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第8話
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義妹からの致命的な哺乳瓶 第9話
夜になって警察署から電話がかかってきた。どんよりした声で拓海が言った。「……詩織が死んだ」その言葉を聞いて、私は一瞬言葉を失ったが、すぐに警察署に向かった。警察署に到着して初めて知ったのは、亮太が手術室に入っている間に詩織が日用品を買いに出かけたということだった。その途中、偶然にも買い物をしていた隣人に出くわしたらしい。隣人が息子にミルクを作るために哺乳瓶を取り出した瞬間、詩織は異変に気付いた。彼女は隣人の手から哺乳瓶を力ずくで奪い取り、怒りに震える声で叫んだ。「この哺乳瓶、どうしてあなたが持ってるの？」「これは私の息子の命を救うためのものよ！」その言葉を聞いた隣人は激怒し、詩織を地面に押し倒した。「命を救う？お前の息子のためにうちの息子を犠牲にするつもりか？」「ふざけるな！俺の息子が今入院してるのもそのせいかよ！」怒り狂った隣人は、近くの食堂から包丁を掴み、そのまま詩織に振り下ろした。包丁は詩織の大動脈を正確に切り裂き、彼女はその場で命を落とした。同時に、哺乳瓶が地面に落ちて粉々に割れ、その瞬間、亮太も手術室で心臓発作を起こし、命を落とした。隣人はそのまま現行犯で逮捕されたという。警察署で話を聞き終わり、拓海が私の方を見つめてきた。その目には涙が浮かんでいて、震える手で私の手を掴んできた。「……俺にはもうお前しかいない……」私は冷笑しながら手を振り払った。「変なこと言わないで」「私はもうあんたのものじゃない」彼は困惑した顔で尋ねてきた。「……どういう意味だ？」私はゆっくりとバッグから離婚証明書を取り出し、彼の前に突きつけた。「これを見なさい。これが何かわかる？」「警察署に来たのはね、あなたをかばうためじゃないの」「むしろ、あなたを告発するためよ」そう言って、私は用意していた一束の書類を警察に差し出した。「警察の方、これが拓海による会社の公金横領の証拠です」拓海はその場に崩れ落ち、絶望的な表情を浮かべた。「どうしてだ……どうしてこんなことをする……」私は冷たく微笑みながら答えた。「どうして？」「私が何もしなかったら、あなたと詩織は私の息子の命を亮太に捧げるつもりだったんでしょ？」彼は顔を青ざめさせながら震えた声で言った。「…
義妹からの致命的な哺乳瓶 第8話
私の会社の効率がどれほど良いか、私はよくわかっている。ソファで熟睡している拓海を見て、私は容赦なく一発叩き起こした。彼は怒りに燃えた目で私を睨みつけ、大声で怒鳴った。「お前、何するんだ！」私は冷静にもう一発叩き、手元のスマホを彼に投げつけた。「よくそんなことが言えるわね」拓海は私の険しい表情を見て、少し戸惑ったようだった。スマホを拾い上げ、中身を確認した途端、私は冷ややかに笑いながら言った。「拓海、毎日ずいぶんと楽しい生活を送ってるのね」「ち、違うんだ！聞いてくれ！」「俺、この写真がどこから出たのか本当にわからない！」私が腕を組み、冷たい目で彼を見下ろした。「わからない？」「もうトレンド入りしてるわよ。会社の株価は下がり続けてる」「さあ、拓海。この状況、どうするつもり？」拓海の顔が一瞬で青ざめ、どうすればいいかわからない様子で私を見つめた。「どうする、どうすればいいんだ……」「本当に申し訳ない！でも俺には心当たりがないんだ！」私はゆっくりとスマホを持ち上げ、画面を彼に見せた。「この写真に映ってる後ろ姿、詩織でしょ」「そ、そうだ！詩織だよ！」「全部悪質なメディアがデタラメ書いてるんだ！頼む、信じてくれ！俺の心は全部お前だけのものなんだ！」汗だくになりながら必死に言い訳をする彼の姿が滑稽で仕方なかった。「ねえ、あなた。あなたと詩織が家族だってこと、もちろん私も知ってるわ」「でもね、世間の人たちはそれを信じないのよ。ましてや、会社には他の取締役もいるんだから」「今、このままだと株価がどんどん下がる。何か説明が必要なのよ」拓海はすっかり私のペースに乗せられ、焦りと混乱で言葉を詰まらせた。「そ、そうだな……。じゃあ、どうすればいい？」私は準備していた「責任譲渡書」をゆっくりと彼の前に差し出した。「これにサインして。私があなたの責任を肩代わりするわ」彼は書類に書かれた大きな文字を見ると、ほとんど考える間もなく署名欄を探し、ペンを走らせた。「ありがとう、お前、本当に優しいな」書類に彼の雑な署名が書き込まれるのを見て、私は笑いを堪えた。「これで取締役会もあなたを責めたりしないはずよ」「でも、数日間は会社に行かないほうがいいわ。彼らは手ごわいから」
義妹からの致命的な哺乳瓶 第7話
家に戻ると、まずは病院帰りの体を徹底的に消毒した。病院にはどれだけのウイルスが潜んでいるかわからないからだ。着替えを済ませた後、和彦の様子を確認し、それから急いでパソコンを開いた。「報告を始めてください」生まれ変わってから表向きは拓海が会社を運営していることになっているが、実際には私が毎日会社の運営に関与している。社員たちが彼の指示を聞かない理由もわかっている。拓海が私の名義を使って自分に株式を移そうとしているからだ。会社のことなら、私が知りたいと思えばすべて知ることができる。前世の私は子育てに全精力を注ぎ、会社の運営をすべて拓海に任せていた。その頃、私の秘書が何度か警告してくれた。「鈴木社長は会社の利益を第一に考えていないように思えます」「彼が過去にサインした契約はどれも赤字ばかりです」だが、当時の私は気にも留めなかった。「いいのよ。彼に経験を積ませる機会を与えているだけだから」今になって振り返れば、自分の愚かさに呆れるばかりだ。「報告は以上ですか？」「広報部に準備を進めさせてください。私に関するニュースは必ずトレンドに載せるように」「了解しました、高橋社長」会議を終えた後、私はすぐに和彦を抱き上げた。彼は穏やかな寝顔を見せてくれていた。悦子は私をからかうように笑った。「相変わらず過保護ね」だが、私は彼女にどう説明していいかわからない。前世でも、彼女は私にこう忠告していた。「どれだけの裕福な女性が『下克上婚』をして幸せになれたと思う？」「豪邸を放り出して、こんな狭い家に住むなんて、頭がおかしいんじゃない？」「あなたは拓海と結婚したの？それとも彼の妹と？」その言葉を思い出すと、私は悦子に微笑みながら言った。「悦子、本当にありがとう」彼女は顔を赤らめ、私をちらっと見た。「お礼を言うなら、まずバッグを買ってちょうだい。それが私への借りを返す方法よ」「もちろん、買ってあげるわ」その後、拓海は3日間も連絡をよこさなかった。その間、私は一度も彼に電話をかけなかった。そして3日目の夜、彼は疲れ切った様子で帰宅し、悲しそうな顔をしていた。「どうしたの？」「会社に行ってって言ったのに、なぜ連絡もせず数日もいなかったの？」心配そうに問いかけると、拓海
義妹からの致命的な哺乳瓶 第6話
生まれ変わった後、私は息子の健康に細心の注意を払ってきた。毎日、息子にしっかり栄養を摂らせ、満腹にさせていたが、それでも心のどこかに不安が残っていた。数日前、拓海が会社に行っている隙に、私はインターネットで子供の全身検査を予約した。予約したのは、市内で最も評判の良い病院で、ちょうど亮太が入院している病院でもあった。詩織や拓海に怪しまれないようにするため、悦子に息子を連れて行ってもらった。そして、検査結果の報告書にすべて「正常」と記載されているのを見たとき、ようやく心の重荷が下りた。今世では、私は息子をしっかり守ることができた――そのことが何より嬉しかった。病院を出る頃、拓海はまだ少し名残惜しそうにしていた。彼がそんな気持ちになるのも理解はできた。自分の息子が手術室で横たわっているのに、彼は側にいることができないのだから。しかし、理解できない部分もあった。和彦と亮太、どちらも彼の息子だ。それなのに、どうして彼は私の息子の命を犠牲にして、もう一人の息子を生かそうとするのだろう。その矛盾に頭を悩ませるのも馬鹿らしくなり、私は考えるのをやめた。しばらくすると、車はボロボロの団地の前に到着した。その古びた建物を見上げながら、私は心の中で皮肉な笑みを浮かべた。前世で、私がこの場所で産後を過ごすことに同意したのは本当に愚かだった。自分の豪華な別荘に行かず、ここに留まったのだから。あの時、拓海は心配そうな顔をして私にこう言った。「この家は大きすぎるから、子育てには向かないと思う」「俺の実家の古い家は人情味がある。そんな環境で育てば、子供は健康に育つはずだよ」私はその言葉を信じた。母親になったばかりの私は、子供のためだと思えば何でも試そうとしていたのだ。だから、別荘を出て、この団地に引っ越した。だが、思いもよらなかったのは、私が引っ越した直後、詩織がすぐに別荘に住み着いたことだ。そして、その豪邸は彼らの密会場所になった。そして拓海が言っていた「人情味」とは、隣に住むヤコブ症候群の男児とその強引な母親のことだったのだ。今となっては、そんなことはどうでもいい。ただ、計算通りの日が近づいている。「なあ、ちょっと話があるんだけど」拓海が躊躇いがちに切り出してきた。「何？」私は好奇心を装って
義妹からの致命的な哺乳瓶 第5話
詩織の鋭い視線が私に向けられているのを感じ、内心で少し苛立ちを覚えた。しかし、何か言おうとしたその瞬間、隣人が詩織の手から哺乳瓶を奪い返した。「ふざけんな！これがどうしてあんたが買ったものになるんだ？」「これはうちの息子のものだ！お前らとは関係ないだろ！」隣人は私にも警戒の目を向けてきた。どうやら、私が哺乳瓶を取り返しに来たのではないかと疑っているようだった。私はすぐに詩織を地面から抱き起こし、優しく言った。「早く行こう。この家の人たちは厄介だから、深入りしない方がいい」「あなたが買った哺乳瓶なら家にあるわよ。これは他の人のものだって」私の言葉と隣人の話が一致したことで、詩織の疑念も消えたようだった。彼女はなんとか体を支えて立ち上がったが、その直後、亮太が意識を失って倒れていることに気づいた。「亮太！亮太！」「お義姉さん、早く兄さんに電話して！急いで！」内心で冷笑しながらも、私は詩織の言う通りにした。普通ならこんな状況では救急車を呼ぶのが当たり前だが、彼女は夫に電話をかけさせることを優先した。まぁ、どっちにしろ私には関係のない子供だ。拓海が到着したのは、電話をしてから30分後のことだった。その間、詩織は子供を抱いて泣くだけで、他には何もしなかった。幸い、亮太は足以外には大きな怪我はなさそうだった。「お前、何してんだよ！病院に連れて行くのが先だろ！バカか！」拓海は詩織から亮太を引ったくるように抱き上げ、車へ運んだ。彼の顔は険しく、眉間には深い皺が寄っていた。詩織がすすり泣きながら言った。「だ、だって、あなたが来るのを待ちたかったの……一緒に……」「もういいから黙れ！早く乗れ！」拓海がいらいらして彼女の話を遮り、二人が行き詰まっている間に私はさっさと車に乗り込んだ。「早く病院へ行こう。私も付いて行って、手伝いするわ」「和彦は悦子が見てくれていて安心だから」自分の意見を押し通すように言うと、拓海も渋々黙り込んだ。病院に到着すると、亮太はすぐに手術室へ運び込まれた。詩織は手術室のドアを見つめながら、自責の念に駆られている様子だった。拓海も焦った様子で、廊下を何度も行き来していた。やがて、医者が手術室から出てきた。「あなた方がこの子の両親ですか？」医者は
義妹からの致命的な哺乳瓶 第4話
一週間後、詩織が嬉しそうに我が家のドアを叩いた。再び彼女に会うのは予想していたが、今回はいつもと少し様子が違った。彼女は亮太の手を引いていたのだ。私は目を見開き、驚いた声をあげた。「亮太くんの病気、もうお医者さんが退院を許可したの？」亮太は早産で生まれ、器官の発達が不完全だったため、出産直後に保育器へ送られていた。その後、安定してから退院したものの、小学校三年生の時に体育の授業中に突然倒れ、病院に緊急搬送された。医者からは心臓に問題があると診断され、余命は3ヶ月だと言われた。その日、詩織は夫にしがみつき、声をあげて泣いていた。私は彼女が不憫で、治療費を負担することを約束した。さらには取引先に頼み込んで、治療可能な医者を探してもらったのだ。まさか、詩織が私の息子の心臓を狙っているとは夢にも思わなかった。私の問いかけに、詩織は少し恥ずかしそうに前髪を耳の後ろにかき上げた。「そうなのよ、亮太の心臓、突然良くなったのよ」「お義姉さん、不思議だと思わない？」私は首を横に振りながら答えた。「子どもの病気が治るのは良いことよ」そう言いながら二人を家に招き入れ、無意識に亮太の姿を目で追った。詩織は息子の心臓が治ったことへの喜びに浸っており、亮太の異常にはまったく気づいていなかった。「お義姉さん、和彦くんは？」「元気にしてる？」彼女が和彦のことを聞いてきた瞬間、私の心に不安が走った。わざと悲しそうに首を振りながら答えた。「和彦、最近ご飯もあまり食べなくて、いつも寝てばかりいるの」「だから病院で診てもらおうと思ってるんだけど……」そう言いながら、大げさにため息をついた。詩織の顔には喜びが浮かんでいた。「病院？行かなくていいわよ！」「新生児なんてみんなそんなものよ、お義姉さんがまだ分かってないだけよ」「そんなことで慌てると、病院ばかり行って逆に子どもの身体に悪いわ」私は適当に頷きながら答えた。「確かに、私が敏感になりすぎてるのかもね」そんな会話をしていると、詩織が急に亮太の姿が見えなくなったことに気づいた。「亮太、どこ行ったの？」「お義姉さん、見てない？」私は開いている玄関のドアを指差しながら答えた。「外に出たんじゃない？」その瞬間、外から大きな悲鳴が聞
