美人上司の秘密を発見してから告白られた件

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By:  唐 安南Updated just now
Language: Japanese
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一代の冥王が都市に戻り、ちょっとした社員として働くことになったが、偶然にも美人のボスの秘密を知ってしまった…

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Chapter 1

第1話

「クビよ」

黒のタイトスカートを身にまとった長身の美女が、冷たい声で告げた。

目のやり場に困るほどの見事なボディラインに、伊吹嵐(いぶき あらし)は思わず唾を飲み込んだ。

彼女はグループに突如送り込まれた副社長、自分の直属の上司である東田智子(ひがしだ ともこ)。二十七歳、海外帰りの博士学位持ち、ダブルディグリー。年収はなんと二百億円にのぼるという。

その彼女が本日初出社し、さっそく社員との面談とリストラを大々的に始めた。

「伊吹さん、君の番だ」

人事が呼びに来て、ついに順番が回ってきた。

嵐は緊張しながらオフィスに足を踏み入れるた。

「東田社長、お呼びでしょうか」

しかし、入った瞬間、智子が床に倒れ、身体を激しく痙攣させながら胸が大きく波打っていた。

思わず喉が渇き、血がたぎる。妙な衝動にかられ、近づきたくてたまらなかった。

正面から見た顔は、後ろ姿以上に美しかった。そしてあまりに色っぽく、視線をそらせなかった。

「出て行きなさい!」

嵐の姿を見た彼女が、歯を食いしばって怒鳴った。

驚いてその場を離れようとした瞬間――

「待って!お願い……助けて……!」

背後から響いたのは、必死の懇願だった。

見捨てることができず、振り返った。

足早に駆け寄ると、脈をとり、顔色を見て、様子を聞きながら診察を始めた。手つきは実に慣れていた。

嵐は普通の人間ではなかったからだ。

智子の体温は異常に高く、頬は真っ赤に染まり、呼吸も荒かった。両手で無意識にレースのブラウスを引き裂こうとしている。

嵐の表情が一変した。

「東田社長、誰かに毒を盛られましたね。服用させられたのは『合歓散』という強力な媚薬です。このままだと、三分以内に全身が燃え尽きて死にます!

助かるには……私の身体を使って、毒を抜くしかありません」

智子の顔が一気に蒼白になり、苦しそうにうなずいた。

嵐の目が鋭くなった。

「それでは失礼します」

次の瞬間、嵐は彼女の服をすべて引き裂き、その身体に覆いかぶさった。

「や、やめ……っ!」

顔面蒼白となった智子。まさかそんな解毒方法だとは思ってもいなかった。

抵抗しようとした時には、すでに意識を手放していた。

十分後……

「東田社長、すみませんでした。あなたが初めてだったとは知らなくて……ゆっくり休んでください。私はこれで……」

嵐は慌ただしく服を着直し、罪悪感に満ちた顔で部屋を後にした。

残された智子は、ソファから這い上がり、ズタボロになった黒のブラジャーを拾い上げ、今にも炎を吐き出しそうな目で彼の背中を睨みつけた。

「終わった……助けたのはいいけど、衝動に任せすぎた。あの悪女、明日確実に私をクビにするぞ……」

オフィスを出た嵐は、ため息まじりにぼやいた。

帰り際、部長の高橋輝(たかはし あきら)がこそこそと何かをやっているのを見かけた。

ちょうど退勤の時間になったので、東田社長に責任を追及される前に、急いで会社を後にした。

今日、33回目のお見合いがある。

三ヶ月前――

嵐は北境を震撼させ、百万人の軍を率いた「冥王」だった。

諸国連合軍を一人で打ち破り、桜国の国運を救った英雄。

だが、功績があまりに大きすぎて権力者たちの妬みを買い、激怒して自ら早期退職を宣言。故郷の蒼海市へ戻ってきた。

彼の経歴は軍事機密。家族にも本当のことは明かせない。

だから、家族の目には、七年の兵役を終えた、高卒のしがない職員にしか映っていない。

嵐は過去にこだわるつもりはなく、北境でのことも誰にも語っていなかった。

お見合いのレストランに到着。

店の前では母・裕子が今にも泣きそうな顔で待っていた。

「嵐くん、遅いじゃない!若生さん、ずっと待ってるのよ!」

裕子は嵐の手を引きながら、店内へと入った。

テーブルには、美しい顔立ちと抜群のスタイル、高級ブランドで固めたハイヒール姿の女性が座っていた。

地味な嵐を一瞥し、露骨な侮蔑の表情を浮かべた。

嵐は気持ちを切り替えて、口を開いた。

「こんにちは、若生玲子(わかばえ れいこ)さん。伊吹嵐と申します。25歳です。

退役軍人で、高卒。車も家もありません。今は利豪商事会社でインターンとして働いています。月給は7万円です」

言い終わった直後、キンと冷たい水が、嵐の顔に思い切りぶちまけられた。

「時間の無駄だったわ!」

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第1話
「クビよ」黒のタイトスカートを身にまとった長身の美女が、冷たい声で告げた。目のやり場に困るほどの見事なボディラインに、伊吹嵐(いぶき あらし)は思わず唾を飲み込んだ。彼女はグループに突如送り込まれた副社長、自分の直属の上司である東田智子(ひがしだ ともこ)。二十七歳、海外帰りの博士学位持ち、ダブルディグリー。年収はなんと二百億円にのぼるという。その彼女が本日初出社し、さっそく社員との面談とリストラを大々的に始めた。「伊吹さん、君の番だ」人事が呼びに来て、ついに順番が回ってきた。嵐は緊張しながらオフィスに足を踏み入れるた。「東田社長、お呼びでしょうか」しかし、入った瞬間、智子が床に倒れ、身体を激しく痙攣させながら胸が大きく波打っていた。思わず喉が渇き、血がたぎる。妙な衝動にかられ、近づきたくてたまらなかった。正面から見た顔は、後ろ姿以上に美しかった。そしてあまりに色っぽく、視線をそらせなかった。「出て行きなさい!」嵐の姿を見た彼女が、歯を食いしばって怒鳴った。驚いてその場を離れようとした瞬間――「待って!お願い……助けて……!」背後から響いたのは、必死の懇願だった。見捨てることができず、振り返った。足早に駆け寄ると、脈をとり、顔色を見て、様子を聞きながら診察を始めた。手つきは実に慣れていた。嵐は普通の人間ではなかったからだ。智子の体温は異常に高く、頬は真っ赤に染まり、呼吸も荒かった。両手で無意識にレースのブラウスを引き裂こうとしている。嵐の表情が一変した。「東田社長、誰かに毒を盛られましたね。服用させられたのは『合歓散』という強力な媚薬です。このままだと、三分以内に全身が燃え尽きて死にます!助かるには……私の身体を使って、毒を抜くしかありません」智子の顔が一気に蒼白になり、苦しそうにうなずいた。嵐の目が鋭くなった。「それでは失礼します」次の瞬間、嵐は彼女の服をすべて引き裂き、その身体に覆いかぶさった。「や、やめ……っ!」顔面蒼白となった智子。まさかそんな解毒方法だとは思ってもいなかった。抵抗しようとした時には、すでに意識を手放していた。十分後……「東田社長、すみませんでした。あなたが初めてだったとは知らなくて……ゆっくり休んでください。私はこ
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第2話
玲子はバッグを手に立ち上がり、鼻で笑って言った。「私、名門大学卒で一部上場企業の総合職よ?月収は40万円、都内にマンション持ってて、車も外車が2台あるの。あんたみたいな月収8万円もないインターンが、よくも私とお見合いしようなんて思ったわね!イケメンで金持ちの二世かと思ったら、二十五にもなって車も家もないクズ男じゃない。そんな奴がどうして生きていられるのかしら?」鼻先を指さされ、嵐の表情が一気に冷たくなった。北境にいた頃なら、この女の一族もろとも、跡形もなく消し飛ばしていただろう。裕子があわてて間に入り、「若生さん、うちの嵐くんは今はまだ家も車もないけど、真面目で上昇志向があるし、これからきっと……」「触らないで!あんたみたいなババアに!」玲子は裕子を乱暴に突き飛ばした。「うちの母さんに手を出すな!」怒りで声を荒げる嵐。そのとき、横にいた厚化粧の中年女性が立ち上がり、嘲笑いながら言った。「裕子さん、うちの娘は選ばれた存在なのよ。あんたの息子ごときが、どうして釣り合うっていうの?あなたがあれだけお願いするから渋々会わせたのに、誠意のかけらも感じられないわ!」話しているのは玲子の母、若生花子(わかばえ れいこ)。偉そうな態度だった。裕子は顔をひきつらせ、恐る恐る聞いた。「花子さん、それはどういう意味ですか?」「そちら、土地を一つ持ってるでしょ?お金もないことだし、結納代わりにその土地を差し出してくれたら、うちの娘も考えてあげないこともないわね」花子はニヤついた笑みを浮かべながら続けた。「ついでにあの古い家も壊してもらえれば、新居を建てやすくなるし、結婚後の二人の家にちょうどいいじゃない?」嵐が憤って言い返した。「土地を取られて、家まで壊されたら、俺たちはどこに住めばいいんだ?道端にでも寝ろってことか?」「ほら見なさい!条件を一つ言っただけでこの反応よ。こんな奴がうちの娘に優しくできると思う?」花子は興奮して、指を突きつけてきた。裕子はつらそうに顔をゆがめながら、しぼり出すように言った。「花子さん、そんなこと言わないで……わかりました、受け入れます」「……母さん!?」嵐はその場で絶句した。「アハハ!」花子は高笑いしながら言った。「それとね、うちの弟、昔ちょっとした過ちがあって
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第3話
「えっ?」嵐は呆然としていた。「何ぼーっとしてるの?あたしのこと、忘れたの?さっき会ったばかりじゃない」智子は嵐が動かないのを見て、眉をひそめ、ためらうことなく彼の腕を取り、そのままレクサスに押し込んで、その場を去った。周りの人々は驚いて言葉を失うほど、大騒ぎになった。あんなとんでもない美人が、嵐を探しに来たなんて。玲子は唖然とした。なんであんなダサい奴が?どうして?花子は目を白黒させ、言葉を失い、魂を抜かれたようだった。「裕子さん、あんたの息子は……もう大金持ちと付き合ってたのね!それなのにお見合いに来たのは、私たちをバカにするつもりだったの?」裕子も訳わからず頭を抱える。うちの息子がいつこんなレベルの女性と知り合ったのよ……?レクサスはしばらく走った後、静かな場所で停車した。智子の黒のタイトスカートと深Vネックが、あまりにも艶やかで目を奪われた。助手席の嵐は視線を逸らして、少し気まずそうに口を開いた。「東田社長、わざわざ来ていただいて、何のご用でしょうか」パチンッと!彼の言葉が終わらないうちに、智子は平手打ちをしてきた。全く容赦がなかった。「最低!変態!」彼女は歯を食いしばって言った。嵐はそれほど痛くなくて、顔を押さえながら苦笑して言った。「東田社長、あの時は人を救おうと焦っていただけで、あまり考えていませんでした。本当に申し訳ありません!もし気が済まないなら、私を殴ってもクビにしても構いません」彼女が自分を探しに来たことを見る時点で、すでにやっちまった感は察してた。やっぱり、報復に来たなと。やはり、危険な橋は渡るもんじゃない。しかも、智子の身体に触れてしまった。智子はこの状況を見て、上げた手が突然止まった。彼女は冷たい表情で言った。「あなたの名前は伊吹嵐、会社の営業部のインターンよね」「はい」「今から、あんたにやってもらいたいことがあるの。うまくいったら、さっきのことは水に流して、正社員にしてあげる」と智子は上からの目線で言い放った。「東田社長、私にやらせたいことって……まさか私の身体で治療とか?」嵐は戸惑いを感じ、彼女の鎖骨に目を落とし、この前に残った痕がまだ残っている……智子の怒気が爆発した!その目はまさに人を殺せるレベル!「もう一回そんなこ
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第4話
相手は北境の冥王、国の柱、桜国権力の頂点に立つ人物だからだ。冥王閣下とのコネクションを築くことができれば、彼らの出世は約束されたも同然、その将来は計り知れない。「お二方も冥王様が最近このお見合いレストランに頻繁にお出ましになっているという情報を掴まれたようですな」「これからもっと注意深く監視していないと、出し抜かれてしまいますからな」と知事の将彦が苦笑いを浮かべながら言った。三人は心の底から、冥王の恐ろしさを理解している。西方諸国の君主たちですら彼の顔色を窺う存在なのだ。たとえ関係を築けなくても、絶対に敵対してはならない。冥王様を怒らせでもしたら、百万の屍が積み上がる大惨事になりかねないのだから。冥王がその気になれば、彼ら三人など一瞬で塵と化してしまうのだ。「聞くところによると、冥王様が今は蒼海市にお住まいとか。いずれは必ずお会いできるはずです」「ふん!次に冥王様を見つけ出すのは必ずこの俺だ」御三家は険しい視線を交わし、それぞれ立ち去った。…立原山荘にて。智子が車から降りると、慌ただしく別荘へと足を向けた。その豪華さは息を呑むほどだった。「東田社長、私を一体どこに連れて行くつもりなんですか」嵐はまだ困惑していた。「入ればわかるわ」智子は嵐をそのままホールに連れて行くと、そこには人がぎっしりと詰まっていた。「智子、家族会議にどうして勝手に外部の者を連れてくるんだ」中で何人かの男たちが立ち上がり、高級な服を身にまとい、眉をひそめて言った。その瞬間、嵐の心臓がバクバクと高鳴った!嘘だろう、ホールの中に、会社の社長の東田正国(ひがしだ まさくに)、取締役の東田正明(ひがしだ まさあき)、そして数名の役員たちが勢揃いしていたのだ!これらは彼が会社に入ったばかりの頃、会社の名誉写真で見たことがある会社の幹部たちだ。嵐を見て、東田家の人々はまるで動物園の猿を見るかのように口元を押さえて笑った。「まさか、今日、智子がどんな気まぐれで、こんな奴を家に連れてくるんだ」「ほら、この人の服装を見てみろよ、まさかゴミ箱から拾ってきたんじゃないか?うちの犬の方がよっぽどきちんとした身なりをしているぞ」…「おい、物乞い、近寄るな。早く靴を脱いで、裸足で出て行け」智子の叔父、正明が声を荒げ、冷たく嵐
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第5話
「これはちょっと…」嵐は呆然とし、戸惑いの色を隠せなかった。「早くしなさい!聞こえてないの?そうじゃないとすぐにクビよ!」智子は低い声で急かした。さらに、嵐に近づき、その白く滑らかな身体を彼の前で揺らめかせる。嵐はやむを得ず、歯を食いしばって、相手の敏感な部分を思い切ってぎゅっと掴んだ。智子は表情を変え、身体が微かに震え、冷たい視線で彼を睨みつけた。触らせるだけと言ったのに、こんなに激しく。しかも自分の最も敏感な部分を。彼女は必死に声を漏らさぬよう堪えながら、平静を装って言い放った。「見たでしょう?あたしたちは本当に愛し合っているの。お父さん、叔父さん、もう諦めてください」「ふざけるな!智子、お前がそのクズとどんな関係であろうと、必ず虎門の跡継ぎと結婚するのだ」正明は激昂し、大きく一歩前に出ると、智子に平手打ちを見舞った。智子は頬が赤く腫れ上がり、よろめいて三歩後ずさりした。「これは伯父としての躾だ。上下の関係というものを分からせてやる。我が儘は許さん」正明は冷笑を浮かべた。「外から下層のゴミを連れてきて、我々を不快にさせるとは何事だ。ゴミは永遠にゴミ。この男はダメだ」しかし、次の瞬間、彼は激しい平手打ちを食らった。正明は数メートル吹き飛ばされて大理石の柱に激突し、たちまち頭から血を流した。「東田さま!」一同はすぐに青ざめ、慌てて駆け寄った。嵐は手を下ろし、振り向いて智子を見た。「社長、大丈夫ですか」智子も驚いて言った。「あなた…こんなに力が強いの」嵐は微笑みながら答えた。「軍隊にいたことがあります。あなたが殴られるのを見て、とっさに手が出てしまいました」「誰か!この野郎を捕まえてバラバラにして、犬の餌にしてやれ!!」正国はそれを見て、怒り狂って吠えた。瞬く間に、外から7、8人の屈強な男たちが駆け込んできた。智子は慌てて嵐の前に立ちはだかった。「お父さん、落ち着いて!先に手を出したのは叔父さんの方よ!嵐はただあたしを守ろうとしただけ」背後の嵐は、智子が自分を守るために積極的に出てきたのを見て、少し感動し、ゆっくりと前に出て言った。「社長、大丈夫ですよ。こんな雑魚ども、相手になりません」「無理をしないで」と智子が止めようとするより早く。嵐が矢のように飛び
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第6話
その言葉が出ると、東田家の人々は皆激怒し、口々に罵声を浴びせた。「どこから来た野郎だ!品格のかけらもない!」「口を開けばいきなり大旦那様の死を呪うとは!」「こんな畜生以下の代物に、まだ金をやるのか?棒で叩き殺して川に沈めてしまえ!」「底辺から来たクズはこんなものだ。一目見るだけでも時間の無駄!」立原は顔を曇らせて言った。「小僧、自分が何を言っているかわかっているのか?謝罪すれば、この件は水に流してやる」高齢者にとって、最も忌み嫌うのは、面と向かって死を呪われることだ。嵐は眉をひそめた。「私は事実を言ってるだけです。立原さん、あなたは本当にもうすぐ死ぬんですよ」立原の表情が一瞬にして険しくなり、怒りを抑えながら、脅すように言った。「もう一度言ってみろ!」「おじいさま、誤解しないでください。この人は口下手で、いつも変なことを言うんです」智子は嵐を睨みつけ、彼が何を言っているのかさっぱりわからなかった。「嵐、いい加減にして。早くおじいさまに謝って、それから帰りなさい!ここにはもうあなたの用事はないの」一応自分の部下で、彼女のために危険を冒してくれたのだから、智子は彼を守る義務があると思っていた。嵐は苛立った。「だから言ってるじゃないですか。立原さんは本当に死ぬんです。何度言えばわかるんですか?みなさん耳が聞こえないんですか?」この言葉が出ると、たちまち場は大混乱に陥った。立原の顔色は瞬時に青白く変わり、血管を浮き上がらせて激怒した。「もう二度と出て行かせん!今日ここで死んでもらう!」智子は慌てた。「おじいさま、この人はうちの会社の社員なんです」「黙れ!今日は神が来ても助からんぞ」立原の怒りが頂点に達した。「正国、正明」「はい!」と二人はすぐに応じた。「門を閉めろ、東田家の使用人と護衛を全員集めろ、この野郎を跡形もなく叩き潰せ!」立原が激昂していた時、激しい痛みが突然全身を襲った。次の瞬間、彼が倒れ込み、口と鼻から血がどくどくと流れ出した。「お父様」「大旦那様」人々はこの光景を予想しておらず、すぐに駆け寄った。立原の身体はいつも頑健だったのに、なぜ突然倒れて出血したのか?「急いで病院に運んで!おじいさまが危ないわ」智子も慌てて駆け寄った。し
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第7話
東田家の人々は呆然とし、やがてどっと笑い声を上げた。「小池先生、ご冗談を。あいつがおじいさまの体を適当に数回押しただけで、不治の病が治るって言うんですか?」「それはもう医学じゃなくて奇跡ですよ!」「そうそう、それなら私がやっても同じことでしょうね!」卓は眉をひそめて言った。「いえ、違います。たとえマッサージでも、伝統医学では高度な技術が要求される。そう簡単なものではないのです」立原は手をひらひらと振って遮った。「まあまあ、その話はそのくらいにして、小池先生、お茶でもいかがですか。うちには上質なお茶がございますよ」卓は諦めたような表情を浮かべた。いくら説明したところで馬の耳に念仏だろう。しばらくして、一同は卓を見送った。正国が不機嫌そうに口を開いた。「あの先生も案外大したことないな。あんな小僧を名医扱いするなんて」立原も髭を撫でながらうなずいた。「小池先生もお年だからな。当事者じゃないから、時には見間違いもあるだろうよ」「お父さん、この件はこのままで済ませるんですか?私、今日はあいつに頬を張られたんですよ」正明は不満げに言った。顔にはまだくっきりと手の跡が残っていた。立原は薄ら笑いを浮かべた。「当然、このままで終わらせるわけにはいかんよ。確か伊吹嵐とか言ったな?うちの営業部の平社員だそうじゃないか。あいつに復讐するなど造作もないことだ」「それでは……」と二人は身を寄せ合った。一つの陰謀が密かに始動していた。…「満足した?」立原山荘を出てすぐ、智子は嵐の手を振り払い、冷たい視線で睨みつけた。「約束の1時間はもう10分もオーバーしてるじゃない」嵐は苦笑いを浮かべた。「すみません、東田社長。私、時間にルーズなもので……」実際のところ、智子の柔らかな肌の感触があまりにも心地良く、つい……「今日あなたを呼んだのは、家族が決めた縁談相手を断るためだけよ。勘違いしないで。あたしがあなたを気に入ったなんて思わないことね」智子は胸を張り、きっぱりと言い放った。「あなたは月給たった7万円の高卒インターン。でもあたしは海外留学経験のある博士で、会社の副社長。あたしに求婚する男性なら数え切れないほどいるのよ。あたしたちは住む世界が違うの。格上の者が格下を見下ろすことはあっても、その
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第8話
嵐は素早く踏み出し、その黒い人影に力強い一撃を見舞った。しかし、相手はわずか7、8歩後退しただけだった。嵐は驚愕した。この一撃は自分の力の十分の一程度だったが、桜国全体を見渡しても、この攻撃に耐えられる人間はそう多くない。「こいつは只者じゃない。智子は一体誰を怒らせたんだ?これほど容赦のない相手を」その人物は嵐と戦うことなく、そのまま二階へと駆け上がった。嵐は即座に緊張した。まずい!二階に侵入させてはならない。さもなければ智子は確実に殺される。しかし、彼は躊躇した。智子は二階に上がるなと言ったではないか。いずれにしても、人命救助の方が重要だ。智子に叱られても構わない。彼は決心し、稲妻のように階段を駆け上がった。その人影はすでに智子の部屋に入っているようだった。「東田社長、危険です!何者かがお部屋に侵入しました!」嵐は部屋に飛び込んだが、目の前の光景に唖然とした。智子はちょうど浴室から出てきたところで、濡れた髪から水滴が滴り、身体にはバスタオル一枚だけを巻いていた。その完璧な肢体に彼の視線は釘付けになった。そして、突然飛び込んだ嵐の手が、偶然にもそのタオルに触れてしまった。次の瞬間、タオルがはらりと床に落ちた。智子の美しい裸体が完全に露わになった。一瞬にして、空気が凍りついた。智子の美しい瞳には火山の噴火のような怒りが燃え上がった。「伊吹くん!出て行きなさい!でなければ今すぐクビにするわよ!」智子は両手で身体を隠し、その眼差しは人を殺せるほど険しかった。嵐は仕方なく部屋を出ると、背後でドアがバタンと勢いよく閉まった。彼は慌てて大声で言った。「東田社長、故意に覗いたわけではありません!お部屋に何者かが侵入したかもしれないんです!」その後、再びドアが開き、智子がパジャマを着て現れ、冷ややかに言い放った。「5分以内にその人物を見つけ出しなさい。できなければ、あたしがあなたを許さないわよ」智子の部屋は非常に広く、ほぼ100平方メートルに近い。嵐は意を決して足早に入り、バルコニーで何かの手がかりを発見した。彼はすぐにバルコニーに駆け込んだが、干されている洋服に思わず目を奪われた。白地にピンクのリボン柄のパンツ、レースのブラジャー、ミニスカート……智子にこんな可愛らしい
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第9話
裕子は彼女たちの後ろで恥ずかしそうな顔をしており、明らかに無理やり連れてこられたのだった。嵐は渋い顔をしていた。人間、恥というものを知るべきだが、これほど厚かましい人間を見たのは初めてだ。もし自分が智子と付き合っていると言えば、この二人は間違いなく金持ちの智子のために自分に媚びへつらうだろう。「残念ですが、智子さんは私の上司で、昨日いらしたのは仕事の用事でした。用が済んだらすぐにお帰りになりました」と彼は嘘をついた。玲子と彼女の母親はこの話を聞くと、顔色が一変した。「何よ?彼女があなたの上司だったの。やっぱりね。智子さんのようなエリートが、あんたなんかを好きになるわけないじゃない」「せっかく期待したのに、がっかりよ!」彼女たちは文句を言いながら帰っていき、持参したプレゼントも一緒に持ち帰った。その時、嵐の携帯に隆明からメッセージが届いた。「冥王様、一千億円をあなた様の冥王カードに送金いたしました。また、勝手ながら住宅街を一つ購入させていただきました。冥王カードで自由にお使いください」嵐は思わず首を振った。隆明のやつ、相変わらずこういうことばかりする。裕子が心配そうに言った。「嵐くん、あの女たちのことは気にしちゃダメよ。それより一体どこに泊まっていたの?一晩中心配だったのよ」嵐は笑って答えた。「母さん、心配しないで。野宿なんてしてないよ。うちにはまだ数百万の借金が残ってるけど、私のお金で返済させてもらえないかな?」裕子はすぐに慌てて言った。「嵐、あなたはただの会社員でしょう?給料だって数万円しかないのに、そんなお金どこで手に入れたの?まさか悪いことでもしたんじゃ……」嵐は慌てて答えた。「母さん、そんなことあるわけないよ。考えすぎだって」「それならいいけど……あなたのお父さんも、昔はもっと稼ごうとして違法な炭鉱で働いてね……結局、崩落事故で命を落としてしまったのよ。だからあなたは、絶対に真っ当に生きていってちょうだい」裕子は懇願するように言った。「お金のことは一緒に頑張って何とかしましょう。あまり自分を追い詰めないでね」嵐は慌てて頷いた。彼は母が真面目に自分の金の出所を追及するのを恐れ、冥王カードのお金を使うという考えを諦めた。母が真剣に自分の金の出所を追及するのを恐れ、冥王
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第10話
嵐は周りのざわめきを無視して続けた。「はい。利豪商事が販売している『神養茶』というサプリメントですが、桜国の基準に従って、伝統的な調合法と組み合わせて作られています。継続して服用することで、多くの精神的疾患を効果的に予防できます」「5分以内に、四千万円分の売上をお願いします」同じ頃、蒼海市役所では——知事の将彦は興奮して携帯を握りしめ、震え声で言った。「冥王様だ!本当に冥王様のお声だ!私のことを覚えていてくださった……」かつて将彦は、ただの軍営で嵐に料理を作っていた専属コックに過ぎなかった。ある日、嵐が彼の料理を褒めた際、即座に昇進させられた。数年後、直接蒼海市知事に任命され、その昇進の速さはまさに破竹の勢いだった。この恩は、嵐がとうに忘れてしまったかもしれないが、将彦は心に深く刻み込んでいた。だから退官前に自分の連絡先を嵐に渡したのだ。まさか冥王様が今でも保存してくださっていたとは。「佐藤君」彼はすぐに秘書の佐藤晃(さとう あきら)を呼び寄せた。「市役所で最近、茶葉を調達する予定だったよね」「はい、各地の貴重な高級銘茶を中心に、第一弾の商品ラインを仮決定しました。どれもハイエンドで高級感のある商品です!」晃は答えた。「全部取り消しだ。利豪の『神養茶』に変更しろ。すぐに発注しろ」将彦は断固として言った。晃は驚いた。これまで将彦知事はこういう調達案件に口を出すことはなかった。以前、複数の大手企業がこのプロジェクトを狙って、あらゆる人脈を使い、贈り物をしても、将彦知事は首を縦に振らなかった。しかし今、たった一本の電話が、将彦は別人になったかのようだった!いったい誰が、これほど大きな影響力を持っているのか?…会社では、嵐が通話を終えて携帯を置いた。真奈はおそるおそる言った。「嵐君、今の相手って蒼海市の中村知事?」嵐は淡々と答えた。「昔の部下だよ。蒼海市に転属したと聞いていた。彼の功績なら、知事になるのは当然だろう」「頭、大丈夫か?でかい口叩くなよ」健は腹を抱えて笑った。「電話一本で中村知事に四千万円分の『神養茶』を買わせるって?自分を何様だと思ってんだ?桜国最年少の戦神・隆明様か?それとも軍の上層部とでも?」「どちらでもない。だが、彼らは以前私の部下だっ
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