロリと涙を落として。(あー、俺のバカ!) 対応を間違えたことを後悔しまくりの想だ。 きっとこういう時は何も反応せずに淡々と作業を進める、が正解ルートだった気がしたけれど、後の祭り。 泣き虫結葉を前に、(ちっさい頃は俺、コイツが泣いた時、どうしてたっけ?)と頭をフル回転させてみた。 けれどサッパリ対処法が思い出せなくて弱ってしまう。 結果、ここは結葉の涙には気付かないふりで行こう、と今更ながらスルー作戦を敢行することにした想だ。 「カッターナイフとか取ってくるな」 言って立ち上がると、想は結葉のそばをさり気なく離れる。 どうか戻ってきた時には結葉の涙が乾いていますように、と祈りな
「結葉と出かけんの自体すげぇ久しぶりだしさ、高速乗ってドライブすんのもいいよな?」 生活圏から離れたところまで出向こうと示唆すれば、きっと結葉の不安は薄らぐだろう。 そう思って問い掛けたら、結葉が「いいの?」と想を見上げてきた。「いいも何も……俺が行きてぇんだって! とりあえずは、一番最初にお前の服買って着替え済ませような? ――制服のままじゃ動きづれぇだろ」 言って、想は隣の市にある大型ショッピングモールに行けば大丈夫かな、と目星をつける。「想ちゃん、……有難う」 結葉がそんな想の服をギュッとつまむように握ってきて。 想は幼い頃の結葉を彷彿とさせられた。 それと同時。大切な幼なじみをこんなにも萎縮させてしまった御庄偉央のことを心の底から腹立たしく思った想だ。「行こっか」 想がいそいそと車のキーを手にしたところで、結葉が「あ、でも……」と心配そうな声を出す。(まだ何かあんのか……?) そう思って見つめた先、結葉が雪日の入ったトートバッグを手元に引き寄せたのを見て、遠出する前にコイツを先に何とかしてやるべきか、と思い至った。 でないと、きっと結葉はハムスターのことを気にして買い物に集中出来ないだろう。「結葉、俺、ホームセンター、先に行って来るわ。お前は…………どうしたい?」 もちろん、留守番しててもいいぞ?と軽い感じで想が付け加えると、結葉が雪日と想を交互に見遣って。 ややしてポツンと「お留守番、させてもらってもいい?」と聞いてきた。 想は予想通りの返しに、「もちろん構わねぇよ」と答えながら、結葉にテレビのリモコンを渡す。「あんまし面白いのやってねぇかも知んねぇけどさ。テレビでも観て待ってて? 超特急で行ってくっから」 ホームセンターまで車で五分とかからない。 衣装ケースとともに、バーベキュー用の網と結束バンドを調達して帰れば、雪日の飼育ケージぐらいはササッと作ってしまえるはずだ
「……ごめんね、想ちゃん。私、バイトとかしてちゃんと返すから」 眉根を寄せて想を見上げたら、一瞬だけ押し黙った想だったけれど。 そこは結葉の性格を熟知した幼なじみ。「返さなくていい」とか言わずに、「ん、それで良いよ」と再度頭を撫でてくれた。 それが、結葉にはとても有り難かったのだ。 マンションを出るとき、結葉が手に出来たのは雪日入りのキャリーと、封の開いた彼のご飯。 それから首輪がわりに偉央から持たされていたGPS機能付のキッズ携帯と、身体を隠すために使ったバスタオルのみ。 キッズ携帯は、想の車に乗り込む直前にバスタオルに包んでマンションを出てすぐの植え込みのそばへ隠すように置いてきた。 コンシェルジュルームに置き去りにすることも考えた結葉だったけれど、それでは親切にしてくれた斉藤と白木に迷惑がかりそうで申し訳がないと思ったから。(でも……結局私があのマンションを逃げ出した時点で、彼女たちが無関係ではいられないこと、明白だよね……) あのマンションを出入りする人間が、正面入り口にいるコンシェルジュらの視線をかいくぐることは構造上不可能なのだから。 ましてや結葉がキッズ携帯を置き去りにしたのはエントランスを出てすぐの辺り。 偉央が彼女たちの関与を疑わないわけがない。 でも――。 「想ちゃん、偉央さんは……コンシェルジュの女性たちを問い詰めたりすると思う……?」 俯いたままポツンと。 半ば独り言のようにつぶやいたら、想がほんの少し考えてから「しねぇんじゃねーか?」と応じてくれた。「俺、お前の旦那のことはよく知らねぇから絶対とは言い切れねぇけど。……あの人、プライド高いタイプだろ? そういう人間が妻に逃げられたってぇのをわざわざ自分から周りに触れ回るようなことはしねぇ気がするんだわ。
「私と偉央さんの関係が歪だと気付いた友人たちと、どんどん連絡が取れなくされて……。私、気がついたら孤立無縁になちゃってたの」 結葉が苦しそうな顔をしてしまったからだろう。 想が何か言いたげな表情をしてじっと結葉を見つめてきた。 けれど、結葉が何も言わずに最後まで話を聞いて欲しいとお願いしたから。 想は諸々の感情をグッと我慢して、聞き役に徹してくれている。「偉央さんと、双方の両親以外連絡が取れなくされてしまって。お父さんやお母さんには心配掛けたくなかったから私、偉央さんとのこと誰にも相談できなくておかしくなりそうだったの。……そんな時だよ。想ちゃんと再会したの……」 そこで目の前に座る想をじっと見つめると、結葉は横座りをやめてほんの少し後ろに下がる。 テーブルから距離をあけて姿勢を正座に正すと、三つ指をついて想に頭を下げて。「想ちゃん、今日は本当に有難う」 と、改めて礼の言葉を述べた。「えっ、おいっ。結葉っ」 いきなり結葉がかしこまってそんなことをしたものだから、想は慌てて立ち上がると結葉のそばに膝をつく。「頭上げろ! ――全部! 俺がやりたくてやったことだ!」 想は心外だと言わんばかりの口調でそう言ったけれど、結葉にしてみれば全てが奇跡だったのだ。 あの日、実家でたまたま想と再会できたことも。 想が、両親でさえ見過ごしていた結葉の異変に気づいてくれたことも。 昔と変わっていなかった携帯番号を差し出して手を差し伸べてくれたことも。 想との出会いがなかったら、きっと結葉は今でもあのタワーマンションの一室で、夫に怯えて縮こまっていたと思
「私ね、あの雪の日の翌日から夫に監禁されたの……」 結葉が一息に告げたら、想が息を呑んだのが分かった。「想ちゃんも気づいたよね? これは、そのとき足枷を付けられてた痕」 足首をさすりながら言ったら、想が思わず、と言った調子で腰を浮かせて苦しそうに眉根を寄せた。「結葉、それって俺がっ……!」 旦那を牽制したせいだよな!?という声が聞こえてきそうで、結葉は慌てて想の言葉を遮る。 あの雪の日、想は結葉を心配して夫の偉央に意見してくれた。 それが、偉央を焚き付ける火種になったのではないかと思ったんだろう。 だけど、あの直後、偉央はちゃんと結葉の訴えを信じて怒りを収めてくれたことを、結葉は覚えている。 だから、偉央を壊す決定打になったのはそれじゃない。 きっと、一度は信じようと思った結葉が、偉央を裏切ったと思わせてしまったあのカップたちこそが真の原因なのだ。 だから――。「想ちゃんのせいじゃないよ? 全部私が蒔いた種だから。――きっと言いたいことは沢山あると思うけど……お願い。最後まで……黙って私の話を聞いて?」 言って、じっと想を見つめたら、こちらに半身乗り出していた腰を落ち着けて、想が一言「……分かった」と答えてくれた。 偉央には言えなかった、「私の言葉を聞いて欲しい」と言う意思表示が、想にはすんなり出来てしまえたことに内心驚いた結葉だ。 きっと想がまとうオーラが、結葉を威圧してこないからだろう。 結婚して程なく始まった、夫からの精神
「それが結構策士な女子でさ。わざわざ家族が揃ってるような夕方に来て……親父とお袋が見てる目の前で『想くんお誕生日おめでとう! 好きです!』ってやられちまったら恥かかせるわけにもいかねぇし、とりあえず一旦は『おう、有難う』って言うしかねーだろ?」 それまでは〝山波くん〟だったのが、わざわざ親しげに〝想くん〟と呼びかけてきたところにゾワリときた、と想が苦笑して。 結葉の知る山波想という幼なじみのお兄ちゃんは、見た目こそヤンチャ気で怖い印象を持たれがちだけれど、中身はとっても優しくて思いやりがある男だから。 人前で女の子を袖にするという選択肢はなかったんだろうな、と思って。 結葉は「そうだね」と相槌を打って頷いた。 想は結葉が自分を肯定してくれたことにホッとしたように表情を和らげると、握ったままだった結葉の手に気付いて「すまん」と言いながら離してくれる。「何ちゅーか、あのまま実家にいたらまた同じよーなことがあった時、俺、すぐに対応出来なくてダメだなって思ったんだ。――それが、俺が家を出てここを借りた理由」 言って、想はどこか悲しそうな顔をして小さく吐息を落とした。 結局、舞衣歌とは後に二人きりで話す機会を設けて、「君とは付き合えない」と断りを入れた想だったけれど。 一旦は受け入れたように思わせたことが悪かったんだろう。 しばらくの間、諦めきれなかったらしい彼女に、半ばストーカーのように付き纏われて大変だったのだ。 断りを入れた想を、「あの日、想くん、『有難う』って言ってくれたじゃない! 期待させといて酷い! 嘘つき!」と罵ったかと思ったら、今度は「お試しでもいいから」と縋り付くように譲歩してきた舞衣歌だ。 そんな彼女に、想は正直







