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第6話

Author: 卵とトマト
【でもその時、なぜか頭の中に瞳が浮かんだんだ】

たったそれだけの短い言葉なのに、私は涙が止まらなかった。

心変わりは人の本性だ。だから、誠実さこそが選ぶべき道。なのに、浩はその両者から前者を選んだのだ。

浩の日記の続きをもう読まなかった。読む必要なんて、本当にどこにもなかったから。

私は側にあったスマホを手に取り、親友の野村理恵(のむら りえ)に電話をかけた。

「あら!あの大忙しのあなたが、どうしたの?」

「理恵、お願い。離婚協議書を用意してくれる?」

私の真剣な口調を感じ取り、理恵は声色を落とした。「一体、何があったの?」

最近起きたことを全て話すと、理恵は長く沈黙した。

しばらくして、彼女は大きな溜め息をつき、静かに言った。「10年の付き合いが、こんな結末になるなんてね。ねえ、結局『愛』って何なの?」

私は唇を歪め、力なく笑った。「離婚、よ」

「そうよ、それがいいわ。自分を責めないで。あなたは悪くない。手続きは私に任せて」

電話を切り、ソファから立ち上がった。私は冷蔵庫からビールを何本か取り出した。

床に無造作に座り込み、窓の外のネオンを眺める。私の心も、その瞬間に消えた光のように冷え切っていた。

一本、また一本とビールを流し込み、頭をアルコールで麻痺させようとした。すると、意識がふらつき始めた。

浩が帰ってきたのは、その時だった。部屋の明かりがついた瞬間、視線が交差する。

赤く腫れた私の目を見ると、浩は少し戸惑った。ぐに私の手から酒を取り上げ、少し怒ったような口調で言った。「酒を飲むなと言っただろう?

お前、最近俺の言葉なんて気にもしてないだろ?

今回だけだぞ。二度とやるな!

早く顔を洗ってこい。話があるんだ」

そう言って浩は私を引っ張り起こし、洗面所の方へ追い立てた。

私は必死に足を踏ん張り、自分の頬を叩き、頭をすっきりさせようとした。

確かに目を覚ます必要があった。私も浩に、話さなければならないことがあったから。

洗面所から出ると、浩はソファに座り、何かを期待するような顔でこちらを見ていた。手には書類が握られている。

「美希、これを見てくれよ」

浩から名前を呼ばれて、私はその場に立ち尽くした。驚きで動きが止まる。

浩と付き合い始めてもうすぐ10年になるが、彼から嬉しそうに話しかけてきたのは、これが初めてだった。

「早くこっちに来いよ。一体何だと思う?」

我に返り、腑に落ちない気持ちを抱えたまま、私は浩の側へ歩み寄った。

近づくにつれ、鼻を突くほど甘ったるい香水の匂いが漂ってきた。

胃から込み上げる吐き気を押し殺し、私は静かな面持ちで浩を見た。離婚を切り出そうとしたその時、浩が手元の書類を差し出してきた。

その書類を見て、私はしばし呆然とした。なぜ、こんなことになるの?
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