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第12話
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美人上司の秘密を発見してから告白られた件 第15話
普通の赤珊瑚は淡い赤色で、上質なものほど深紅になるが、帝王炎の赤珊瑚は太陽光を浴びると黄金色に輝く。目の前のこの赤珊瑚は、全身から眩いばかりの金色の光を放っていた。瞬間、店内が騒然となった。この十年間で、帝王炎の赤珊瑚が発見されたのはわずか二回だけだ。一つ目は海外の元首が桜国王室に献上したもの、二つ目は国際最高級オークションで六千億円という天文学的価格で落札された。人々の表情には驚愕と興奮が刻まれ、まるで奇跡の瞬間を目撃しているかのようだった。ロールス・ロイスの車内で、美香は白い脚を組み直しながら微笑んだ。「この伊吹って人、私が思ってた以上に面白いわね」智子は何かを隠しているに違いない。あの男性は、決して普通の人間じゃない。彼女は嵐への興味を募らせながら、複雑な表情を浮かべて言った。「吉田さん、出発しましょう。後でこの伊吹という男を調べて、彼に関する資料を全て私のところへ持ってきて」美香の車が立ち去った後、嵐は再び帝王炎の赤珊瑚を手に取った。「賭け事は好きじゃないって言ったろ」と嵐は呟いた。なぜなら、他人と賭けをして負けたことが一度もないからだ。「ちょっと待て」。呆然としていた店主が突然嵐を制した。「あんた、運が良かったな。すまないが、それを俺に譲ってくれれば二百万円出そう」嵐は怪訝そうに問い返した。「どういう意味だ？」「ふん、『過ぎたるは猶及ばざるが如し』って言葉を知ってるだろ。帝王炎の赤珊瑚なんて、あんたには大きすぎる宝だ。守りきれるはずがない」店主がにやりと笑った。「素直に俺に渡して、二百万円を手にしたほうが身のためだぞ」周りの客たちがすぐに気づいた。「おい！これは明らかに強奪じゃないか」嵐は眉をひそめて言った。「『その欠け石から赤珊瑚が出れば無料』って、お前が言ったんじゃないのか」「そんなこと言ったか？俺は覚えてねえな」店主が目配せすると、周りの用心棒たちがすぐさま嵐を取り囲んだ。「渡さねえなら、今日は生きて帰れねえぞ」そう言うや否や、連中が一斉に嵐へ襲いかかってきた。瞬間、嵐の眼差しが氷のように冷たくなった。「自業自得だな」一寸の虫にも五分の魂、ましてや彼はかつて暴君と呼ばれた冥王だった。今日、智子に散々な目に遭わされたばかりなのに、
美人上司の秘密を発見してから告白られた件 第14話
この発言で場内は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。店主は一瞬たじろぎ、目に後ろめたさを浮かべたが、すぐに鬼の形相で嵐を睨みつけた。「どこの馬の骨だ！金がないなら失せろ。デタラメ抜かすと舌を引っこ抜くぞ」嵐は淡々と答えた。「ただの忠告だ。信じる信じないは勝手にしろ」スキンヘッドの男が嵐を見詰めた。どこかで見た顔のような気がして、手を止めた。「兄さん、あんたはその最上級原石が偽物で、あの隅っこの石から赤珊瑚が出ると言うのか？」嵐は再び隅の石を一瞥し、断言した。「可能性じゃない。百パーセントだ」かつて彼がいた北境では、あらゆる流派の怪しげな術が跋扈していた。風水鑑定術や奇門遁甲といった技も、見慣れたものだった。彼にとって石賭けなど、子供の遊び同然だった。間もなく、野次馬たちが嘲笑の声を上げ始めた。「まさか？あの隅の原石なんて、材質からして最低ランク以下、完全にクズ石だろ。そこから赤珊瑚が出る確率なんて皆無に等しいさ」「どうやら何も分からん素人が、調子に乗って出てきただけみたいだな」「場違いな奴だ。石賭けの世界は年功序列が絶対で、誰でも口を挟んでいいもんじゃないんだよ」スキンヘッドの男も困惑顔になった。誰もが知っている常識だ。下級原石の確率は十万分の一、中級は一万分の一、上級でも千分の一……あの石に至っては百万分の一、宝くじに当たるより難しい！それなのに、嵐は必ず赤珊瑚が入っていると言い切った。店主は腹を抱えて笑い転げ、容赦なく言い放った。「よし、賭けをしようじゃないか。そのゴミ石から赤珊瑚が出たら、タダでくれてやる」「だが出なかったら、てめぇの片腕を置いてもらうぜ」嵐は眉を僅かに動かした。「私はギャンブルは好まない」「好む好まねぇは関係ねぇ。賭けろ」店主が床を踏み鳴らすと、人垣の中から刺青だらけの屈強な男たちが金棒を手に姿を現した。「俺の縄張りを荒らしに来た以上、ただで帰れると思うなよ！」少し離れたロールス・ロイスの車内で密かに様子を窺っていた美香に不安が走った。「この伊吹、正気なの？骨董市場のボスたちに喧嘩を売るなんて。あの人たち、バックに地下組織が控えてるのよ」店主の顔つきを見れば一目瞭然だ。間違いなく何人もの血を見てきた男だろう。今、嵐は本当
美人上司の秘密を発見してから告白られた件 第13話
「伊吹くん、正直に答えて。これは全部あなたがやったことなの？」彼女は眉を寄せて尋ねた。「今朝の件で、あなたが高橋部長に不満を抱いていることは分かっていたけれど、こんな過激な方法で問題を解決するべきではないわ」嵐は一瞬困惑した。自分が智子のために行動したのに、結局彼女に誤解され、他人の味方をされるとは思わなかった。彼は完全に失望し、自嘲気味に言った。「つまり、あなたも私を信じていないということですね。東田社長がそう思われるなら、何も言うことはありません」どれだけ説明しても、この人たちは全て聞く耳を持たない。智子は胸がドキリとした。「あたしが絶対にあなたの仕業だと決めつけたわけじゃない。ただ確認しただけよ」「無礼な！東田社長にそんな口の利き方をするとは、自分を何様だと思ってるんだ。東田社長、こんな不届き者はクビにすべきです」正明の部下たちがすぐに騒ぎ立てた。浩志も軽蔑の表情を浮かべた。「東田社長、これについて何らかの説明をしてください。私は無実の罪を着せられたくありませんからね」そして輝と密かに視線を交わし、互いの思惑を確認し合った。智子の冷ややかな表情に一瞬迷いが走った。実際、彼女もこの一件が全て嵐の仕業だとは信じたくなかった。しかし、全員が彼の暴行を目撃しており、しかも彼には明確な証拠がない。もし今ここで嵐を庇えば、自分が矢面に立つことになる。彼女の立場では、あらゆる方面に配慮しなければならない。その時、黙っていた美香が口を挟んだ。「高橋部長、あなたは一人で必死に抵抗して七、八人を打ち負かしたとおっしゃいましたが、あなたの体格で本当に七、八人の屈強な男たちを一度に相手にできるんですか？」「東田社長、この点が非常に不自然だと思います」美香の指摘で、智子はハッと気づき、鋭く問い詰めた。「そうね。高橋部長、あなたがいつも階段を上がるのに息を切らしているのを見ていますが、本当に複数の相手を一度に倒せるんですか？」高橋は言葉に詰まった。正明が語気を強めて言った。「それでも、この件が上野さんが高橋部長を唆したという証拠にはならないだろう。智子、上野さんは我が社の重要な取引先だぞ。たかがインターンのために彼と対立するつもりか？解雇すべきだ」智子が眉を寄せた。「この件は後
美人上司の秘密を発見してから告白られた件 第12話
「美香ちゃん、何言ってるのよ！」智子は呆れた表情を浮かべ、冷ややかに言い放った。「あの男はあたしの政略結婚を回避するための盾に過ぎないの。何の感情もないわよ」「本当に？でも、彼の話になると表情が変わるような気がするんだけど……」美香は小悪魔のような笑みを浮かべて言った。「『氷の女王』と呼ばれた智子ちゃんとは別人みたいね」智子は即座に鋭い視線を送った。美香は慌てて舌を出し、「智子ちゃん、冗談よ」と手をひらひらと振った。智子はノートパソコンを閉じ、手に持っていたペンをくるくると回しながら尋ねた。「それで、さっき彼は何をしていたの？」「えーっと、上司を殴ったみたいで……私が駆けつけなかったら、その場でクビになってたかも」「ふん、短気で衝動的ね。ああいう男は大成しないわ」智子は冷たく嵐の行動を一蹴した。美香はじっと智子を見つめた。「でも、あの人、意外と男らしい魅力があるみたいよ……」智子は美香の鼻をつまんだ。「とぼけないでよ！あなただって鈴木家のお嬢様でしょ。婚約から逃げ出して秘書なんかやってるくせに」美香は顔をしかめ、「ひどーい！余計なこと言わないでよ」「智子、叔父だ」その時、ドアの外から正明のノック音が響いた。二人はすぐに雑談をやめ、智子は背筋を伸ばして冷静に言った。「どうぞ」正明が満面の笑みを浮かべて入ってきた。「智子、虎門の上野君がもう到着してるよ」「あの人が何の用？」智子はその名前を聞くと、本能的に嫌悪感が湧き上がった。彼はただの放蕩息子で、スキャンダルが絶えない。飲酒運転で轢き逃げ事件を起こしたこともある。バックの権力で全て揉み消してきた男だ。あんな男と結婚するぐらいなら、嵐の方がよっぽどマシだった。正明はにやにやと笑いながら言った。「上野君は今回、我が社と数百億のプロジェクトについて商談するために来てるんだ。君は副社長として結果を出さなければ、取締役会で立場が危うくなるぞ」智子は仕方なく、「分かったわ。あたしが直接お迎えに上がります」と答えた。一方、嵐は一人でトイレに向かい、顔を洗おうとしていた。すると、輝が七、八人の屈強な男たちを連れて、嵐をトイレに閉じ込めた。「高橋部長、これは一体どういうことですか？」嵐は眉をひそめた。「嵐、よく
美人上司の秘密を発見してから告白られた件 第11話
健の笑顔は瞬時に凍りつき、頬を張られたような痛みが走った。周りはしんと静まり返った。真奈と健一は歓声を上げた。「嵐君、すごいじゃない！」嵐は肩をすくめた。将彦は本当に気の利く男だ。四千万円の注文と言ったのに、彼は金額を10倍に膨らませて自分に恩を売ろうとしたのだ。彼は顔面蒼白になった健の前に歩み寄って言った。「新野課長、約束を果たしました。あなたも約束を守るべきでは？」健の口元がひくつき、すぐに冷笑して言った。「ちょっと待てよ、お前が電話で言ったのは四千万円だが、市役所の注文は四億円だ。数字が合わないじゃないか」健一が憤慨して言った。「新野課長、どういうつもりですか？約束を破るおつもりで？」健は冷ややかに言った。「偶然の一致だと思うね。伊吹嵐というこの無能な新人が、たまたま市役所がうちの会社から『神養茶』を発注する予定だという内部情報を聞きつけて、わざと賭けを仕掛けてきたんだ。実際、彼は又聞きの情報しか知らなかったから、金額を間違えていた。ただの偶然にすぎない。だが、手柄を自分のものにしようとしている」この発言で、多くの人が健の言葉を信じ始めた。知事という大物は、取締役クラスでさえ簡単に会えない存在だ。ましてや嵐はただのコネなし新人だ。嵐は眉をひそめて言った。「新野課長、屁理屈はやめてください。あなたが負けたという事実を認めなさい。さっさと土下座しろ」健は嘲笑して言った。「いいよ、嵐。ちょっとでも中村知事をここに呼んでくれたら、信じてやるよ」「ちなみに、お前のお母さんが若い頃、キャバクラ嬢だったって話だけど、もしかしてその時の客が市役所で働いていて、お前に教えてくれたのかな？」「こんなにたくさんの『お義父さん』がいるなんて、情報が早いねえ」彼が言い終わるや否や、嵐は容赦なく健を蹴り飛ばし、数メートル先まで吹っ飛ばした！健は頭を壁に叩きつけられ、すぐに血を流した。壁には彼の体が激突した衝撃で大きな穴が開いていた。「母のことを侮辱するな」嵐は怒りで血走った目で、一語一句を噛み締めるように吐き捨てた。家族は彼にとって絶対に触れてはならない逆鱗だ。それを傷つける者には、一切の容赦はない。みんな驚いて騒いだ。「新野課長が……嵐が新野課長を殴った！」「一体何が
美人上司の秘密を発見してから告白られた件 第10話
嵐は周りのざわめきを無視して続けた。「はい。利豪商事が販売している『神養茶』というサプリメントですが、桜国の基準に従って、伝統的な調合法と組み合わせて作られています。継続して服用することで、多くの精神的疾患を効果的に予防できます」「5分以内に、四千万円分の売上をお願いします」同じ頃、蒼海市役所では——知事の将彦は興奮して携帯を握りしめ、震え声で言った。「冥王様だ！本当に冥王様のお声だ！私のことを覚えていてくださった……」かつて将彦は、ただの軍営で嵐に料理を作っていた専属コックに過ぎなかった。ある日、嵐が彼の料理を褒めた際、即座に昇進させられた。数年後、直接蒼海市知事に任命され、その昇進の速さはまさに破竹の勢いだった。この恩は、嵐がとうに忘れてしまったかもしれないが、将彦は心に深く刻み込んでいた。だから退官前に自分の連絡先を嵐に渡したのだ。まさか冥王様が今でも保存してくださっていたとは。「佐藤君」彼はすぐに秘書の佐藤晃（さとう あきら）を呼び寄せた。「市役所で最近、茶葉を調達する予定だったよね」「はい、各地の貴重な高級銘茶を中心に、第一弾の商品ラインを仮決定しました。どれもハイエンドで高級感のある商品です！」晃は答えた。「全部取り消しだ。利豪の『神養茶』に変更しろ。すぐに発注しろ」将彦は断固として言った。晃は驚いた。これまで将彦知事はこういう調達案件に口を出すことはなかった。以前、複数の大手企業がこのプロジェクトを狙って、あらゆる人脈を使い、贈り物をしても、将彦知事は首を縦に振らなかった。しかし今、たった一本の電話が、将彦は別人になったかのようだった！いったい誰が、これほど大きな影響力を持っているのか？…会社では、嵐が通話を終えて携帯を置いた。真奈はおそるおそる言った。「嵐君、今の相手って蒼海市の中村知事？」嵐は淡々と答えた。「昔の部下だよ。蒼海市に転属したと聞いていた。彼の功績なら、知事になるのは当然だろう」「頭、大丈夫か？でかい口叩くなよ」健は腹を抱えて笑った。「電話一本で中村知事に四千万円分の『神養茶』を買わせるって？自分を何様だと思ってんだ？桜国最年少の戦神・隆明様か？それとも軍の上層部とでも？」「どちらでもない。だが、彼らは以前私の部下だっ
