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第6話

Author: はる
それから数日、紗良は食事の時以外、ほとんど部屋から出なかった。

ただ離婚が決まるまでの期間が1日も早く過ぎてほしいと願うばかりで、英樹と息子たちが美希の機嫌をとる様子も見て見ぬふりをしていた。

やがて、美希の誕生日がやってきた。

英樹は盛大なパーティーを開こうとしたが、美希はそっと断る。「家でお祝いしようよ。騒がしいのは好きじゃないの」

真司がすぐに口をはさんだ。「ちょうどいいよ。僕も知らない人が来るのは好きじゃないから。家族だけで一緒に過ごせるのが一番だよね!」

誕生日当日、広いリビングは豪華で温かい雰囲気に飾り付けられた。使用人たちが忙しく立ち働く中、英樹が美希の頭にパーティーハットをかぶせてあげた。

「願い事を」英樹の眼差しは優しかった。

美希は両手を合わせ、ろうそくの光の前で瞳を閉じる。

ろうそくの火を吹き消すと、英樹と二人の子供たちがプレゼントを差し出した。

英樹からはアンティークジュエリーのセット、真司からは限定モデルのスポーツカーのキー、そして浩平はなんと、プライベートアイランドの権利書をプレゼントした。

美希は感動のあまり目を潤ませた。「ありがとう、みんな……」

美希はふと、ずっと黙っている紗良に視線を移し、にっこりと微笑んだ。「紗良、私へのプレゼントは何かしら?」

その場にいた全員の視線が、一斉に紗良へと注がれる。

紗良は美希の期待に満ちた目を見つめ、平然と言い放った。「プレゼントは用意していないよ」

用意する気もなければ、そんな価値もないと思っていたから。

真司がみるみるうちに顔色を変えた。「ママ!どうしてそんなこと言うの?今日は美希さんの誕生日だって知ってたでしょ!」

浩平も唇を尖らせた。「失礼だよ!」

二人は顔を見合わせると、真司がぱっと目を輝かせた。「お兄ちゃん。ママの部屋に、パパがプレゼントしたいいものがたくさんあるよね?その中から一つ選んで、美希さんにあげようよ!」

浩平はすぐに頷いた。「うん!」

紗良が反応するより早く、二人の子供たちはタタタっと階段を駆け上がり、彼女の寝室へと向かった。

「待って!」紗良は顔色を変え、まだ治りきっていない足の怪我も忘れ、よろめきながら後を追った。

ドアを押し開けると、子供たちは部屋の中を引っかき回していた。アクセサリーケースは床にひっくり返され、引き出しの中身もぶちまけられている。

「あった!」真司が突然、銀色のネックレスを掲げた。ペンダントは小さな月の形をしている。「これ、きれい!」

紗良の瞳が、きゅっと縮まった。それは海斗が生前、贈ってくれた最後のプレゼントだった。

「だめ!」紗良はネックレスを奪い返そうと駆け寄った。「それは、海斗兄ちゃんが私に残してくれたものなの!」

しかし、真司はひらりとかわした。「たかがネックレスじゃん!また海斗兄ちゃんに新しいのを買ってもらえばいいでしょ?」

紗良の声が震える。「もういないの!」

浩平が不満げに口を尖らせた。「また嘘ついて!海斗兄ちゃんは旅行してるんでしょ!僕にお土産を買ってきてくれるって言ったもん!」

そう言うと、浩平は手すりから身を乗り出して階下に向かって叫んだ。「美希さん!ママからのプレゼント、見つけたよ!きっと気に入ると思う!」

紗良がネックレスを掴もうと手を伸ばすと、真司が彼女を乱暴に突き飛ばした。「ケチ!」

「きゃあーっ!」

紗良は足をもつれさせ、そのまま階段を転げ落ちた。

ドンッ。

後頭部を階段の角に強く打ちつけ、こめかみから一瞬で血が噴き出した。

血だまりの中に横たわり、視界は霞み、耳鳴りもする。

「ママ!」真司と浩平は真っ青になって、慌てて階段を駆け下りた。

真司は震える声で言った。「わ、わざとじゃないんだ……ママが無理やり取ろうとするから……」

浩平はわっと泣き出した。「ママ、血が……」

物音を聞きつけた英樹が駆け寄ってきた。その光景を目にして、英樹の顔色もさっと変わる。「どうしたんだ?」
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