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第2話 海賊たちとオサの声

作者: 宵更カシ
last update publish date: 2026-06-21 17:39:37

 冷たい海水から這い上がったとき、デッキからこちらを見下す二人と目が遭う。

「ほらあそこ見ろよ。お前のために用意したボートだぞ」

 ボートを見つけた私は必死に泳ぐ。

 たどり着いて乗ろうとするも、手が滑ってなかなか上がれない。

「がんばれがんばれ。早くしないとサメに食われちゃうぞ」

「泳がないと餌になっちゃうよぉ香織ちゃん。サメさんも不味くて捨てちゃうかキャハハ」

 ようやくたどり着いて這い上がる。

 するとデッキでは二人は熱いキスを交わし、

「ねぇ私が言った通りでしょう?」

「あぁ。これで日野内グループは俺の物だ」

「私たち、のでしょ」

 手を振ったり、指を差したり――私の命を弄んで笑う。

 それにも飽きたのか。純は背を向け、羽海は片手をひらりと振った。

 さよならとでも言うように······

 大企業の娘とグループ会社の御曹司。

 私と純はそんな柵みすら超えた本物の愛だと思っていた。

 実直で上昇志向しかなくて、負けず嫌い。

 そんな彼の素直さに心を打たれていた。

 肩書きだけの部長。そう陰口を叩かれて純が悩んでいたときだって寄り添って、彼を支えて。

 でも与えられた物は、全部偽りだった。

 愛。たったそれだけのために私は父の権力と、資金と、ノウハウを使って彼を押し上げた。

 ――全部奪われた。

 夜空に輝く月夜ですら私を嘲笑う

 絶対に許さない。

 青くなった唇が自然と、復讐の誓いをつぶやいていた。

 しかしボートの上。今の私には何もないし何もできない。

 運が良ければ生きられるって彼らは言ったけれど。

 海賊に身体を弄ばれる人生は死ぬことよりも辛い。

 ならこのまま野垂れ死んでしまえれば、遙かに幸せかもしれない。

 そんな思いを汲み取ったのか。

 ボートに近づく一隻の船に気づく。

「・・・・・・助け?」

 両手を振って合図を出すが、誰も答えない。

 淡々と私に近づき、横について気づく。

 木製のボロ船に乗ってきたのは、銃を携えた男達。

 誰も助けてくれない。あの船にいた人々も、神様だって私を見捨てた。

「オサが待ってる。早く乗れ」

 一人が拙い日本語で話すと、銃から私に手を伸ばす。

 困惑していると、促すように手を引き、

「ジカンがない。ハヤクしろ」

 そう急かして、私はボロ船に乗せる。

 ······どういうつもりなんだろう。

 風体や雰囲気は明らかに海賊。

 けれど服を脱がされるどころか私に手を出す素振りすらない。

 むしろコップ1杯の水まで出されて持てなされているような気がした。

 喉も渇いていたし一気に飲み干す。

 すると私に手を差し出した男が優しく笑って、

「オサ、心配してる。何もなくて良かった」

 と言う。

 しばらくして見えてきたのは、クルーズ船に負けず劣らずの大きさの白い船。

「ついた。船の上を見ろ」

 横を通りかかったとき、男が指を差す。

 こちらに手を振る小さな人影。

 しかし、海鳴りでも聞き間違えない懐かしい声が聞こえる。

「香織! 迎えに来たよ!」

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