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第4話

Author: Rosa Kane
私は椅子を引いて立ち上がった。必要以上に心臓が速く脈打っている。

「傷ついているから、こんなことを言っているだけかもしれない。でも、私たちが不倫していると知ったときのあの二人の顔を、見てみたいとは思わない?」

楓己はドア枠から身体を起こし、ゆっくりと私へ近づいてきた。

「不倫か」

「ええ」

私は彼の視線を受け止めた。

「後腐れはなし。感情も持ち込まない。同じように裏切られた者同士で、お互いの伴侶にふさわしい報いを受けさせるだけ」

彼は私の目の前で足を止めた。視線を合わせ続けるには、わずかに顎を上げなければならないほど近い。

「具体的には?」

シャツはまだ彼の手の中にあり、身につけようともしていなかった。

私は笑った。けれど、それは少しも笑顔らしくなかった。

「あの二人にできるなら、私たちにだってできる」

そこで一度言葉を切った。

「あなたに、その気があるなら」

心臓が激しく脈打っていた。

私にとっては、何もかもが未知の領域だった。24時間前なら、命に懸けて自分には絶対にできないと言い切っていたはずのことだ。

楓己は長い間、私を見つめていた。

彼のほうが冷静になり、何か真っ当なことを言って、崖っぷちに立つ私たち二人を思いとどまらせるのではないかと思うほど長かった。

けれど次の瞬間、彼の手がゆっくりと伸びてきた。指が私の顎を包み、顔を上向かせる。

一瞬、心臓が止まったように思えた。

楓己の唇が重なった瞬間、頭に残っていた思考がすべて消え去った。

私は目を閉じ、熱く迷いのない彼の口づけを受け入れた。すると突然、楓己が私の身体を軽々と抱き上げた。思わず声を上げて彼の肩につかまり、両脚をその腰へ巻きつける。

彼はまるで私に重さなどないかのように、寝室まで運んでいった。

昨日、成良を抱き上げた理安も、同じように感じていたのだろうか。

その考えが根を下ろす前に、私は頭から追い払った。

楓己にベッドへ放り出され、柔らかなマットレスの上で一度身体が弾んだ。私はすぐに上半身を起こした。全身が激しく脈打っていた。怖くて、傷ついていて、それでも恐ろしくなるほど強く、この先を求めていた。

彼の腰からタオルが落ち、私は息の仕方を忘れた。

彼はすでに硬く勃起していた。太く逞しいそれには血管が浮かび、先端には透明な雫がにじんでいる。

その姿を目にした瞬間、身体の奥が激しく疼いた。私は耐えるために太ももをぎゅっと閉じなければならなかった。

楓己の目は、獲物を狙う捕食者のように、まっすぐ私だけを見据えていた。

私はポケットからスマホを取り出すと、彼から目をそらさないまま、ベッド脇のテーブルに置いた。

手がわずかに震えていた。彼も気づいたはずだが、何も言わなかった。

楓己は両手で私の足首をつかみ、ゆっくりとベッドの端まで引き寄せた。その間もずっと、まるでこの部屋で見る価値があるのは私だけだと言わんばかりに、視線を外さなかった。

彼の指がショートパンツのホックに触れ、あっさりと外した。彼が一気に引き下ろすと、ショートパンツはあっけなく脱げ落ちた。

続いて、トップスも脱がされる。

それが身体から離れた瞬間、なぜか理安の顔が頭に浮かんだ。結婚式の日、彼は真剣な声で、これから一生、私だけを愛すると誓っていた。

けれど次に、雨の中で成良がのけぞった姿を思い出した。

私は理安の面影を頭から振り払った。

もう3か月も、私は夫に触れられていなかった。

疲れているという言い訳と、額に落とされるだけのキス、そして「また今度」という約束だけが続いた、長い3か月だった。

だから楓己にまともに触れられる前から、全身の神経が燃え上がっていたのかもしれない。あるいは、これは復讐だからなのかもしれない。

してはいけない行為だからこそ、これほどまでに求めてしまうのかもしれない。

昨日、真実を知って以来初めて、誰のためでもなく、純粋に自分のためだけに何かをしているからかもしれない。

楓己はベッドへ上がり、私の両脚の間に身体を収めた。期待に、全身が強張る。

彼の手が私の首を包んだ。

締めつけるのではなく、ただ熱く力強く押さえ、私を支配するかのように。

そのまま再び唇を塞がれた。今度の口づけはさらに深く、貪るように激しかった。まるで彼はもう十分に我慢し、これ以上、何も感じていないふりをするつもりはないかのようだった。

唇が首筋へ移り、ある一点に触れた。そんな場所があることさえ知らなかったのに、彼の口づけが落ちた瞬間、自分でも恥ずかしくなるほど大きな声が漏れた。

私は頭をのけぞらせ、恥じることをやめた。

楓己の両手が私の胸をつかんだ。親指が乳首を転がすようになぞると、すぐに硬くなり、堪えようとしても堪えられない声が口からこぼれた。

彼が胸を強く揉むたびに、私はその手へ押しつけるように背中を反らした。まるで身体の方はすでに彼のものになると決めていて、私の心が追いつくのを待っているかのようだった。

続いて、彼の口が胸へ下りてきた。

熱く濡れた舌が片方の乳首をなぞり、次にもう片方を円を描くように舐める。私は荒い息をつきながら彼の髪をつかみ、必死に自制心がどんなものだったか思い出そうとした。

けれど、無理だった。

楓己は腹部へ口づけを落としながら、少しずつ下りていった。へそから腰骨へと、一つ一つの口づけは意図的なほどゆっくりしていた。まるで時間はいくらでもあり、その一秒一秒を残さず使うつもりでいるかのように。

唇が内ももへたどり着いた頃には、私はすでに震えていた。

そこでも彼は急がなかった。何度も口づけを落とし、唇で肌をなぞりながら、私が最も触れてほしい場所だけをわざと避け続ける。やがて私は全身を震わせ、長い間出したことのなかった声を漏らしていた。

「お願い......」

気づけば、そう口にしていた。

彼がクリトリスへそっと口づけを落とした瞬間、私はベッドから飛び上がりそうになった。

続いて2本の指が秘部の奥へ入り込むと、今度こそ本当に身体が跳ね上がった。肘で身体を支え、口を開けたまま彼を見下ろす。頭の中は完全に真っ白だった。

楓己は私を見上げ、笑みを浮かべた。ゆっくりと、すべてを見透かしたような、抗いようのない笑みだった。

そして、彼の指が動き始めた。

「こんなに濡れてるなんて」

低くかすれた声でそう言われただけで、身体の奥に再び熱が押し寄せた。

やがて舌も指の動きに加わった。唇でクリトリスを包み込み、吸い上げながら、2本の指をさらに深く差し入れる。奥で指が曲がり、ある一点を刺激された瞬間、鋭すぎて痛みにさえ近い快感に全身が強張った。

脚が震え、太ももが彼の肩に触れたまま小刻みに揺れる。言葉にならない声が次々と漏れたが、もう少しも気にならなかった。

楓己は手を緩めなかった。

執拗なほど一心に、それでいて驚くほど根気強く、私が漏らす一つ一つの声を聞き分けながら動きを変えていく。

やがて逃げ場も、耐える術もなくなり、私はただ堕ちていくしかなかった。

そして、何かが弾けたように絶頂が襲いかかり、止まることのない波となって全身を駆け抜けた。

ようやく収まったと思った瞬間、彼は指をさらに奥へ押し込み、そこで曲げた。

すると、今まで経験したことのない何かが起きた。

あまりにも激しく圧倒的な感覚に、私は悲鳴を上げてシーツをつかんだ。温かいものが制御できないままあふれ出し、自分が潮を吹いたのだと分かった。

彼の手と身体の下のシーツを濡らしながら、驚きと快感に頭の先から足の先まで震わせ続けた。

しばらくの間、私は激しく胸を上下させたまま横たわっていた。完全に力が抜け、ひどく恥ずかしかった。

太ももの間から私を見上げる楓己の顔には、満足感と剥き出しの欲望が同じくらい濃く浮かんでいた。

私はぼんやり思った。

――成良、あなたはこの世で一番の愚か者よ。

楓己は再び私をベッドの端まで引き寄せた。軽々と身体を抱き上げられ、私はその腰を両脚で挟み、無意識に両腕を首へ回した。

彼は片手で強く尻をつかみ、もう片方の手で、自分自身を私の秘部へ導く。

そして、ゆっくりと挿入した。

私は完全に息を止めた。

これまでの人生で、一度も味わったことのない感覚だった。彼の太さに押し広げられ、隙間なく満たされていく。

まるで初めから互いを求めるようにできていたかのように、二人の身体はぴたりと重なった。

頭ではまだ受け止めきれていないのに、身体のほうは彼を知っているようだった。私は口を開いたまま、吐息交じりに囁いた。

「うそ......」

楓己は何も言わなかった。ただ暗い瞳で私の表情を見つめながら、最奥までゆっくりと深く入ってくる。彼自身があまりにも深く埋まり、腹の奥にまで届いているように感じた。

次の瞬間、彼は私を激しく突き始めた。一度一度の動きは力強く、深かった。

今まで存在すら知らなかった身体の奥の一点を、正確に突き上げられる。自分が泣いているのか、喘いでいるのかも分からなかった。

目には涙がにじみ、喉は声を上げ続けたせいで痛んでいたが、もうどちらでもよかった。

理安に、こんなふうに抱かれたことはなかった。結婚してから一度として、これに近い感覚さえ味わったことがない。

その考えは浮かんだ瞬間に消えた。楓己が角度を変えると、視界が真っ白になったからだ。

彼は両手で私の尻をつかみ、私の動きを完全に封じた。突き上げるたびに私の身体を引き寄せ、深く激しく貫いていく。

二人の身体がぶつかる音が部屋中に響き、私は次の一突きと、その次の一突き以外、何も考えられなくなった。

二度目の絶頂は、最初よりも早く、そして深くせり上がってきた。背骨の辺りで生まれた快感が全身へ広がり、私は楓己の首筋に顔を埋め、振り落とされまいと必死にしがみついた。

全身を激しい震えが駆け抜け、秘部が彼自身を強く締めつける。その瞬間、楓己が耳元で声を上げた。

彼の動きがさらに速くなり、呼吸も荒くなる。

私の尻をつかむ手に、痛みに近いほどの力が込められた。さらに激しく、深く、荒々しく抱かれながら、私はその一秒一秒に溺れた。

やがて楓己は低く荒い声を漏らし、動きを止めた。私の奥深くで彼自身が脈打ち、熱いものが一気に放たれるのを感じた。彼の全身も震えており、強く抱きしめられた胸越しに、激しい鼓動が伝わってきた。

私たちはしばらく、そのまま動かなかった。二人とも息を切らし、何もできないほど力を失っていた。

やがて楓己はゆっくりと慎重に私をベッドまで運び、横たえると、その隣に黙って腰を下ろした。

私は天井を見つめた。

――すごかった。

もちろん、声には出さなかった。わざわざ口にする必要などない。感想を言葉にしなくても十分伝わることもある。

私は彼に背を向けた途端、すべてを急に意識し始めた。自分から何を持ちかけ、何をしたのか。そして、快楽を得ることなど計画にはなかったはずなのに、どれほど夢中になってしまったのか。

羞恥心が押し寄せてきた。楓己を恥じたわけではない。夫ではない男の腕の中で、自ら望んであれほどさらけ出してしまったこと、そしてそれをほとんど後悔していない自分が恥ずかしかった。

これから、どんな顔で彼と向き合えばいいのだろう。

「すまない」

背後から、楓己の低く慎重な声が聞こえた。彼の手が、私の背中をそっとなぞる。

「中で出すべきじゃなかった。制御できなくなって......」

「気にしないで」

私は彼の言葉を遮った。

「低用量ピルを飲んでいるから」

少し間が空いた。

「......どうして?」

どう答えるべきか考えながら彼へ向き直ったとき、ベッド脇のテーブルに置いたスマホの画面が光った。

楓己のほうが近くにいたため、彼がスマホを手に取った。画面に目をやり、そのまま私へ差し出す。

「彼からのお呼びだ」

彼は静かに言った。

表示された名前を見た瞬間、身体から温もりが完全に引いていった。

――理安。

私はスマホを受け取り、一度だけ楓己を見た。

それから電話に出てスピーカーに切り替え、二人の間のベッドへ置いた。

「おはよう、紗世」

理安の声が部屋に響いた。優しく、愛情に満ち、疑う余地などないほど自然な声だった。

私は返事をしようと口を開いた。

その瞬間、楓己の唇が、先ほど敏感だと知ったばかりの首筋へ重なった。

まったく予想していなかった。

温かな唇が肌に触れると、全身に電流のような刺激が走った。止める間もなく頭がのけぞり、喉から紛れもない喘ぎ声が漏れた。

電話の向こうが完全に静まり返った。

やがて、理安の声が再び聞こえた。先ほどまでの温もりは、かけらも残っていなかった。

「紗世」

平坦で、硬く、危険な声だった。

「男と一緒にいるのか?」

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