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第4話

Auteur: 睦元
私は指の関節が白くなるほど拳をきつく握り締め、感覚が麻痺して力が抜け落ちそうになるまで、ただ耐え続けた。

やがて指を解くと、大手ゴシップ週刊誌の編集部へと電話をかけた。

「誠和グループの社長、佐伯航平が今、自分のオフィスでかつて彼の義理の両親を轢き殺した加害者の娘と密会しています。

特ダネを逃したくないのなら、今すぐカメラを持って向かってください」

航平が、何一つ疑いもせず私を悪者だと決めつけるというのなら、いっそ本当に、その悪役を演じきってやろうじゃないか。

その日の真夜中。微睡みの中で不意に玄関が開く音を聞いた。

身を起こした私の視線の先には、どす黒い怒りを全身から立ち昇らせた航平が立っていた。

彼は苛立たしげに眉間を揉み、体を強張らせながら、必死に感情を押し殺すように言った。

「パパラッチを呼んだのは、お前か?

あの写真を揉み消すために、俺が一億円近い金を払わされたのを分かってるのか?」

彼の言葉に滲む隠しきれない非難の響きに、私は思わず鼻で笑った。

「つまり、自分は他の女と不倫してもお咎めなしで、それをすっぱ抜かせた私が悪いって言いたいわけ?」

私の冷ややかな嘲笑を浴び、航平はもう取り繕うのをやめた。その顔には、背筋が凍るほどの激しい怒りがあらわになっていた。

「お前がわざと陽葵の家に人を差し向けて嫌がらせなんてするからだ!先に手を出したのはお前だろう。だから俺は、彼女を助けに行くしかなかったんだ。

それに、俺ほどの地位にいる男で、常に女を絶やさない奴なんてごまんといる。俺はこの九年間、ずっとお前一筋だった。羽目を外したのだって、たった二回だけじゃないか!

どうしてそうやって、いつまでもネチネチと責め立てるんだ?もう少し、他の妻たちのように物分かりのいい女になれないのか!」

堂々と言い放つ彼を見て、私はぞっとするような戦慄を覚えた。

しばらくの後、口角を無理やり引き上げて言った。

「……それなら、早く離婚したほうがいい」

私は引き出しから離婚協議書を取り出し、彼に差し出した。

「サインして。そうすれば、あなたは自由になれるわ」

航平は数秒、呆然としていた。

次の瞬間、彼はためらいなくその協議書を真っ二つに破り捨て、全てを見透かしたような笑みを浮かべた。

「綾香、こんな幼稚な駆け引きで俺を試すのはやめてくれないか?お前が俺を愛しているのは分かってる。でなければ、わざわざ人を雇って騒動を起こしたり、パパラッチを呼んだりするはずがないからな。

俺たちももう三十歳を過ぎた大人だ。物事はそう二者択一で語れるようなものじゃないんだ。お前が俺の永遠の妻であることに変わりはない。だが、俺にも別の感情の捌け口くらい認めてくれてもいいだろう」

あまりにも身勝手で荒唐無稽な言い分に、私は一瞬、反論する言葉すら失ってしまった。

その時、彼のスマートフォンが再び鳴った。画面に表示されていたのはまたしても陽葵の名前だった。

彼はもう隠し立てする気も失せたのか、ひどくあっさりとこう言い放った。

「今から彼女のところへ行く。今日からは、お前もこういう生活に少しずつ慣れていくんだな」

そう言い残すと、彼は乱暴にドアを閉めて出て行った。

その日を境に、陽葵からは絶え間なく挑発的なメッセージが送られてくるようになった。

今日は航平か贈られたという限定モデルのバッグ、明日は彼からの高額な送金履歴、そして明後日は、二人で海外へオーロラを見に行ったという旅行の写真……

私は彼女の思惑通りに激昂するようなことはせず、ただ淡々と、移住先の街と手頃な屋敷を急ピッチで探し進めていた。

協議離婚はもはや諦め、弁護士を介した法的手段――離婚訴訟の準備に着手していた。

そんなある日。陽葵からいつもとは様子の違うメッセージが届いた。

【あなた、一体どんな手を使って彼を縛り付けているの?彼がどうしてもあなたと別れてくれないんだけど】

まったくもって意味が分からなかった。

だがその夜。半月以上も家に寄り付かなかった航平の車が、私たちの邸宅の前に停まっていた。

私がドアを開けるなり、熱を帯びた腕が私をきつく抱きすくめた。

航平は私の胸に顔を埋め、まるで不満を訴えるような、いじけた声を出した。

「今日は俺たちの結婚九周年の記念日だろ。忘れたのか?俺に電話一本くれないなんて、冷たいじゃないか」

私は鼻で笑った。

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