公判の前夜、星野凛音(ほしの りおん)は管理会社からの電話を受けた。「もしもし、凛音さんでしょうか。蒼凪山の中腹にある邸宅が火事になりまして。現在、御影さんと連絡が取れず、お手数ですがこちらへお越しいただき、ご対応願えませんでしょうか」凛音の心臓がドクンと跳ねた。その邸宅は、彼女と御影柊夜(みかげ しゅうや)の別邸だ。それがどうして燃えたりするのだろうか。慌てて柊夜に電話して対応してもらおうとしたが、ふと思い出した。今日の公判に付き添うと約束していた柊夜が、今朝から姿を消していることに。まさか、彼はその邸宅にいるのだろうか。柊夜の安否が心配になり、裁判どころではなくなった凛音は、車の鍵を手に取り、彼を探しに邸宅へと急ごうとした。その時、スピーカーから怒気を含んだ女の声が聞こえてきた。「燃えたならそれでいいじゃない!私が喜ぶなら、山を丸ごと燃やしたって構わないって言ったのはあなたでしょ?」凛音の頭の中でガンと鈍い音が鳴り響いた。白鳥瑠奈(しらとり るな)の声だ。母の星野純子(ほしの じゅんこ)を車で轢いて集中治療室送りにし、さらに兄の星野蒼真(ほしの そうま)に強姦の濡れ衣を着せて投獄させた元凶だ。凛音は足を止め、スマホを握る手を思わず強く握りしめた。瑠奈は今頃、拘置所の中にいるはずではなかったのか。なぜ、二人の家である邸宅にいるのか?電話の向こうからは、さらに瑠奈の苛立った声が聞こえてくる。それは、偏愛されていることを自覚している者特有の、傍若無人で傲慢な響きを帯びていた。「柊夜、私を拘置所から引きずり出したからって何なのよ!あなたが百回捕まえようと、私は百一回逃げてやるわ!誰が毎日あなたの無愛想なポーカーフェイスなんて見ていたいもんか。もううんざりなのよ……」「み、御影さん……」管理会社の担当者も二人の声を聞き、気まずそうに声をかけた後、凛音に対してさらにばつが悪そうに言った。「星野さん、御影さんと連絡が取れました。もう大丈夫ですので……」電話は唐突に切られた。凛音のスマホを持つ手は小刻みに震えていた。結婚して五年。柊夜が凛音を命よりも愛していることは、誰もが知る事実だった。だからこそ、瑠奈が故意に純子を轢き、蒼真に強姦の濡れ衣を着せて投獄させた時も、彼は迷わず動いた。傘下のト
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