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翼君は僕だけのセラピスト!
翼君は僕だけのセラピスト!
Author: 城間ようこ

プロローグ・どろどろに汚れるほどの愛

last update Last Updated: 2025-09-11 21:10:43

──この愛が、いつか色褪せるものなのだとしたら。

その時は、僕の心全てが消えてなくなればいい。

どうか君が消してくれ。君の手で、僕を変えた君の手で。

* * *

「……信じられない」

ぽつりと、将志が呟いた。

それは断罪かと、翼が覚悟する。

「信じられない。……あんなにひどい事をした君が、心に住んでて……僕はそれを憎めないんだ」

将志が続けた言葉は、翼にとって、にわかには信じられない言葉だった。

「僕は──何で君をこんなに好きなんだろう?」

「──将志さん、それは……」

将志がはっと顔を上げて翼を見つめる。ひどい顔をして、美しく澄んだ瞳で。

「こんなのが愛なのか?自分じゃ消せない気持ちが溢れてとまらないのが愛っていうのか?」

翼は、将志の震える声ごと抱きしめたい衝動に駆られた。力いっぱい抱きしめて、唇から漏れるもの全てを吸い取りたい。

「将志さん、すみません。……愛してます」

「……知らなかった。こんな、どろどろに汚れて壊される愛なんて。君のせいだ……」

「すみません。それでも将志さんへの心を偽れません」

「──君が僕をこうしたのなら、責任をとってくれないか」

将志の瞳は熱に浮かされたように潤んでいた。心の底から沸き上がる熱が、将志をそうさせた。

「君は僕だけが動かせる。そうだろ?」

それは、取り結んだ関係。いつしか変化した二人の間でも、形を変えて定まっている事実。

「僕を最後まで愛して、何もかもが終わる時まで離れないでくれ」

「……将志さんは、それを望んでますか?本当に?」

「の、望んでる。……信じられないくらいに、君がいなくなる未来が怖い」

もう駄目だった。翼は腕を伸ばして将志を抱き寄せる。将志のうなじに顔をうずめて、石鹸と肌の匂いが混ざる将志だけの匂いに酔った。

「……俺はあなたを愛します。俺の一番は、いつだって将志さんなんです。いつの間にか、何より誰より一番になってました。……好きです、世界で一等好きです」

「し、……信じていいんだな?」

「信じて下さい。将志さんの心に巣食った俺は、将志さんを裏切りません」

こくり、と小さく将志が頷いた。同時に、息を呑む音がした。

「……キスしても、いいですか?」

翼が顔を上げて真っ向からねだる。将志の頬が真っ赤に染まった。

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