Beranda / BL / 血と束縛と / 第6話(21)

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第6話(21)

Penulis: 北川とも
last update Tanggal publikasi: 2025-11-20 20:00:26

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 ウェイトマシンのコーナーに中嶋の姿を見つけた和彦は、さっそく歩み寄る。約束しているというほどではないが、互いに次の予定を聞いて、スポーツジムに通う曜日や時間帯を合わせるようになっていた。

 そうやって顔を合わせては、情報交換を行っている――というわけではなく、まだ和彦のほうが、中嶋から一方的にあれこれと教えてもらうことが多い。

 汗だくになってバーベルを持ち上げていた中嶋が、和彦に気づくなり、危うくバーベルを落としかける。照れ笑いを浮かべて無事にバーベルを置くと、汗を拭きながら和彦の側にやってきた。

「みっともないところを見られました」

「大げさだな」

 笑みをこぼした和彦は、中嶋に促されるままレッグマシンに腰掛ける。

 さっそくマシンを動かし始めると、中嶋に言われた。

「先週はすみませんでした。約束していたのに、仕事が抜けられなくて」

「もういいよ。気にしてないし、君が忙しいのはわかっているから。それに、秦さんが来てくれた」<
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  • 血と束縛と   第50話(11)

    「ちょっと軽率すぎるんじゃないか。堂々と通りを歩くなんて」「ほお、お前からその言葉を聞くとはな」 ニヤリとする賢吾の軽い皮肉に、残念ながら和彦は反論できない。 向かったのは、古めかしい外観の小さな定食屋だった。昼休みの時間帯前とはいえ、中に入ると席は埋まりかけている。かろうじて二人掛けのテーブル席につくことができ、注文は賢吾に任せる。慣れた様子から、かつてこの店に通っていたのだろうと推測できたからだ。「――俺が通ってた頃は、年寄り夫婦が切り盛りしてたんだが、さすがに代替わりしたようだな」 座っている場所から見える厨房では、中年の男女が忙しく立ち働いている。「通ってた?」「ああ。本宅でメシを食うのが煩わしい年頃でな。そもそも、たまに銃弾が撃ち込まれたり、トラックが門に突っ込んだりして、何かとにぎやかな頃だった」「それ……、にぎやかで済む話じゃないだろ」「オヤジの代の頃は、しょっちゅう本宅は改築してたな。その結果、今のような造りだ。門から玄関までが少し離れていて、建物の中もちょっとわかりにくい構造になった」 活気があるというより緊張感に満ちた毎日だったようだが、話す賢吾はどこか楽しげだ。和彦も、過去の組や本宅の様子を聞けるのは新鮮で、食事時に交わすにはどうかと思うが、少なくとも会話は弾んだ。 仲良く焼きサバ定食を食べ終えて店を出ると、すでに目の前には車が停まっており、流れるように乗り込む。次はどこに向かうのかと思えば、大型書店だった。画集でも欲しいのだろうかと思ったが、賢吾は一階の雑誌売り場で週刊誌を何冊か手に取る。「時間潰しにいいかと思ってな。お前も、欲しい本を持ってこい」 賢吾が一緒なら、のんびりと他の階を見て回るわけにもいかない。新刊が並ぶ台で文庫本を数冊選ぶと、賢吾に渡してまとめて支払ってもらう。書店を出るとさらに車で移動して、次はスーパーだ。賢吾はカートを押しながら、カゴに次々とアルコール類や水、手軽に食べられる冷凍食品やつまみになりそうな乾物などを放り込んでいく。つられて和彦もちょこちょこと商品を入れていくが、そもそもなんのためにこうして買い物をしているのかがわからない。

  • 血と束縛と   第50話(10)

     とっくに把握しているだろうが一応話しておいたほうがいいかと、玲には伊勢崎組の護衛――というより世話係がついていることと、御堂による第一遊撃隊の監視がついていることも報告したが、賢吾は特に表情は変えなかった。ただ、龍造が和彦に会いたがっていたという件では、何事か考えるようにあごに手をやる。「お前の存在がお守り代わりになると本気で考えるほど、楽天的な男ではないと思うが。少なくとも、お前を怖がらせたという点で、俺の、伊勢崎父子に対する印象はなかなか最悪だ」「直接脅されたわけじゃないんだけど……」「お前は、自分の立場というものをもう一度じっくりと噛み締めるべきだな」 それに、と賢吾は続ける。「無自覚に怖い男を骨抜きにする、自分の性質の悪さを」「なっ……、に、言って……」 ふん、と軽く鼻を鳴らした賢吾は、ここでやっと少しだけ不機嫌な横顔を見せる。それでいて、手は握ったままなのだ。「今日は、美術館に行ったあと、昼メシを食ってから少しぶらついて、ぜひともお前を連れて行きたい場所がある。今日は、そこで泊まりだ」「どこに?」「ここでバラしたらつまらねーだろ。せっかく俺が趣向を凝らしたんだ。――お前を楽しませるために」 魅力的なバリトンが、吐息のような囁きによって一層威力を増す。しかし和彦が感じたのは寒気で、反射的に手を抜き取ろうとしたが、ぐっと力が込められ叶わない。 やはり賢吾は、玲と再会してしまったことを怒っているのだと、さすがに察した。執着心の強いこの男が、素知らぬ顔をするはずがなかったのだ。そもそも、玲との再会以前に、和彦は南郷とも共に時間を過ごした。あのときも、賢吾の反応は穏当ともいえるものだったが、内心ではどう感じていたのか和彦にはうかがい知れない。 如何なる目に遭うにしても覚悟を決めるしかないと、和彦はぐっと唇を引き結んだ。** どんな無茶で振り回されるのかと、最初は全身を強張らせて緊張していた和彦だが、その状態は長くは続かなかった。 提案通りに、前回とは別の美術館に連

  • 血と束縛と   第50話(9)

    **** 土曜日の午前中に姿を見せた賢吾は、いつになく色艶がよかった。血色がいいといえばそうなのだが、しっとりとした艶をまとっているようで、男前ぶりが普段より二割ほど増して見える。珍しいことに白の薄手のニットを着ており、車内にあってもハッとするほど鮮烈に目に映る。 ずいぶん寛いだ姿に瞬きを繰り返す和彦に、後部座席のシートにゆったりと身を預けた賢吾が軽く手招きをしてくる。「早く乗れ」 ぎくしゃくとぎこちない動きで指示に従うと、和彦がシートベルトを締めるのを待って静かに車は発進する。 和彦は背筋を伸ばしたまま、隣の賢吾をうかがう。特に不機嫌なようには見えないが、土曜日の午前中から連れ出された理由は一つしかないため、嫌でも緊張する。すると賢吾が、口元に笑みを浮かべた。「別に、お前を取って食いやしない。そう怖がるな。それとも――何か心当たりがあるのか?」「……性格悪いって言われないか」 玲と会ったあと、御堂に続いて電話をかけてきた賢吾に、有無を言わせず土日の予定を押さえられた。おかげで今日まで胃が痛くて仕方なかったが、自業自得だという自覚はあるため文句はない。 だからといって恐ろしいわけではなく、いよいよ折檻でもされるのではないかと、最悪な想像をした和彦はそっと身を震わせる。追い打ちをかけるように賢吾が言った。「お前とじっくり話すために、土日は仕事の予定を入れてない」「二日も必要なのか? 忙しいんだろ」「俺のオンナに関することだ。いくらでも融通は利かせる。張り切りすぎて、朝からサウナに行ってきたぐらいだ」 だから色艶がいいのかと納得したと同時に、嫌でも和彦は覚悟を決める。「それで、今からどこに……」「ひとまず美術館に行くか。せっかくだから俺ものんびりしたい」 ご自由にと答えて、ようやく和彦はシートにもたれかかる。あくまでさりげなく賢吾が切り出してきた。「――久しぶりに伊勢崎玲と会った感想はどうだ」 鼓動が一回だけ大きく跳ねたが、動揺は表に出さない。和

  • 血と束縛と   第50話(8)

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  • 血と束縛と   第50話(7)

    ** 嵐というより、局地的な突風に巻き込まれたような一時だったなと、精神的疲労からぐったりとしながら和彦は思う。 なんとか無事に自宅マンションに帰り着くと、寛ぐ前に明日の仕事の準備を整える。クリニックに届いていた学会誌に目を通しておきたい気持ちもあったが、今晩はもう頭を使うのは限界だ。手早くシャワーを済ませると、ダイニングテーブルについて大きく息を吐き出す。無意識のうちにスマートフォンを手元に引き寄せ、画面を覗く。不気味なほど誰からも連絡が来ていない。 ひとまず賢吾に報告をしておこうと、車中から簡潔にメッセージは送っておいたのだ。詳細は護衛を通じて報告されるとわかってのことだが、本宅ではどういう状況になっているか、想像するとうっすらと首筋が寒くなってくる。 まだ十代の青年が、無謀な情熱で突っ走っただけだと話せば、賢吾は納得してくれるだろうか。仮に怒っていたとして、それを鎮めてくれるだろうか。 和彦としては、玲が無難な大学生活を送ってくれることを願っており、長嶺組が関わる事態は避けたかった。 しかしここで大切なのは、玲が自らの立場をわきまえて行動できるかということで――。「……怖いなー。若さって」 そんなことを独りごちてから苦笑する。今日の玲の様子では、もう二度と和彦とは会わない、とはならないだろう。あっさりと告げられた玲の気持ちを、麻疹のようなものだと笑う気にもなれず、忘れることもできず、だからこそ和彦は困るのだ。自分が少しだけ彼を大人にしてしまったという負い目もある。 脳裏を過るのは、いかにも食えないヤクザである伊勢崎龍造の反応だ。あちらはあちらで息子の暴走に頭を抱えているのだとしたら、さらに申し訳ない。 所在なく座っているのも落ち着かないため、コーヒーでも淹れてこようかと腰を浮かせかけたところで、スマートフォンが鳴った。画面に表示される番号に見覚えがなくて困惑したものの、誰がかけてきているのか気にはなる。おそるおそる電話に出ていた。『今、話しても大丈夫かい?』 高くも低くもない落ち着いた声が耳に届く。そこからひんやりとした温度を感じ取ってしまうのは、電話の向こうにいる人物の秀麗な

  • 血と束縛と   第50話(6)

     玲は納得しきれていないようだが、だからといって抗弁もしてこない。多少なりと警戒心が芽生えてくれたらと願わずにはいられない。「無茶をするのは今日でやめます。次からはきちんと連絡して、佐伯さんと約束を取り付けるようにします」 ううーん、と唸って和彦は首を捻る。それはそれでこちらが困るのだと言いかけたとき、テーブルの上に置いてある玲のスマートフォンの画面が光った。どうやらメッセージが届いたらしい。スマートフォンを取り上げた玲が、しまった、という顔をする。「父さんからだ……」 ぽつりと呟いて、顔をしかめながらメッセージを確認している。「何て書いてある?」「……めちゃくちゃ怒ってます。父さんには言わないで、今日ここまで来ましたから。でも――」 二人揃って外の通りに目を向ける。外で待機している男たちは、必死で玲を追跡してきたのだろう。名も知らぬ男たちに対して急に労わりの気持ちが湧いてくる。本人は不本意だろうが、伊勢崎組の人間を引き連れてとなると、玲を普通の大学生と称するのはかなり無理があった。そこに総和会の第一遊撃隊も加わっているかもしれないとしたら、なおさらだ。 物言いたげな和彦の視線を受け、玲はもごもごと言い訳のように呟いた。「俺としてはバレないよう動いてたつもりですけど、行動を読まれてたみたいです」「君についてる人たちは有能なんだよ。ほら、今から帰るって、お父さんには早く連絡するんだ。さらに大事になったら困るだろ」 和彦の呆れた表情からさすがに危機感が芽生えたのか、玲は慌ただしくメッセージをやり取りをしていたが、急に大きくため息をついてガクリと肩を落とした。「大丈夫、か?」「すぐ帰って来いと言われました。帰ったら絶対、ぶん殴られます」「顔はやめてもらうんだよ」 本気で気遣う和彦に、玲は情けない顔をして頷く。財布を取り出そうとしたので、ここは自分が払っておくと告げる。 立ち上がった玲が片手を差し出してきた。何事かと首を傾げた和彦を、ただじっと玲が見下ろしてくる。おそらく握手を求めているのだろうと察して、おずおずと手を握る。

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