Mag-log in莉奈は彼の視線を受け止め、一瞬ためらったが、やはりゆっくりと口を開いた。「私、もう行くわ」約束通り、柊馬がユニバース・グループを手に入れた後、彼女は残りの半生を遊んで暮らせるだけの金を受け取ることになっていた。その金は、たった今口座に振り込まれた。柊馬は彼女を見て、その目に驚きはなく、ただ失望と冷たさだけが残っていた。彼は口角を引きつらせ、かすれた声で言った。「やはり、お前はどこまでも利己的で冷酷な女だったな。失せろ」「私が、冷酷な女ですって?」莉奈はその言葉に刺されたかのように激昂し、ベッドのそばに歩み寄った。彼女の目には、長年鬱積していた苦痛と不満が満ちていた。「柊馬、知ってる?私、あなたのお兄さんを愛したことなんて一度もないわ、一日たりともね!私が桐生家に嫁いだのは、最初から最後まで、あなただけが目的だったからよ。私が好きなのはあなたよ。初めて会った時からずっと好きだったわ!」彼女の声は涙声で、彼を責め立てるように響いた。「でも、あなたの目と心には柚希しかいない。私にどうしろって言うの?義理の姉という立場で嫁ぐしかなかったのよ。そうすれば、堂々とあなたに近づけるし、あなたと家族になれるし、毎日あなたを見ていられるから。あなたは知らないでしょうね……あなたと一緒にいた日々が、私がどれほど楽しくて幸せだったか……私、空想さえしたわ。もしあなたが柚希を諦めてくれたら、私たちは違う結末を迎えられたんじゃないかって。私たちはとても幸せになれたはずなのに。それなのにあなたは?今になっても、あなたの心にはあの女しかいないじゃない!私があなたのそばにいたところで何になるの?あなたの世話をしたところで何になるの?あなたが炎真を片付けて、柚希を取り戻して、すべてが落ち着いた後、次にあなたが片付けるのは……あなたのお母さんを殺した、この私じゃないの?」彼女は涙を拭い、その目は再び固く決然としたものに変わった。「今あなたが怪我をして、私のことに構っていられないこの時が、私が離れる唯一のチャンスよ。柊馬、私を恨まないで。恨むなら、自分を恨みなさいよ……どうして一度も私を愛してくれなかったのかって」言い終えると、彼女はもう柊馬を見ることはなく、決然と背を向けて立ち去った。柊馬はベッドに横たわり、ドアの向こうに消えていく彼
清乃が勢いよく飛び出し、その手から白い粉を一掴み撒き散らした。その粉は風に乗って瞬時に散らばり、周囲に広がっていった!「うっ……」「なんだこれは……」最も近くにいた数人のボディーガードと、柊馬も含め、粉を吸い込んだ途端に激しい眩暈に襲われて手足から力が抜け、次々と酔っ払いのように足元をふらつかせ、立っていられなくなった。「毒だ!息を止めろ!」誰かが恐怖で大声を上げた。その場は瞬く間に大混乱に陥った。この混乱の隙に乗じて、清乃は同じく影響を受けて体勢を崩した炎真を抱き留めた。「行きますよ!」彼女は炎真を支え、素早く外へと歩き出した。「役立たずども!この役立たずの群れが!追え!炎真を捕まえろ、捕まえられなければ殺しても構わん!」柊馬は地面にへたり込み、全身の力が急速に抜けていくのを感じながら、怒りと焦りで声を枯らして咆哮した。……清乃は炎真を連れて、ある古い倉庫に逃げ込んだ。彼女は段ボールが敷かれた床に炎真を慎重に横たわらせると、素早く携帯していた小さなバッグから丸薬を一つ取り出し、炎真の口元へ運んだ。「炎真様、早く飲み込んでください。これは解毒剤です。これを飲めばすぐに良くなります」炎真は言われた通りに丸薬を飲み込み、すぐに目を上げて彼女を見た。その瞳は澄んで冷静だった。「本丸たちはどうなった?」「ご安心を。私が使ったのはただの強力な睡眠薬で、毒に当たったと錯覚させる成分を少し混ぜただけです。解毒は簡単ですし、彼らも病院に行けば大事には至りません」彼女はそう言いながら、わざと少し体を傾けた。その動作で背中が引きつったように、すぐに痛みに「うっ」と声を漏らすと、美しい眉をきつくひそめ、苦痛に顔を歪めた。「どうした?」炎真は彼女を見た。「なんでもありません……」清乃は唇を噛み、痛みを必死にこらえているような様子だった。「背中を切られてしまって、服が傷口に張り付いてしまったみたいです」彼女は炎真に背を向け、その声には気づかれにくい弱々しさと暗示が含まれていた。「炎真様……少し……手伝っていただけませんか?服を……少しだけ裂いていただけませんか?自分では手が届かなくて……」静まり返った倉庫には、彼女の言葉と共に、どこか艶めかしく、微妙な空気が漂った。炎真は彼女を見つめていたが、その眼差
彼の視線はついに、生い茂る植え込みへと向けられた。その後、植え込みに向かって一歩一歩歩いてきた。彼は腰をかがめ、手を伸ばして植え込みをかき分け始めた。背後に隠れている柚希の周囲の枝葉がそれに伴って揺れ、彼女は自分を遮る葉がどんどん少なくなっていくのをただ見つめ、息が詰まりそうになった……「炎真様!桐生柊馬が人を連れてやって来ました!」本丸がひどく緊張した顔で慌てて駆け戻ってきた。その時、乱れた足音が猛烈な勢いで近づき、黒いスーツを着た、殺気を漂わせるボディーガードの一団がなだれ込んできて素早く散開し、炎真たちを包囲した。その先頭に立つのは、まさに柊馬だった!彼は高価なオーダーメイドのスーツを身に纏い、口元には得意満面の笑みを浮かべ、その視線は毒蛇のように、杖をついて立つ炎真をしっかりと捉えていた。「チッチッチッ……」柊馬は首を振り、わざとらしく驚いたように手を叩いた。「たった今、お前が目を覚ましたという知らせを受けたが、てっきり下っ端の戯言かと思っていた。いやはや、まさかな。炎真、お前のそのしぶとさには本当に吐き気がするぜ!」彼は一歩一歩にじり寄り、その目には嘲笑と悪意が満ちていた。「あれは枯寂だぞ。裏社会で悪名高く、解毒剤など存在しない枯寂だ。どうしてお前はそんなに悪運が強くて、目を覚ますことができるんだ?あぁ!?」「……解毒剤のない毒?」炎真はこの言葉を繰り返し、その瞳は海のように深く、感情を読み取ることはできなかった。「だが、目を覚ましたからどうだというんだ?」柊馬は笑い出し、その顔には隠しきれない得意と狂気が浮かんでいた。「ユニバース・グループはもう俺のものだ。お前が長年苦心して築き上げたすべて、お前のビジネス帝国、お前が誇る権力と富は、今や完全にこの桐生柊馬の名前が刻まれている。炎真、まさかもう一度ユニバース・グループを作り出せるとでも?今回は、お前は本当にすべてを失ったんだ!」炎真は沈んだ目で植え込みを一瞥し、その後、きっぱりと命令を下した。「行くぞ」なんと柊馬には一言も返事をしようとしなかった。これほどの絶望的な状況に陥り、すべてを失ったというのに、未だにこれほど傲慢で自分を見下している。柊馬は煮えくり返る怒りに激しく歯ぎしりをした。「奴らを止めろ!炎真を捕まえた奴には、二
一台の黒いセダンが、音もなく廃公園の近くに停まった。ドアが開き、炎真がゆっくりと車を降りた。だが、車から降りるというただそれだけの単純な動作でさえ、彼の顔色はさらに蒼白になり、額には細かい冷や汗が浮かび、車のドアに寄りかからなければ立っていられないほどだった。本丸が心配そうに口を開いた。「炎真様、情報によれば少し前にこの付近で上野さんを見かけたとのことですが、ここは広すぎて人を探すのは至難の業です。炎真様のお体が持ちません……」「構わん」炎真は急ごしらえの杖を取り出して体を支え、その深い眼差しでハヤブサのように目の前の荒涼とした景色を見渡した。「あいつがここに長く留まることはない。時間がない、一刻も早くあいつを見つけ出さねばならん。手分けして探せ、注意深く見ろ」「はい!」ボディーガードたちは命令を受けて散開した。それと同時に、雑草の生い茂る小道で、柚希は人生で最も困難な道のりを歩んでいた。高熱で視界はぼやけ、体は焼け付くように熱いのに、骨を刺すような寒さを感じていた。折れた足が地面に触れるたびに、引き裂かれるような激痛が走り、気絶しそうになった。彼女は必死に下唇を噛み締め、無理やり堪えて一歩また一歩と前へ進んだ。警察署は、もう一キロも離れていない場所にあった。それは彼女が耐え抜くための希望であり、彼女が炎真のために形勢を逆転させ、柊馬を完全に追い詰めるための唯一のチャンスだった。ちょうどその時、慌ただしく乱れた足音が遠くから近づいてきた。夜隼の手の者が追ってきたの!?柚希の心の中で警鐘が鳴り響いた。生存本能が痛みを忘れさせ、彼女は咄嗟に横の、棘のある枯れ草が茂った植え込みの中へと転がり込んだ。棘が皮膚を引き裂いてひどく痛んだが、彼女はもう痛みに慣れきってしまったかのように、すぐに息を潜め、体をきつく丸めて身を隠した。枝葉の隙間から見ると、案の定、本丸たち数人のボディーガードが足早に近づいてきて、鋭い視線で周囲を見渡しているのが見えた。「よく探せ!」本丸の声は焦っていた。柚希の心臓は口から飛び出しそうになった。激痛に耐え、よろめきながら朝から歩き続け、ようやく警察署の近くまで来たのだ。絶対にここで見つかるわけにはいかない!彼女は痛む腕で口元を覆い、呼吸すらも極めて浅くした。「いませ
炎真は体にかけてあった布団を勢いよく跳ね除け、ベッドから降りようとした。しかし、彼の体は自分が想像していた以上にボロボロだった。両足が地面に触れた途端、強烈な虚脱感とめまいが猛烈に襲いかかり、両足は全く力が入らず、体の重さを支えきれずに、そのまま前へよろめいた。「炎真様!」夜隼は顔色を変え、慌てて駆け寄って手を伸ばし、揺れる炎真の体をしっかりと支え、懇願するような口調で言った。「炎真様、まだお体がひどく衰弱されています!安静にしていなければなりません。上野を探すなら、俺が探して必ず連れ戻してきますから!」「お前が?」炎真は体勢を立て直し、その深い瞳には今や少しの温もりもなく、ただ冷ややかな光と深い失望だけがあった。彼は夜隼の支える手を振り払った。「俺が昏睡する前に命じたことに、お前は平気で背いたのだな。夜隼、俺は今……まだお前を信用できるのか?」その言葉は、氷のように冷たい刃となって、夜隼の心臓に突き刺さった。彼はその場で石のように硬直し、顔からは血の気が完全に失われた。炎真はもう彼を見ることはなく、毅然とした態度で腕を使ってベッドの縁を支え、弱り切った体を引きずりながら、一歩、また一歩と重い足取りで入り口に向かって歩き出した。「炎真様、外に出てはいけません!」清乃はそれを見て慌てて椅子から立ち上がり、心配と焦りの入り混じった様子で足早に歩み寄り、炎真を支えようとした。「目を覚ましたばかりで、体はまだ回復していません。ベッドで安静にしていなければ。無理に動けば体に致命的なダメージを与え、最悪の場合……これまでの努力が水泡に帰すかもしれません。私がどれほどの代償を払って炎真様をお救いしたか、それがすべて無駄になってしまいます!」しかし、炎真はわずかに体をかわし、彼女の伸ばした手を避けた。彼の態度は礼儀正しかったが、どこかよそよそしかった。「篠原さん、俺を救ってくれたことには深く感謝している。このご恩は心に深く刻み、後日必ず手厚くお礼をさせてもらう」言い終えると、彼はそれ以上留まることなく、手で冷たい壁を支えながら、極めてゆっくりと、しかし異常なほどの執念で、一歩一歩部屋を出て行った。その背中は、風が吹けば倒れてしまいそうなほど弱々しかったが、同時に誰にもその歩みを止めさせないほどの気迫があった。
「……二倍の毒?」炎真はこの言葉を低い声で繰り返し、その暗く深い瞳には、どんな感情か読み取れない、ただ底知れぬ濃い墨のような闇が広がっていた。しばしの沈黙の後、彼は目を上げ、部屋の中をぐるりと見渡し、最後に夜隼の顔に視線を止めて、目を覚まして最初の質問を投げかけた。その声はまだかすれていた。「柚希は?彼女を呼べ」彼は昏睡前に下した指示を覚えていた。柚希の母が目を覚ました後、必ず柚希を保護し、自分の元へ連れてくるよう夜隼に命じていたのだ。彼は今ホテルにはおらず、間違いなく隠れ家に移動してきたはずだ。なら、彼女は?その言葉を聞いて、夜隼の顔に浮かんでいた興奮と喜びは瞬時に固まり、この上なく険しいものに変わった。彼は歯ぎしりをし、一字一字を歯の隙間から絞り出すように言った。「炎真様、この期に及んでもまだあの女のことを気にかけているのですか?上野は炎真様に二倍の毒を盛っただけじゃなく、炎真様が昏睡された後に、さらにとどめの毒を飲ませたんですよ!篠原先生の治療が間に合わなければ、炎真様は今頃命を落としておられたんです!」彼は言えば言うほど激昂し、額に青筋を浮かべた。「上野は桐生柊馬と結託して、冷酷にも炎真様の命を狙っているんですよ。それに今、桐生柊馬は炎真様が持つユニバース・グループの全株式を奪い取り、会社を乗っ取った。あいつはユニバース・グループの権力を利用して、血眼になって炎真様の命を狙っています。俺たちがこんな惨めな姿でここに隠れる羽目になったのも、すべては上野のせいなんですよ!」炎真の顔色は夜隼の訴えの中でさらに蒼白になったが、その底知れぬ深い瞳は急激に冷え込み、まるで氷が張ったかのようだった。彼は最も重要な情報を捉え、沈んだ冷たい口調で言った。「彼女が俺の命を奪うほど追い詰められていたのだとすれば、彼女自身が置かれている状況は、間違いなく最悪なはずだ。柚希は、一体どこにいる?」夜隼は息を呑み、喉を締めつけられたように言葉が出なくなった。炎真が九死に一生を得て目を覚まし、すべての真実を知った後で、真っ先に気にかけるのがまさか柚希の安否だとは、彼には夢にも思わなかった!言いようのない怒りと悲哀が心に湧き上がり、彼はやり場のない不満を叫ぶように問い詰めた。「あいつが炎真様をこんな目に遭わせたのに、それでも







