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Unsong Work

Author: 宵更カシ
last update publish date: 2026-10-13 07:16:50

その日、僕の手は一人でに手紙を書き続けていた。

あの後、釣ったマグロを捌いて基地の皆で食べた。

巨大な魚体には脂の乗ったトロや中落ち、そして引き締まった赤身がぎっしりと詰まっていて、

「まさに黒いダイヤだ」

そんな驚嘆まで聞こえるほどだ。

寿司や刺身などを振る舞うと、見た目の称賛は味への絶賛に変わっていく。

「こいつは良い!」

「ツナってこんな美味かったのかよ!」

「もうレーションには戻れないぜ!」

僕も箸が止まらなかった。

しかし、これは僕の中に生まれた情熱の序章でしかない。

このマグロで戦争を止められるかもしれない。

そう思ったからだ。

そして手紙を書き終えて、郵便に出す。

日本からどんな返事が返ってくるのか、少し楽しみだった。

2週間ほどが経って、日本からの返信があった。

『紛争地でマグロ漁など、危険すぎる』

この字は会社の水産担当者からだろう。

ある意味で、真っ当な回答だった。

ここは紛争地。

安全とは程遠い環境だ、

マグロの味に酔っていたからか、現実を見れなくなってしまっていたかもしれない。

僕
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  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   Sunmalia Diary

     一通の手紙から始まった、絵空事のような作戦。 僕の上官がサマリア政府への説得に与えた時間は約三日。 今日がその三日目。 しかし僕は成果を出せていない。 マグロで紛争を終わらせる。書いた言葉の意味を冷静に考えてみたら、すっ飛んでいる。 でも、それを知った部下や上官は、皆が本気にしていて、「今日こそ釣れますよ!」「車、整備しといたんで乗ってください」「頼むぞ綱島!」 暖かい声援を送ってくれる。 どうして、そんな絵空事のような理想に付き合ってくれるのか。 僕にはどうしても希望が見いだせない。「元気ないな綱島大尉。何かあったか?」 上官も気遣ってくれるが、「今日も頑張ります。もし、ダメだったら」 弱気になっていたのか、言いかけて口を閉じた。「出発します。では」「……お前ならできるよ」「え?」「お前ならできるって言ったんだ坊ちゃん。美味いマグロ、期待してるぜ」 そう言って、彼は僕を送り出してくれた。 上官に連れられた釣り場でひたすら竿を投げる。 しかし一向に魚は喰い付いてくれない。「お願いだ! 釣れてくれ!」 海にひたすら叫び、願う。 僕が釣らなきゃ……せっかくの舞台が台無しになってしまう。 焦りが汗となって頬を伝う。 けれど僕の願いは虚しく、マグロは食いつかない。「なんでなんだ……何が違う!」 海から引きあがった竿を見ながら嘆く。 釣れっこない。 ふと、そんな諦めがこぼれそうになる。「……僕が諦めたら、ダメだ」 それは自分を奮い立たせるための言葉。 もうダメだ。おしまいだ。 言ってしまったら、それは本物になってしまう。 脊髄反射的な言葉だったとしても、刻印のように穿たれてします。 だから僕は竿を握り、再び海へ投げた。 これは僕に与えられた試練だ。 立ち向かう勇気——それを教えてくれた人に恥ずかしい姿は見せたくない。 昼間の暑さも、喉の渇きも、僕は忘れていた。 ただ無我夢中に釣りをした。 その瞬間は唐突に訪れる。「掛かったっ!」 必死に竿を立て、糸を手繰り寄せる。 絶対に外れるな……いいや外さない。 この糸は希望だ。 絶え間ない憎しみの連鎖を終わらせるための。 僕は一心不乱にマグロを自らの手へ手繰り寄せていく。 そして――「獲ったっ!」 水しぶきをあげ、水面から出てくる黒

  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   Unsong Work

    その日、僕の手は一人でに手紙を書き続けていた。 あの後、釣ったマグロを捌いて基地の皆で食べた。 巨大な魚体には脂の乗ったトロや中落ち、そして引き締まった赤身がぎっしりと詰まっていて、 「まさに黒いダイヤだ」 そんな驚嘆まで聞こえるほどだ。 寿司や刺身などを振る舞うと、見た目の称賛は味への絶賛に変わっていく。 「こいつは良い!」 「ツナってこんな美味かったのかよ!」 「もうレーションには戻れないぜ!」 僕も箸が止まらなかった。 しかし、これは僕の中に生まれた情熱の序章でしかない。 このマグロで戦争を止められるかもしれない。 そう思ったからだ。 そして手紙を書き終えて、郵便に出す。 日本からどんな返事が返ってくるのか、少し楽しみだった。 2週間ほどが経って、日本からの返信があった。 『紛争地でマグロ漁など、危険すぎる』 この字は会社の水産担当者からだろう。 ある意味で、真っ当な回答だった。 ここは紛争地。 安全とは程遠い環境だ、 マグロの味に酔っていたからか、現実を見れなくなってしまっていたかもしれない。 僕は執務机で頭を抱えてしまう。 戦争を終わらせられるかもしれないカードがあるというのに、それを突き返されてしまった悔しさ。 手札はあるのに、打って出れない無力さ。 僕は打ちひしがれてしまう。 「どうしたんだ? 浮かない顔して」 声を掛けてきたのは、釣りに誘ってきた上官だった。 「ちょっと手紙にショックを受けてしまって」 「なんだ? 本国の彼女に振られたか?」 茶化すようだが、コーヒーを置くと真面目な眼差しに変わった。 だからか。僕はすんなりと恥ずかしげもなく打ち明けてしまう。 「なるほど。この前のマグロを日本にも、ねぇ」 「はい。ぜひ、ここの海のマグロを輸出して届けたいと思ってまして。サマリアの人々の争いも資源の枯渇が根底の原因ですし」 上官が手紙を読んで置くと、 「この返信は、凄く現実的だよ。ここは紛争地で、安全に漁ができる環境じゃない」 「だったら戦争を終わらせて」 「どうやって終わらせるんだ? 互いに憎しみ合って、銃口突きつけ合ってる連中の中に飛び込むのか? 撃たれて終いだぞ?」 確かにそうだ。 頭が冷えた今だからこそ、その意見は

  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   Take off Fish

     僕がマグロ漁船に乗る以前の話。 アフリカの海辺にある小さな国『サマリア』。 そこは銃声と爆発音、そしてなんの関係のない市民の悲鳴が飛び交う戦場だった。 資源の枯渇と利権を争う権力者たちの戦いが日々続き、なんの罪のない人々の命がすり減っていく。 平和維持軍という名目で派遣された僕たちも、結局はその一端を引き起こしているのかもしれない。 どうにかこの不幸の連鎖を終わらせたい。そう願いながらも、僕の力ではどうすることもできないと諦め、引き金を引き続けた。 そんなある日のこと。 休暇で戦地の風から少し離れたところで、「お坊ちゃんだからって雑用させないと思うなよ」 そんな小言を上官から浴びせられながら、僕は助手席に乗せられた。「これからどちらへ?」「今にわかるよ。それより、こいつらを準備しておけ」 指さされた後部座席の方を見やると、そこに積まれていたのは釣り道具だ。 僕は言われるがままに竿や釣り糸を用意する。 まさか釣りに連れ出されるとは、考えもしていなかった。 休暇とは言え、娯楽の少ない場所だ。外に出れば、遠いサマリアの地で響く爆発音が届く。 羽を伸ばすと言っても必ず付きまとう戦場の匂い。それが嫌で、僕は基本的に外へは出ない。 何よりも心配性の両親からの手紙を読むのに時間が割かれるのだ。返信しなきゃ、無理やりにでも軍を抜けさせると脅しているから、返さざるを得ない。 駐屯地はサマリアとは対岸のところにあり、攻撃を受ける心配がない。 車は艦船用の桟橋で止まった。「今日は船が来る心配がないからな」「でもこれって、普通に規則違反では?」「私が許可する。大丈夫だ心配するな。そら綱島大尉、釣りの用意だ。のんびりしてると、魚に逃げられるぞ」 上官に促され、否応なしに釣りの用意をさせられた。 そして釣り糸を投げて、魚が来るまでひたすら待つ。 その間も、対岸からは黒煙が上り続けている。「空はこんなに晴れていて、海もこんなに綺麗なのに、サマリアの連中ときたら飽きもせずにドンパチ続けやがって。止める気がないのかね本当」「民族間の紛争ですよ。どちらかが滅びるまで続く。でも実際は、石油資源が無くなって、立ち行かなくなったから起こしたってもので」「そういうことじゃねぇよ。この雄大な自然を見て、心改めないかってことだ」 それで戦争が終わってい

  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第67話 幸せの絶頂

    あんな幕引きは、今でも嘘なんじゃないかと思う。 慌てて降りてきた警察官の背後で、燃えさかったのはパトカーだった。 誰かが田沢湖 羽海を始末するために仕掛けた。 その推理は、降りてきた警察官たちの証言で塗り替えられた。 彼女は自爆したと。 体内に仕掛けた爆弾で。 燃え尽きるまで、ただ見てることしかできなかった。 この後のことは、あんまり覚えていられなかった。 船に名をつけたのも、最後の綱を切ったことも、全て火に包まれていく。 でも確かに『グランガルフ』は大海原へと進んでいった。 首謀者の死。豪華客船から始まった事件の終幕は、釈然としないまま終わってしまった。 それからどれくらいの月日が経っただろうか。 他愛のない日々が安らかだけど、凄く長くて退屈に感じてしまう。 怖い目に沢山あったのにね。 白湯を一口。窓の外を眺めながら、心の中で呟く。 慎太郎はあの街の中で頑張ってるんだろうな。 持っていた白湯を置いたとき、視界が真っ暗になって、 「だれーだ」 答えなんて一つしかない。 「また、会社抜けてきたの?」 「任せてきたって言ってよ。香織と、お腹の子が心配で、ついね」 視界がパッと開くと、慎太郎の笑顔も咲く。 ここ数ヶ月。慎太郎とは仕事していない。 お腹の子の成長も順調で、お医者様からも仕事はそろそろ控えた方が良いと診断された。 子の成長にホッとする一方で、仕事に行けないじれったさが体を燻っている。 仕事に行けば、慎太郎が傍にいてくれるからだ。 私は寂しさで彼の肩に手を回す。 「重たくなったでしょ?」 「二人分の命を感じる。でも、僕だって鍛えてるから」 と、軽々と立ち上がらせて、私を抱きしめた。 「さっき、何考えてたの?」 「ぼーっとしてただけよ」 「嘘だ。香織、ちょっと難しそうな顔してた」 「分かるの?」 「窓の反射でね」 クスリと笑ってしまう。 「色々あったけど、なんだかあの日々が凄く充実してたように感じてたの。沢山、怖い目にあったのにね」 「それ以上に幸せがあったからじゃないかな?」 「幸せ?」 「うん。怖い目にもあったし嫌なことも沢山あったけど、二人で乗り越えたりしてさ。色んな出会いもあったじゃない? 柊さんとか立花

  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第66話 全ての終止符――けれど

     会場にこだましたのは、乾いた銃声。 観客達は身を伏せ、得も言えぬ恐怖が広がっていく。 誰が狙われているのか、無差別なのか。 しかし、二発鳴って続かない。 沈黙が十秒続いた頃、撃たれた人間を探すように、皆が目線を上げる。 遠景のビルを見つめる私に注目が集まった。「ご安心ください。皆様は、狙われておりません」 マイクを通して、慎太郎が言う。「今のはドッキリかい?」「いいえ。本物の銃声です」 立花さんの顔色が引き攣っていく。 まさかパーティーの場で聞くとは思わない、と言いたげだ。「誰を狙って」「私です」 胸に手を当てて、前へ出る。 マイクに入っていたからか、その声色で会場が騒然とした。「日野内氏が狙われた?」「一体誰が」「まさか一条の連中の報復?」 憶測が広がっていく。 純には自分からやる度量なんてないのだけど、結びつきやすいところはそこよね。 だが、たった一人。 銃声にも動じず、私の姿をマジマジと見つめていた人物がいた。 溢れる鮮血を見たいがためだけに、隙を曝した女が、立ち尽くしていた。 先に起こることを予見していたように。 しかし裏切られたことに呆然としているように。「なぜ・・・・・・あんた生きてるのよ!」 発した声は自白だ。 田沢湖 羽海が唇を噛み、私へ叫んだ。「君が香織へ仕向けた男達だけど、今頃は地に伏してるよ。最も、殺してはいない」 物騒な言葉に会場のざわつきが大きくなる。「今の銃声は、僕の部下が撃ちました。会場にいる人間へ危害を加えようとしていた者達へ。勿論、武器を破壊しただけですが」「もしや、ここは狙われていたということか?」 立花さんにコクリと頷く。 勿論、狙われていたのはこの私。「皆様ではなく、壇上に立つ香織を狙った。その企みを知った僕は、部下の腕を信じて任せただけです。お騒がせたしことをお詫びいたします」 最も、防がなければ会場を赤く染めた殺人事件になっていただろう。 一つ、役目を終えて私はホッとしてしまった。「嘘よ・・・・・・」「何か言いたげだね。田沢湖 羽海」「嘘よ! 嘘よ嘘よ! なんで失敗するのよ!」 もはや取り繕うことすら諦めたのか。 自暴自棄になり、皆へ自身の企みを自慢するように話し出す。「綺麗に血の華を咲かせて、傷ついた綱島に取り繕う・・・・・・私は、

  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第65話 真実の発露

     海上レストラン『グランガルフ』の進水式。 雲一つない青空の下、盛大に飾られたステージに上った。 司会の他愛のない挨拶からマイクが渡って、「本日は、お集まりいただきありがとうございます」 そんな、変哲のない台詞から始まった。 しかしこんな大勢の前でマイクを取って、自分が主役の場はいつぶりだろう。 あの豪華客船で始まった屈辱が、もう遠い昔のように思う。 だけど、華やかさとは裏腹に、手にした原稿の端々に暗雲が立ちこめている。 これを口にしてもしなくても、きっと私への刃は消えない。 大きく息を呑み、告げた。「進水式の前に、告発したいことがあります」 どよめく会場。 屋根のない、開放的な空間なのに、それは私の元までしっかりと伝わってくる。「日野内グループへの偽装工作、豪華客船の爆破、これらの真実です」 後ろの方で、不敵に私を見ていた田沢湖 羽海の表情が一瞬凍り付いた。 そして慎太郎が出てくると私の手を取り、「半年以上前から彼女の周りで起こっていた奇妙な出来事。僕を始め、多くの人間の協力で全てが明かされました」 口火を切って話し出すと、彼女の顔色はますます青くなっていく。「全ての事件や妨害は一条グループの謀略だと、僕たちもそう思っていました。しかし、先日の一条 純が起こした誘拐事件でハッキリした。その裏に、ある人物の影があったことを」 そして私はゆっくりと指を上げる。「かつて日野内と競合関係にあった田沢湖グループ。そのご令嬢が、自身の家を潰された復讐に、全ての事件を起こした。そうですよね? 田沢湖 羽海さん?」 全員の視線が羽海へと向く。「ふふふ・・・・・・何をいってらっしゃいますの?」「シラを切るつもりかい?」 一転、彼女の顔は平静を装うように戻り、私たちを据える。「言いがかりも甚だしい。やっぱり、そこにいる女が彼を誘惑して」「そちらこそ、そろそろ白状した方が良いんじゃ無いか?」 慎太郎の目が冷たく細まる。 そしてブツリと鳴るスピーカーの接続音。「ではこの計画を立案したのも?」 閉鎖空間に響く男の声。 優しそうだが、間違いなく聞き覚えのある声だ。「細道?」 私の小声に、彼は義眼を取って指し示した。「あぁ。羽海の奴が言ったんだ。香織の腹の子を堕として、俺との子を作れば戻ってくるって」「じゃあ、お前自身が武

  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第3話 方舟の中で誓いは呼び起こされる

     大きな船の中に船で入って、「香織っ!」 パイプだらけの物々しい廊下を掛けてきたのは、一人の美青年。 どこか可愛げがあるけど、顔はまるで覚えていない。 でもこの声の感じ。昔どこかで聞いたことあるような。「オサ! 連れてきた」 私を連れてきた男が言うと、「ご苦労だったね。仕事詰めで疲れてるだろう。少し長めに休んでいいぞ」 優しく男達に促した。 目の前で起こり続けた事がまだ信じられない私は呆気に取られている。「どこか具合悪いかい?」「う、ううん。でもごめんなさい」 そして俯きがちになった私。 彼の心配そうな顔が下からから覗いてくる。「なんで謝るの? 何か悪いことしたか

  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第2話 海賊たちとオサの声

     冷たい海水から這い上がったとき、デッキからこちらを見下す二人と目が遭う。「ほらあそこ見ろよ。お前のために用意したボートだぞ」 ボートを見つけた私は必死に泳ぐ。 たどり着いて乗ろうとするも、手が滑ってなかなか上がれない。「がんばれがんばれ。早くしないとサメに食われちゃうぞ」「泳がないと餌になっちゃうよぉ香織ちゃん。サメさんも不味くて捨てちゃうかキャハハ」 ようやくたどり着いて這い上がる。 するとデッキでは二人は熱いキスを交わし、「ねぇ私が言った通りでしょう?」「あぁ。これで日野内グループは俺の物だ」「私たち、のでしょ」 手を振ったり、指を差したり――私の命を弄んで笑う。

  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第1話 舞踏会からの追放

     終わりという言葉がシャンデリアに照らされ、海原のクルーズ船はざわめきという荒波に揺られる。「私とは終わりって、どうしてなの純?!」「はぁ・・・・・・お前も察しが悪いな。お前よりイイ女が見つかったからに決まってるだろ」 『一条 純』がため息交じりに言う。 なぜなの。真っ先に脳裏を過ったのはそんな問い。「お前の親父の権力には世話になったよ。だが、それも今日までだ。散々、家族をコキ使って金稼ぎしやがって」 今日まで? 初めて見る彼の一面に驚きながらも、その含みのある言葉に引っ掛かる。「あらぁ? この子、何のことか分からないみたいよぉ純」「やっぱお前を捨てて正解だったわ。なぁ|羽

  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第7話 没落の真実と信ずる者たち

    「私が慎ちゃんの秘書に?」 朝食を食べ終えた折りに、慎ちゃんは興奮気味に言う。「秘書になれば、ずっと一緒にいられるし、仕事に精が出る。勿論、タダでってわけじゃないよ? 細道」「こちらが秘書としての働いて頂いた場合の年俸になります」 額面を見て唖然としてしまう。 日野内グループの取締役を優に超えていたからだ。 けれど、私は秘書の経験もないし、むしろお願いしていた側。 慎ちゃんの仕事の足手まといにならないか心配で、表情が険しくなる。「仕事の事は心配しないで香織。細道もサポートしてくれるし、日野内のおじさんの元でやってた仕事と同じようにしてくれれば良いからさ」「そ、そう・・・・・

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