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第10話

Author: 睦元
両親はもうこの世にいないけれど……

私にはまだ人生をやり直す気力も若さもあるし、決して少なくない財産だってある。ゼロから再出発するには、まだ遅すぎるなんてことはない。

海都での一ヶ月余りの滞在。

航平と陽葵がその後どうなったかなど、私は知る由もなかったし、知りたいとも思わなかった。

毎日、親友と車でドライブに出かけたり、暇な時には彼女が経営するゲストハウスを手伝ったりした。

とにかく、心から寛げる、穏やかな日々だった。

以前のように胸が締め付けられるような心臓の発作が起きることも、すっかりなくなっていた。

親友も思わず冗談めかして言った。

「こんなことなら、数年前にあんな男、絶対に許すなって無理にでも離婚させておけばよかった。そうしたら、うちらもっと早くからこんな天国みたいな毎日が送れてたのにね」

私も笑いながら言い返した。

「そんなこと言うなら、あなただって八年前に元旦那が秘書と浮気したのを見つけた時、さっさと離婚しとけばよかったじゃない。なんで三年前まで引きずったのよ?」

私たちは互いの黒歴史を突いてからかい合ったが、もちろん本気で気に病むようなことはない。

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  • 裏切りの果てに、愛は潰える   第10話

    両親はもうこの世にいないけれど……私にはまだ人生をやり直す気力も若さもあるし、決して少なくない財産だってある。ゼロから再出発するには、まだ遅すぎるなんてことはない。海都での一ヶ月余りの滞在。航平と陽葵がその後どうなったかなど、私は知る由もなかったし、知りたいとも思わなかった。毎日、親友と車でドライブに出かけたり、暇な時には彼女が経営するゲストハウスを手伝ったりした。とにかく、心から寛げる、穏やかな日々だった。以前のように胸が締め付けられるような心臓の発作が起きることも、すっかりなくなっていた。親友も思わず冗談めかして言った。「こんなことなら、数年前にあんな男、絶対に許すなって無理にでも離婚させておけばよかった。そうしたら、うちらもっと早くからこんな天国みたいな毎日が送れてたのにね」私も笑いながら言い返した。「そんなこと言うなら、あなただって八年前に元旦那が秘書と浮気したのを見つけた時、さっさと離婚しとけばよかったじゃない。なんで三年前まで引きずったのよ?」私たちは互いの黒歴史を突いてからかい合ったが、もちろん本気で気に病むようなことはない。ただ、すでにボロボロだった結婚生活から、ようやく自分自身を救い出せたことを、しみじみと喜び合ったのだ。生活は着実に良い方向へ向かっていた。あの日、私が車を運転して、次のドライブの目的地へ向かおうとした時までは。庭先から車を出した直後、危うく人を撥ねそうになった。私は慌てて急ブレーキを踏み、運転席から飛び出した。幸い、その人はすぐに身をかわしたため、怪我はないようだった。しかし、彼が顔を上げた瞬間、私の顔に浮かんでいた安堵の笑みは凍りついた。航平だった。彼はひどく痩せこけ、見る影もなく憔悴していて、一目では彼だと分からないほどだった。だが、彼だと認識したその瞬間、私の心の中から、ある黒い感情が湧き上がってきた。心の声がこう囁いた。「さっき、そのままアクセルをベタ踏みしてやればよかったのに」私はさっと笑顔を消した。一秒たりとも彼のために時間を無駄にしたくなくて車に戻ろうとした。だが突然、腕を掴まれた。聞き慣れた声が響いた。だが、かつてのような自信と余裕はすっかり消え失せていた。「綾香、一ヶ月以上も会ってなかったのに、そんなに急い

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