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第6話

Author: 念ちゃん24時
その後、柊夜は同じ法学の道を志していた凛音と出会った。

彼は凛音に一目惚れし、二年間にも及ぶ猛烈なアプローチの末にようやく彼女の心を射止め、結婚に至った。

結婚式の壇上で、平素は冷徹で気高い柊夜が、感極まって目頭を熱くしていた。

「俺の生涯をかけて、凛音ただ一人を愛し抜く。もしこの誓いを違えるようなことがあれば、俺は永遠に愛するものを失う天罰を受けよう!」

結婚後、二人は手を取り合って奔走し、帝都最大規模を誇る「至誠法律事務所」を築き上げた。

この数年間、柊夜が凛音に捧げてきた献身的な愛情は、誰の目にも明らかだった。

かつて彼は、凛音が好む一輪の花を摘むためだけに、命綱なしで千メートルもの断崖絶壁をよじ登ったことがあった。

交通事故に巻き込まれた際は、我が身を盾にして彼女を庇い、自らは全身の肋骨をへし折る重傷を負った。

さらに、暴漢に凛音が人質に取られた際には、彼女を救うため、微塵の躊躇いもなく自らの首に刃を突き立てたことさえあった。

だが今、一面の真紅の薔薇越しに、凛音は見てしまった。柊夜がどこか憑かれたような恍惚とした表情で、瑠奈に向かってそっと囁くのを。

「もしあの時、お前が結婚式から逃げ出していなかったら……」

その一言が、凛音の全身を氷のように凍りつかせた。彼女の体は糸の切れた操り人形のようにぐらりと揺らいだ。

柊夜の心は、動揺しているのだ。

愛する人の心が少しずつ移ろっていく様を目の当たりにするのは、この世で最も残酷な「なぶり殺し」に遭っているようなものだ。

結局、凛音は傷ついた重い体を引きずり、逃げるようにその場を後にするしかなかった。

柊夜が再び家に戻ってきたのは、それから丸一日が経った後のことだった。

彼は慌ただしく家へと駆け込み、その表情には焦燥と心配の色が浮かんでいた。

「凛音、退院したならどうして一言知らせてくれなかったんだ?」

だが、そんな柊夜の体からは、瑠奈だけが纏う特有の薔薇の香りが微かに漂っていた。

凛音は静かに視線を落とした。

「もう、病院にはいたくなかったの」

明日は純子の公判の日である。凛音にはこれ以上、病院のベッドで横になっている猶予などなかった。

その言葉に、柊夜はあからさまに安堵の息を吐いた。

「家に帰るのもいいだろう。どうせ体のほうも大したことはないんだし」

彼はまだ知る由もない。ほんの一日前、凛音が二人の待ち望んでいた我が子を永遠に失ったということを。

二人の間には、もはや永遠に埋まることのない「一つの命」という溝ができてしまったのだ。

柊夜は内ポケットから一本のダイヤモンドのネックレスを取り出した。あしらわれたブルーダイヤが、眩いばかりの光を放っている。

「凛音、これはついさっきオークションで競り落としてきたものだ。これに相応しいのは、世界でお前だけだ」

「エターナル・ティアーズ」――世界にたった一つしか存在せず、十億円もの値がつく、唯一無二の愛を象徴する至宝。

凛音は、柊夜がそれを自分の首元に優しく着けてくれるのを、ただ静かに見つめていた。

なんて高価な贈り物だろう。なんと得難い心遣いだろう。

もしも彼女が、あの燃え盛るような真紅の薔薇の海を見てさえいなければ。

「柊夜、明日の裁判は、予定通り開廷されるわ」

柊夜の眉が僅かに不快そうにひそめられた。

「凛音、分かっているだろう。その案件を引き受ける弁護士なんて、誰もいないと……」

凛音は柊夜の目を真っ直ぐに見据えた。

「柊夜、忘れたの?家庭に入る前、私が至誠法律事務所で最も腕の立つ弁護士だったということを」

柊夜は初めて凛音をまともに見据えるようにして、ゆっくりと片方の眉を上げた。

「つまり、法廷で俺を敵に回すつもりだと?」

彼はため息をつき、極力苛立ちを抑え込んでいるかのような態度を見せた。

「俺と瑠奈の間には何もないと何度も言っているだろう。お義母さんに当たり屋紛いのことをされて気の毒に思っただけだ。どうしてそうやって理詰めで人を追い詰めるんだ?

それに凛音、お前がどうして階段から転げ落ちたのか、俺が本当に気づいていないとでも思っているのか?」

凛音の全身が硬直した。心臓を無慈悲にえぐり取られ、そこにぽっかりと空いた穴から、ひゅうひゅうと冷たい隙間風が吹き抜けていくような感覚に襲われた。

「……私を、信じない?」

柊夜は彼女を微塵も信じていなかったのだ。

「凛音、今も拘置所にいる蒼真のことをよく考えてみろ」

柊夜の表情から、一切の温もりが消え去った。

「もしお前がどうしても法廷に立つと言い張るのなら、俺は瑠奈の代理人として、お前と真っ向から敵対することになるぞ」

そして開廷の当日。凛音は鏡の前に立ち、そこに映る凛とした弁護士としての自分を静かに見つめていた。

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